コトバノチカラ
大前提として、この場には魔王軍に恨みを持った者が集まっている。
復讐に身を任せる者は、手段を選ばない。故に、悲劇が起こるのだ。
***
「急いだ方が良さそうね。」
周りにいた耳の良い者が、聞き耳を立てていた様だ。だから、リンは真剣な顔でそう言った。セレナ、パロールもそれに同意する。
「じゃーあ、もう皆んなとはお別れだねぇ。」
「そうね。それが良いでしょう。」
<では、皆様お気を付けて。>
3人の意見は一致した。それぞれが森へと赴こうと、散って行った。
「…………何を考えてるの?」
眉を顰めながら、セレナがそう呟いた言葉は誰にも届かずひっそりと消えていった。
***
「竜ってぇ、どこに居るんだろぉ。」
いざ森にやってきたは良いものの、セレナは、竜を見た事が無かった。けれど、
「ここに来るまでに竜は見なかったから、思ってたより小っちゃいのかもっ」
そんな事を考えながら草をかき分け、に道無き道を進んで行くセレナ。
刹那。
ヒュッ
セレナの頬を何かが掠めた。
「なにこれぇ。針?」
針は、目の前の木に突き刺さり、ぼろぼろと崩れていった。急いでその場を離れながらセレナは思案する。
「あれは、矢とかじゃない。なら、魔法?でも、詠唱は全く聞こえなかった………うーん、わっかんないなぁ。」
詠唱無しで魔法は扱えない。セレナにも聞こえないくらい、遠くから、或いは、小声で。けれど、セレナ……もとい、エルフは耳がいい。見た目からもわかるだろうけど。
「魔法の可能性は低そうだなぁ。でも、武器にしては脆すぎない?」
すぐに崩れてしまった針を思い出しながら、ひたすら考える。もし、可能性があるとすれば………
「…………竜。」
その事に気が付いたセレナは足を止めて、先程までいた場所へ、全速力で戻った。
「竜は全部で5匹。合格するのは倒した者だけなら、急がないと。」
そして、先ほどの場所に戻ると、案の定、そこには竜が居た。けれど、竜だけでは無かった。
「っ!……………パロール!」
そこでは、、パロールが竜と戦っていた。
「少し、判断が遅かったね。」
パロールが、そう言った。
「なにぃ?話せるんじゃん!なんで話さなかっ」
瞬間、セレナの胸付近に衝撃が走った。
「ガッ…ハァ!」
動きたいのに、動けない。
嘘だ。
動けないのではない。動かないのだ。だって、
「この子の加護は、なんだろぉ?」
セレナは、自分の口角が自然と上がっていくのを感じていた。
「そこで、大人しくしていなさい。」
その言葉は、セレナに、そして、竜に向けられた言葉だった。すると、竜の体全体に切り傷が生まれ、そして、塵になって消えた。
[パロールハシケンゴウカクデス]
どこからともなく、その言葉が森全体へ響いた。そして、もう用はないとばかりにその場を去ろうとするパロールに、セレナは声を掛けた。
「見えない攻撃。誰も読めなかった文字。何故か話さなかった貴方。」
「…………。」
パロール何も言わない。足も止めない。
「まさに、言葉の力って感じねぇ。」
セレナは静かにそう言った。
パロールはただ前を向いて歩いている。
「さあっ!急がないとっ!なんだか、やばぁーい事が起きそうだしねっ!」
結局パロールは、一度も振り向くことは無かった。
***
「さっきの針みたいな攻撃は、パロールのものだったのかもねぇ」
そうだも仮定すると、ある疑惑が膨れ上がる。
「ルールも、嘘だったのかなぁ。」
特に、注意事項についてだ。パロールは、竜が5匹と言っていたが、それよりも少ない可能性が高い。他にも、嘘が混ざっているだろう。
「ほんとっ、大急ぎだよねぇ」
セレナは楽観的に、そう言うのだった。




