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ある王国の陥落  作者: みやぴー
第一章

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2/10

商人の見た陥落


 今年は、私がこの街で商売を始めてから指折りの、頭を抱える年だった。


 長らく続いた行商人(ぎょうしょうにん)生活。一山当てて手に入れた、安寧(あんねい)の地。

 大した規模はない一店舗だけの店だが、私は気に入っていた。

 儲かるならなんだって扱うが、趣味の品を集めているコーナーは私の店のお気に入りだ。

 そこから繋がる縁だってある。そういう縁の方が今後の糧になっていく。

 私はそういうことを心得ている、つもりだ。


 この街は王都にもほど近く、直轄(ちょっかつ)領ではないが、交易は盛んだ。

 何もかも物価の高い王都よりも、ここを経由した方が安上がりになることもある。物によってはむしろ、王都よりもここの方が潤沢(じゅんたく)にあったりする。

 そんな街の大通りに程近い場所に店を構えることができたのは、幸運だったと言って良いだろう。

 商人にとって運は、何よりも大事な要素だ。

 他の何を頑張ったって、ダメな時はダメだし、いい時はいい。

 だから願掛(がんか)けでもなんでもいいからと、商人たちは教会に通う者が多い。


 だが、今年はダメな年だ。

 何がダメって、国王がダメだ。


 今年は凶作の年だ。そんな時に税金をあげてしまったら、食うや食わずの人間が増え、消費は落ち込み、我々の商売も苦しくなる。

 今年に限った多少の上昇ならまだしも、利益の半分は持っていかれるような状況になっている。

 うちでそうだから、他のところは赤字もいいところだろう。


 国家の危機だとか、理由があるならまだ許せよう。

 だが、宮廷にいる知り合いの話によれば、宮殿内で何か高価なものを造っていて、そのせいでお金が取られているらしい。

 あの豪華な宮殿をさらに飾りつける意味はあるのだろうか?

 お偉いさんの考えることはわからない。

 

 しかもそれは国王の私的な領域に作られており、秘密だときた。

 そうした噂はすぐに広まり、国王に対する不満がこれでもかと広まっている。


 しかし、王都の商人仲間に愚痴ったが、奴らはまだ余裕そうだ。

 さすが王都というべきか。お前はこんな税上げにも対応できないのかというような表情をされて、ちょっとむかついたのは事実だ。

 だがこんなに税金があげられても平気なのであれば、店をこの街に構えた私の見立てが誤っていたとしか言えないか。


 以前、塩を大量に仕入れていてよかった。

 正直に言えば発注ミスだった。そのせいで店を畳むことを考えるほど頭を抱えたが、近頃どういうわけか値上がりしているのだ。

 おかげで増えた税金分の数年は、利鞘(りざや)が確保できている。

 

 こんな幸運が長く続かないことはわかる。

 慎重に情勢を見極めねばならない。


 などと、今後のことに思いを馳せていたら、驚くべきことに、噂の勇者によって国王が倒されたという知らせが舞い込んできた。

 悪いことをしているからそうなるんだ。因果応報というやつだな。

 次の国王は、もっと聡明な者になるといいのだが……。


 このような状況で、どう動けばもっとも利を得られるのか。

 私としてはあらゆる可能性を検討し、もっとも期待値の高い行動をとるのみだ。

 

 そういうことは、得意なんだ。そういう嗅覚(きゅうかく)だけで、私はここまでやってきたのだから。


 だけど、その嗅覚が、私に警告している。

 なんとも言えない独特の、それでいて濃厚な、危機の匂いを。


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