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79 本戦開始

 控室に戻って、私たちはお互いを称え合った。

 ウィル君が微笑んで手を広げた。


「エストさん! あのロッド捌き、本当にお見事です」

「ウィルの魔法剣も圧巻だったよ!」


 そう返すと、レオさんが穏やかにうなずいた。


「エストさんが武器の細工を解いてくれていたので、戦いやすかったです」


 だけど、レオさんが少し表情を曇らせる。


「みんなの戦いを見ていて分かったことがあるんです。私たちのシールドの保護範囲が広すぎるせいで、かわした攻撃で削られています。貴族派が結界にも細工を施し、皇帝派の選手を不利にする策でしょう。本戦では大きくかわさないと、判定負けにさせられます。そこを注意してください」


 その直後、バルマード様が私たちの控室を訪ねてきて、新しい指輪と闘技場の結界を再調整した証書を持ってきてくれた。


「やはりレオ君もわかっていたんだね。貴族派の不正には、始まった瞬間から気付いてはいたんだ。だけど公にすれば、「中止だ」との声が上がり、陛下が望んだ大会にケチが付いてしまう。それが彼らの狙いだったのだろうね。でも、これ以上の不正は見逃さないよ。だからみんなには、安心して試合に集中してほしい」


 私たちはバルマード様から指輪を受け取り、気持ちを新たにした。

 レオさんが静かに剣を握りしめる。


「バルマード様の期待に応えられるよう、全力を尽くそう! 私たちの勝利こそが、不正を働いた連中が一番望まない結果だからね」


 レオさんはやっぱり一緒にいて、一番頼もしく感じる。

 みんなのリーダー的存在で、その凛々しさに少し見惚れてしまった。




 いよいよ本戦本番。

 初戦の相手は、怪しい雰囲気の短剣使い。

 影に潜って、私の背後の影から襲ってくる!


「Sランクも成り立てはこんなものか!」


 私は向き直って、ロッドで双剣を弾いた。

 影から影に渡る動きは、まるで暗殺者のよう。

 再び、私の影から現れると読んで、先にロッドを振り抜いてシールドを砕く!


 勝利の瞬間、皇帝陛下が立ち上がって手を振った。


「見事だ!」


 バルマード様が私を温かく見つめてくれる。

 その穏やかな表情に、私は安心しながらお辞儀をした。


 レオさんは槍使いを圧倒し、シールドを瞬時に砕く。

「これが皇太子の力だ!」と観客席が沸いた!


 ウィル君は剣に雷を乗せ、風魔法使いを翻弄し、ミハイルさんは盾で重装戦士の攻撃を受け止め、剣で反撃し二人とも難なく勝利する。




 準々決勝。

 私の相手は、黒鎧の両手剣使い。


 あの重い一撃を食らえば、シールドが一瞬で飛ぶ。

 彼が吠えながら剣を振り上げた。


「俺の方がSランクにふさわしいと、何故ギルドはわからない!」


 私は大振りのスイングを屈んでかわし、ロッドで両手剣を突き上げると、一気に体勢が崩れる。

 連続攻撃でシールドを砕いて勝ち上がった。


 セシリアさんが手を振って、「エストさん、最高です!」と応援してくれる。


 レオさんとウィル君も勝利したけど、ミハイルさんの試合は衝撃的だった。


 相手は白姫。

 声色は変えているけど、その正体はあのローゼさんだ。


 白いフードを被り、孤高の剣技でミハイルさんの守りを崩す。

 彼女が静かに剣を構えた。


「さすがは帝国最強の呼び声高い、白姫殿だ。こうもたやすく懐に入られるとは」

「防戦一方にはならず、切り返してくる動きは見事ですよ、ミハイル公子」


 彼女はミハイルさんを鍛えるかのように、隙を見せつつも的確にかわし、攻撃に転じる。


「ですが、これはどうですか」

「っ、早い!」


 その動きはまるで稲妻のようで、見えたと思ったら、少し遅れて音が響いてくる。

 ミハイルさんは無数の攻撃を全て盾で防ぎきって反撃するけど、白姫の疾風のような動きに、徐々に遅れ始めているように見えた。


「当てたと思ったらまた残像、これが対人戦の駆け引きなのか⋯⋯」


 激しい攻防の末に、ミハイルさんのシールドが砕け、彼が膝をつく。

 彼が剣を地面に突き立てた。


「見事としか言いようがない、あなたと戦えて光栄です」

「私こそ、これほどの戦士となら、また剣を交えてみたいものです」


 白姫は、ミハイルさんに何かを耳打ちして静かに去っていった。




 控室で私はミハイルさんの善戦を讃え、肩を軽く押した。


「あの攻防、すごかったです! あまりの速さに、どう戦ってるのかわかりませんでした」


 ミハイルさんは剣と盾を置いて、笑みを浮かべた。


「バルマード様に白姫と、目指すべき存在がいるのは励みになりますね」


 ミハイルさんの瞳に新たな決意が宿ったようにみえた。




 準決勝は、ウィル君対白姫。

 姉弟対決だけど、ローゼさんが容赦なく攻め立てる。


「連携は見事ですが、あなたの剣は魔法に頼りすぎています」

「弾くのが精一杯だけど、同時詠唱ならどうです!」

 

 ウィル君の剣に炎と雷が立ち昇り、闘技場を彩る。

 ウィル君が叫びながら剣を振り上げた。


 ソフィアさんが「ウィル君、負けないで!」と声を上げる中、白姫の剣がウィル君の魔法を切り裂き、彼女の背後から三本の光の剣が現れて、ウィル君に向かって突き進んだ。


「無詠唱魔法!? やはりあなたは最高です。だけど負けるわけにはいかない!」


 ウィル君は氷と岩の壁を魔法で呼び出し、光の剣を相殺するけど、その頭上には白姫が!


「頭の上がお留守になっていますよ」

「しまったッ!」


 激しい金属音を上げて、ウィル君が白姫の一撃を受け止めると、そのまま闘技場の石畳まで押し込まれ、闘技場の床が大きくひび割れる。


 皇帝陛下が立ち上がると興奮して手を振った。


「魔法で強化されたアダマンタイト級の強度だぞ!」


 その言葉に「なんて勝負だ!」と歓声が湧き上がる。

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