村人の見た陥落
俺たちの暮らしが悪いのは、国王のせいだ。
村のみんなも、そう言っている。なぜかって?
奴らは、俺が汗水たらして鍬を握っている最中、豪華絢爛な宮殿で、贅沢三昧しているらしい。
去年から今年にかけては、雨が少ない。雪の日だって少なかった。
みんな薄々感じていたが、水不足は現実のものになった。
そういう時の蓄えだ。この村にはそういう時のために、みんなで食料を溜め込んでいる倉庫がある。
今年がダメでも来年がある。まあ、なんとかなるだろう。
そう思っていた。
なのに、ここにきて重税だ。
豊作の年ならまだしも、このタイミングで上げるなんて、意味がわからない。
法外な割合を乗せられてはたまらない。
しかも、今年は村から3人も徴兵に出さないといけないときた。重い、重すぎる負担だ。
そんな話、去年までなかっただろうに。
農民にとっては、一人労働力たる人間が取られるってのは、死活問題なんだ。
残酷なようだが、子供が取られるのとはわけがちがう。
もう、倉庫の中身も空になりつつある。
それは、税のせいだけじゃない。不安は人間を誤らせる。つまり、盗難だ。
平和だったこの村に、不穏な空気が立ち込めている。
誰か、溜め込んでいるやつがいるらしい。
みんな苦しんでいるのはわかっているから、俺は犯人探しは好きじゃねえ。だが、みんなの目が血走っている。
すぐに大捜索が始まった。仕方ないから、俺もそれに参加した。
そうこうしていたらなんと、俺の家から倉庫にあるはずの食料が三袋も見つかった。
身に覚えがねえ。こいつは、嵌められた。すぐにわかったね。
しかし誰も信じちゃくれねえ。
その場で処刑されなかっただけマシだ。
おかげで村八分だ。
徴兵に息子三人が全部取られた。それで、なんとか許された。
ひどい話だ。
俺の見立てじゃ、徴兵に息子を取られる予定だった副村長の仕業だと思っている。
それか、息子が一人しかいねえ、奥の家の親父だ。
が、やっぱり誰も信じちゃくれねえ。証拠もねえ。
俺は女房には先立たれてるから、これで一人になっちまった。
誰かを恨むなら、誰を恨めばいいんだ。
わかんねえ、きっと国王のせいだ。
いっそのこと、死んじまえばいいのに。
釈放されて、息子たちのために帰ってくる家を守っておくかしばらく悩んだが、もうここにいたって仕方ねえ。
あいつらも、帰って来づらいしな。俺を恨んでいるに違いねえ。
もうどうしようもなくなって、わずかばかりの食料を持って、都に向かうことに決めた。
都に行けばきっと、仕事の一つくらいあるだろう。
俺は、途中で死ぬだろうか。死ぬなら、どうやって死ぬのが一番マシだろうか。いや、希望を捨てちゃいけねえ。生きてりゃきっといいこともある。
そんなことを考えながら旅をしていたが、意外にも無事に街に辿り着いた。
みんな、掲示板っぽい壁に群がっている。
俺は文字が読めねえから、そこにいた若えのに読んでもらったんだ。
そしたら、こんなことが書かれていた。
「勇者、悪逆非道の限りを尽くすエルディア王国国王に、正義の鉄槌を下す」
俺は思わず、ざまあみやがれって、そう言っちまったんだ。
そうでも言わねえと、やってられなかった。




