勇者の見た陥落
俺は勇者だ。
昔は蛮勇極まる者などというよくわからないあだ名をつけられていたが、蛮勇ってなんだ?
よくわかんないけどカッコ悪いから、伝説にならって勇者って名乗っていたら、勇者って呼ばれるようになった。
まあ、伝説の魔王なんて、向こう側から何十年も出てきてないがな。
それなりに人助けもしている。
賛同してくれる仲間を連れて、毎日、世直しの旅をしている。
悪に正義の鉄槌を。俺らの信条だ。
泣いてる子供を見捨てたことはねえ。
殴られてる女を見過ごしたこともねえ。
俺は、頭はよくねえかもしれないが、助けを求める声を聞き流すほど腐っちゃいない。
金のことはちょっと心配だったが、近頃じゃこの活動を、支援してくれるやつもいるんだぜ?
確かボイ……ボ……なんて言ったけな。
名前を覚えるのは苦手だ。そういうのは、頼りになる仲間に任せておけばいい。
ただ、あいつはいつも、とんでもねえ悪党の噂を持ってきた。
この世界は腐っている。
義理も人情もありゃしねえ。
民たちが苦しんでる横で、お貴族様たちは贅沢三昧だ。
いっぺん交換してみろってんだ。
てなわけで、旅を続けていたんだが……。
聞いた話によれば、初代勇者伝説の残るこの地を治める王室は、どうやら悪逆非道の限りを尽くしているらしい。
戦争でも起きてるわけでもねえのに、大事な男手を取り立てるわ、法外な税金をふっかけるわ。
そんで得られた利益で国王個人の私腹を肥やし、酒池肉林しているって噂だ。
決定的なのは人攫いだな。
幼い子供たちを攫って、なんと他国に売って金にしているらしい。
とんでもねえ非道な王様だ、許せねえ。
そんなやべえやつに、この国の国民は一揆を起こして反抗しないのか。そう憤っていたが、どうやらそういう計画はあるらしい。
どれ、一つ手を貸してやろう。
突撃した王城ではもっと抵抗があると思っていたが、そんなものはほとんどなかった。
みんな腹に据えかねていたんだな。
こっちだと、逆に俺を案内してくれる始末だ。
こうなってくると、王様ってのはほんとに碌でもねえやつだったって信憑性が増すな。
部下に裏切られるなんて相当だぜ。
たまに手応えのあるやつもいたがな……。なんとか、人海戦術で押し切ったぜ。普通逆だと思うんだけどな。
そんなこんなで辿り着いた玉座の間だが、なんと国王は死んでいた。
自分で心臓をひと突き、ぐさっとやったようだ。
自責の念で死んだのか、酷い目に遭わされると思ってその前に死んだのか。
前者ならまだマシ、後者なら情けねえ話だな。
できればこの手で悪を打ち滅ぼしたかったが、そこに強いこだわりはない。
俺は蛮族じゃない。
目的が果たされればいいのだ。
かくして、悪を打ち滅ぼしたのだ。
「俺が勇者だ!」
勝利の雄叫びを上げる。
こうして、一つの国が救われたのだ。俺が、救ったのだ。
ところで、城の奥に保管されていた剣だが、とんでもないお宝だった。
厳重に鍵のかかった部屋に剣が一本、床に突き立てられて、尋常じゃない雰囲気を醸し出していた。気になったから引き抜いてみたんだが、握った途端に剣が光り、全身に力が湧いてきた。こいつはすごい逸品だ。
こんなものを隠し持っていたとは……。
これからの旅のお供にもらっていこう。そのくらいのご褒美、いいだろう。
なんせ、俺はこの国を救ったんだから。




