見え透いた嘘
[リンハシケンゴウカクデス]
またしても、試験の合格を告げる声が、森全体へ響いた。
「リンちゃんだっけぇ。あの子も合格したんだぁ。なら、ますます時間が無いねぇ。」
そんな事を言いながら、セレナは走って…走って……
「ぜんっぜん見つからない!」
さっきは偶然遭遇したが、このまま闇雲に探していても、限界を感じ、足を止め、またしても思案する。そして、セレナは、ルールが書かれた紙を一枚鞄から取り出す。そして、あろう事か、詠唱を始めた。
「水よ。我が掌上へ集え。」
「アクア:サモン」
そうして、セレナは手から水を出し、そして、ルールが書かれた紙を水浸しにした。すると……
「やっぱりねぇ。」
なんと、じわじわと文字が浮かび上がってきたのだ。
「これならぁ、文字は読めなくて当然ねぇ。パロールは、こういう"言葉"も読めるのかはわからないけどぉ、まあ、どうだっていっかぁ。」
***
浮かび上がってきた文字はこうだ。
1:外部に頼ってはならない。
2:森を壊してはならない。
3:竜を召喚してはならない。
4:ルールを破ってはならない。
合格条件
・竜を討ち取ること。
・ルールを破っていないこと。
注意事項
竜は全部で3匹である。
ルールを破った者には厳しい罰則が与えられる。
尚、試験に合格するのは、竜にトドメを刺した者のみである。
***
やはり、パロールは嘘を吐いていたようだ。
「竜は3匹かぁ。って!あと1匹じゃん!!」
パロールが討ち取った1匹。そして、リンが討ち取ったであろう1匹。残るは1匹のみ。
「ヤバいヤバいヤバい!!あと1匹!?」
そう騒いでいると、
「お前……さっきからうるせぇんだよ。」
そう言いながら、赤髪に青緑色と緑色の瞳をもった、少年がやって来た。
「髪といい。目といい。変なカッコぉ」
セレナがそうポツリと呟くと、少年は、
「ぁあ"ぁん?」
この少年の背丈はセレナと同じくらい。その上、可愛らしい顔立ち。全然怖くない。そんな失礼なことを考えていると、少年は咳払いをし、
「まっ、まぁ良い。それより!お前の声が大きいんだよ!」
なにが良いのだろうか。よくわからないが、声が大きいらしい。なので、セレナは小声で
「ゴメンネェ」
っと言った。すると、少年は、
「……良いだろう。お前に一つ聞きたい事がある。竜があと1匹って本当なのか?」
と言った。それに対してセレナはニコニコと微笑みながら、「そうだよぉ」と答えた。すると少年は、眉間に皺を寄せ、
「…!チッ、話が違うじゃねえか。」
と、ポツリと呟いた。
「あぁー!舌打ちしたあ!良くないんだあ!!」
「うるせぇ!!というか、声がデカいって、さっきも言ったろ!」
また怒られてしまった。というか、コイツの声もうるさい。
「えへ。ごめんねえ?というかあ、話が違うとか言ってたけどお。盗み聞きしてたのはあ、そっちじゃあないのお?」
セレナは思った事をそのまま口にした。
「うぐっ、というか、話はちゃんと聴いてたのかよ……」
少年は、痛いところを突かれたとばかりにそう言った。
「えへぇ、すごいでしょお!」
セレナはバチが悪そうな顔をしている少年をニヤニヤと揶揄った。
「……盗み聞きしたのは、悪かった。でも、今話したいのはそこじゃない。本当は、竜は残り1匹なんだろ?なら、俺とお前で、協力して竜を倒さないか?」
少年は、思ったよりしっかりしている様だ。しかし、
「協力しようだなんて、優しいんだねぇ。でもぉ、無理だよぉ?だってぇ、竜はもう1匹だけだもん。」
「優しいんじゃない。ただ、そっちの方が合理的だろ。」
「そうかなぁ。あっ!もしかして、知らないのかぁ。じゃあ、教えてあげてるぅ!」
そうして、セレナはルールや、注意事項などを、細かく伝えた。
「トドメを刺した奴だけって、厳しすぎるだろ……まあ、それなら、協力は現実的じゃないな。でも、一つだけ言いたい事がある。お前、随分とお優しいんだな。」
「え?」
「どうして俺に、ルールを教えた?教えずに協力して、お前がトドメを刺せば良かっただろ。」
少年は、本当に訳がわからないと言った様子で言った。
「………。」
対してセレナは、俯き、何も言わない。
「ハッ!だんまりかよ。」
少年は、そうセレナを煽った。
「……。えへへぇ。いいこと思いついたぁ。」
セレナは顔を上げ、ニヤリと笑いながら呟き、そして少年にこう言った。
「ねぇ。協力しようよぉ。」
と。
***
少年の名はシュルタ・トット・ファーレという。
シュルタはドワーフ。彼もまた、人間では無かった。しかし、彼には、ドワーフの特徴である低身長、恐ろしいほどの怪力、頑丈さが備わっていなかった。しかし、シュルタは手先が器用であるため、"盗賊"という、トリッキーな技を得意とする役職に就いていた。
そんな話を聞いたセレナは、
「ふーん。あんまり強くなさそぉ。」
と、率直な感想を抱いた。
「おい、協力するって話を無しにしたって良いんだぜぇ?」
シュルタは、セレナの軽率な発言にキレていた。
「ごめぇーん!でもでもぉ、協力しないと困るのはシュルタでしょお?私の優しさにもっと感謝してよねぇー」
セレナは不服そうにそう謝った。
「提案してきたのはお前……いや、セレナだろ?文句言ってんじゃねぇよ。それより、この作戦で、本当にへーきなのかよ。」
「へーきだよ?…っと、そんなこと話してる場合じゃ無かったんだった!さぁ!時間は有限だよぉ?レッツらゴー!!」
とある作戦を胸に、ふざけた様にそう言いながら、森の奥へと走って行くのだった。




