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78 予選

 翌朝、レオさんが訓練場で長剣を振るう姿に、女子生徒たちが「レオクス様、かっこいい!」と歓声を上げる。

 レオさんは声援に軽く応えて、私に穏やかに微笑んだ。


「武器の調子が急に良くなりました。エストさんが何かしてくれたんですよね?」


 私は一瞬、言葉に詰まった。

 レオさんの真っ直ぐな瞳に、貴族派の妨害を話したい衝動に駆られる。

 でも、みんなの気が散って、試合に集中できなくなるのはイヤだから、「気のせいですよ」と笑顔でごまかす。


 ウィル君は剣に雷を乗せて振り、剣の柄をじっと見つめて首を傾げた。


「エストさん、剣の魔力が安定してます。昨日はあんなに違和感があったのに、それが全く。もしや貴族派の仕業だったんじゃ?」


 私はその指摘にドキッとした。

 魔法の知識では、ウィル君に敵わない。

 はぐらかすように笑い、「まあ、ちょっと手入れしただけですよ」と答える。


 ミハイルさんは剣と盾を確かめながら、「武器に細工? それをエストさんが直してくれたのですか。ありがとう! ヤツらが送り込んだ連中を叩きのめして見せますよ」と力強く笑った。


 近くにいたオーランドさんが、制服の襟を整え剣を手に視線を落とす。


「⋯⋯そんな小細工を。申し訳ありません、レオクス会長。父を説得しているのですが、返事も口先だけだったようで」

「オーランド君のせいじゃないし、エストさんが解決してくれたみたいだから」


 オーランドさんが私の方に歩み寄ってきて、丁寧に一礼した。


「ありがとうございます、エストさん。あなたのおかげで、私も気を楽にさせられました」

「あ、いえいえ。オーランドさんは何も悪くないんですし。私もオーランドさんのこと、応援してますから」

「すごく励みになります。私もあなたを応援してます!」


 オーランドさんは少し照れるような顔をみせて、レオさんの方に戻っていった。

 いい人なのに、いくら皇妃の実家だからって、苦労する姿は気の毒に思えてならない。


 レオさんがオーランドさんに向かって剣をかかげた。


「互いに全力を尽くして、この機会に磨き合おう」


 そんなレオさんに元気付けられたみたいに、オーランドさんはいつもの明るさを取り戻した。


 セシリアさんとソフィアさんに呼ばれて、みんなの近くで練習してたジャンさんは、二人に励まされながら、「行けるところまで、頑張って見るよ」と剣を握りしめた。




 二週目に入ると合同訓練は白熱し、互いの技を高め合った。

 夜になり、私たちが控室に集まると、レオさんが静かに全員を見渡した。


「いよいよ明日から予選ですね。できれば、初戦で当たらない事を願っています」


 ウィル君が剣の鞘を軽く叩く。


「ぜひ、本戦で競い合いたいですね」


 ミハイルさんが外に響くような声で拳を突き上げた。


「全員で突破して、本戦を楽しみましょう!」


 拳を突き出すミハイルさんに、私はコツンを拳を合わせて笑顔を見せた。


「そうですよね! みんなで頑張ってきた成果を見せる時ですよ」


  私たちは手を合わせて、決意を固めた。




 大会当日、大闘技場は熱狂に包まれて、すごい盛り上がりになった。

 隻腕の皇帝・ガレント陛下と、リンシア皇妃が観客席の高座に臨み、皇都の貴族たちが華やかに集っている。


 バルマード様が審判席に立つと、いつもの穏やかな様子に安心させられる。

 すると、私を見て軽くウインクして微笑んだ。


 こんな茶目っ気が、バルマード様の親しみやすい人柄だなって、尊敬させられる。

 私なら上司にしたい人ナンバーワンだ。イケメンだし。優しいし。


 そう思ってると、私の顔がだらしなく見えたのか、観客席のレイラさんが鋭い眼光で、腕をバツ印にした。


 私が首をブンブン振ると、レイラさんに笑顔が戻って、大きく腕で丸印を作った。

 周囲の人たちの視線を集めてるけど、お構いなしって感じがレイラさんらしい。


 私の初戦の相手は、黒いマントを翻す槍使い。

 避けたつもりだけど、シールドが削られる。

 スカートが砂塵に揺れる中、私はロッドを構え、槍の突きを大きくかわす。

 彼がニヤリと笑って槍を突き出した。


「剣聖の娘がどこまでやれるか、見せてもらう!」


 私は単調な動きに、ロッドを振り上げて反撃。

 重い一撃がシールドを削り、手応えを感じた。

 槍の連撃をロッドで弾き、隙をついて一気に叩き込む。

 シールドが砕けて、勝利した。


「エストさん、お見事です!」とセシリアさんが手を振って大きな声で応援した。


 皇帝陛下が機嫌良さそうにうなずいた。

 私のこと、知っているのかな?


 レオさんの試合は圧巻。

 長剣を振るい、巨剣を振るう戦士のシールドを瞬時に砕く。

「レオクス様、最高!」と女子生徒の歓声が響き渡る。


 ウィル君は剣に炎を乗せ、氷魔法使いを圧倒。

「これで勝たせてもらいます」と囁き、シールドを破壊。


 ミハイルさんは盾で猛攻を受け止め、剣で反撃し、堅実に勝利。


 オーランドさんは女子生徒の「オーランド様、素敵!」の熱い声援を受け、熟練の剣士と対戦。

 相手が一枚上手で、オーランドさんのシールドが砕けて、残念に思った。


 皇妃は、オーランドさんの敗北に唇を噛むけど、勝利を認め静かに手を叩いた。


 ジャンさんは善戦したけど、予選の最終試合で惜しくも敗退。

 セシリアさんとソフィアさんが「ジャンさん、かっこよかったです!」と励ます姿に、三人の仲の良さが伝わってくる。

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