心を忘れた少女と言葉を忘れた少女
「試験会場、
と・お・す・ぎ!!!!」
セレナはそう叫んだ。
「時間ギリギリなんですけどーーー!」
額の汗を拭いながらそう言った。
セレナは、対魔学園に入学する為に入学試験(一次)が行われる試験会場へと足を運んでいた。
「ここが噂の教会ねぇ」
試験会場は、魔王を目の敵にしているラルム・カテドラルという宗教団体の本拠地である。
「すいませーーん!試験受けに来たんですけどー」
教会の扉をドンドンと乱雑にノックして叫んだ。すると、扉が開き……
「いでっ!」
セレナの顔面にぶつかった。
「………」
扉を開けてこちらを無言で見つめているのは、修道服……ではなく、軍服を着て、腰に剣を差した女性だった。
「大声を出して、非常識だとは思わないのですか?」
女性は、黒縁メガネをくいっと上げてそう言った。
「すみません!!!!試験を受けに来ました!!!」
「ですから、声が大きいと……」
そう言う女性の視線は、セレナの耳に留まった。
「…あぁ。エルフでしたか。なら、常識が無くても当然ですね。」
女性は、特に驚いた様子もなく、淡々と事実を述べている。そんな様子が、セレナにとっては少し新鮮だった。
「びっくりしないんですね!」
驚いて何になるんです?」
「………まぁ、確かに」
「……ところで、貴方は試験を受けにきたのですよね。」
「あっ!はいっ!!」
「その格好で?」
「…………あっ」
「………………………。」
「………………」
セレナの格好は、ボロボロのローブに泥で汚れたシャツ、ビリビリになって半ズボンになった長ズボン、すり減った靴という、ザ・貧乏人という装いだった。
「………ダメ……ですかぁ?」
「………駄目ではありませんが、服、貸しましょうか?」
「良いんですか!?」
「まぁ、はい。では、こちらへ。」
そう言いながら、女性は教会へ入り、小部屋へと案内した。そこでセレナは、女性の言われるがままに着替えを済ませて、
「ありがとーございますっ!」
と言った。
心なしか女性が嬉しそうな表情をしていた気がするが、気のせいだろう。そんなことを考えていた時、 とんっ と、セレナの肩を誰かが叩いた。
「なあに?」
そう言いながら、後ろを振り返った。そこには、自分よりも背丈の低い少女が心の読めない表情で立っていた。
「………」
「……………」
気まずい。
どうしてこの子は何も話さないんだろうか。
すると、少女の手に握られた細い短杖が動いた。なにをしたのかと思えば、杖から出た光が文字を形どっていた。
<あと5分程で試験開始時刻ですよ。>
「あっ………」
時計を見ると、本当に時間が無い。
「ありがとうね!」
<いえ、お気になさらず。>
セレナはそう言って、大急ぎで受付をし、試験が行われる大聖堂へ走った。小さな少女も付いてきていた。
「もしかして、貴方も試験をうけるの?」
<はい。>
「そっか!お互いがんばろーね!」
<はい。>
心を忘れた少女と、言葉を発さない少女は、全速力で大聖堂へ向かった。




