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ある王国の陥落  作者: みやぴー
第一章

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3/10

勇者の見た陥落


 俺は勇者だ。

 

 昔は蛮勇(ばんゆう)極まる者などというよくわからないあだ名をつけられていたが、蛮勇ってなんだ?

 よくわかんないけどカッコ悪いから、伝説にならって勇者って名乗っていたら、勇者って呼ばれるようになった。

 まあ、伝説の魔王なんて、向こう側から何十年も出てきてないがな。


 それなりに人助けもしている。

 賛同してくれる仲間を連れて、毎日、世直しの旅をしている。

 悪に正義の鉄槌(てっつい)を。俺らの信条だ。


 泣いてる子供を見捨てたことはねえ。

 殴られてる女を見過ごしたこともねえ。

 俺は、頭はよくねえかもしれないが、助けを求める声を聞き流すほど腐っちゃいない。


 金のことはちょっと心配だったが、近頃じゃこの活動を、支援してくれるやつもいるんだぜ?

 確かボイ……ボ……なんて言ったけな。

 名前を覚えるのは苦手だ。そういうのは、頼りになる仲間に任せておけばいい。

 ただ、あいつはいつも、とんでもねえ悪党の噂を持ってきた。

 

 この世界は腐っている。

 義理も人情もありゃしねえ。

 民たちが苦しんでる横で、お貴族様たちは贅沢三昧だ。

 いっぺん交換してみろってんだ。

 

 てなわけで、旅を続けていたんだが……。

 聞いた話によれば、初代勇者伝説の残るこの地を治める王室は、どうやら悪逆非道の限りを尽くしているらしい。


 戦争でも起きてるわけでもねえのに、大事な男手を取り立てるわ、法外な税金をふっかけるわ。

 そんで得られた利益で国王個人の私腹を肥やし、酒池肉林しているって噂だ。


 決定的なのは人(さら)いだな。

 幼い子供たちを攫って、なんと他国に売って金にしているらしい。

 とんでもねえ非道な王様だ、許せねえ。


 そんなやべえやつに、この国の国民は一揆(いっき)を起こして反抗しないのか。そう(いきどお)っていたが、どうやらそういう計画はあるらしい。

 どれ、一つ手を貸してやろう。


 突撃した王城ではもっと抵抗があると思っていたが、そんなものはほとんどなかった。

 みんな腹に()えかねていたんだな。

 こっちだと、逆に俺を案内してくれる始末だ。

 こうなってくると、王様ってのはほんとに碌でもねえやつだったって信憑性(しんぴょうせい)が増すな。

 部下に裏切られるなんて相当だぜ。

 

 たまに手応えのあるやつもいたがな……。なんとか、人海戦術で押し切ったぜ。普通逆だと思うんだけどな。


 そんなこんなで辿り着いた玉座の間だが、なんと国王は死んでいた。


 自分で心臓をひと突き、ぐさっとやったようだ。

 自責の念で死んだのか、酷い目に遭わされると思ってその前に死んだのか。

 前者ならまだマシ、後者なら情けねえ話だな。

 

 できればこの手で悪を打ち滅ぼしたかったが、そこに強いこだわりはない。

 俺は蛮族じゃない。

 目的が果たされればいいのだ。

 かくして、悪を打ち滅ぼしたのだ。


「俺が勇者だ!」

 

 勝利の雄叫びを上げる。

 こうして、一つの国が救われたのだ。俺が、救ったのだ。

 


 ところで、城の奥に保管されていた剣だが、とんでもないお宝だった。


 厳重に鍵のかかった部屋に剣が一本、床に突き立てられて、尋常じゃない雰囲気を醸し出していた。気になったから引き抜いてみたんだが、握った途端に剣が光り、全身に力が湧いてきた。こいつはすごい逸品だ。


 こんなものを隠し持っていたとは……。

 

 これからの旅のお供にもらっていこう。そのくらいのご褒美、いいだろう。

 なんせ、俺はこの国を救ったんだから。



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