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幸湖日記  作者: 炎華
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21.ばぁばの家へ行く

今、幸は人道橋を渡って、ばぁばの家へ向かっている。

まだ、何て言ってばぁばを説得しようか、悩んでいるところだけど、

とりあえず家まで行ってみようと思ったんだ。



「やっぱり、あのとき、幸に触れた気がしたのは、

気のせいじゃなかったんだね。」

ままは、幸の背中を撫でながら言った。

「そうだよ。ままの手は、幸の頭に触ったんだよ。」

それを聞くと、ままは嬉しそうに笑った。

「ままがあんまり泣いてるから、

『幸、いない。』って言ってるから、

どうしたら、幸が傍にいるのをわかってもらえるだろうって、

うろうろした。」

「そっか。ありがとうね。」

ままは静かな声で、そう言った。

しばらくままも幸も何も言わなかった。

ままは幸の背中を撫でて、

幸は久しぶりのままのナデナデを、背中に心地よく感じていた。

時折、表通りを大きな車が通る音が聞こえる。

静かだ。

藤の花房が、風に揺れる。

このまま、ぱぱを待てばいいのだろうか。

何年もかかるだろうか。

その間、幸の力だけで、ままを引き留めておけるだろうか。

いざとなったら、

ぱぱを待たずにあっちへ逝かなければいけないかもしれない。

でも。

でも、このままじゃ、やっぱりだめだ。

このままじゃ、みんな悲しいままだ。

ぱぱも、ままも、ばぁばも、そして、じぃじも。

だからといって、何かいい手があるかと言えば、

何もないに近い。


「幸。」

ままが呼ぶ。

「なに?」

急に呼ばれて、少し驚いて、返事をした。

「まま、ぱぱの所へ行ってくるよ。」

ままは幸の顔を覗き込んで言った。

「幸は、ままの方がぱぱに依存してると思ってるでしょ?」

いたずらっ子のように、口元に笑みを浮かべている。

「う、うん。」

「当たり!」

人差し指を立てて、ままは右手を挙げて空を指した。

「でもさ、ぱぱはままがいないと、

行動がエスカレートするんだよ。

それは知ってるよね。」

「あっ。」

そうだった。

ぱぱを抑えていたのは、ままだった。

「ぱぱ、ばぁばとじぃじを恨んでる?」

ままは大きく頷く。

「じゃ、じゃあ。」

「まだ間に合ううちに、行ってくるよ、ぱぱの所へ。」

そう言うと、幸を膝から下ろして、

ままは立ち上がった。

「まま。」

不安そうな顔をしていたのだろう。

ままはにっこり笑って、幸の頭を撫でた。

「そんなに心配しなくて大丈夫。

行ってくるね。」

可動式の柵をすり抜けた後、ままはこちらを振り返って頷いた。

「いってらしゃい。」

幸はままの背中を、不安な思いで見送った。



さて、幸はどうしよう。

ままの背中が見えなくなるまで見送った後、

可動式の柵をすり抜けて、ままとは逆の山の方へ向かった。


  幸に、ばぁばを説得できるのかな。


木々の間の階段を登りながら、ばぁばの顔を浮かべる。

ばぁばも、幸が死んだと聞いたとき、すごく泣いてくれた。

ぱぱやままに負けないくらい、大きな声をあげて泣いてくれた。

本当に、幸を好きでいてくれたんだ。

ぱぱとままがお仕事でいないときも、幸に会いに来てくれた。

一緒にお庭で走って、笑って。


  幸もばぁばが大好きだった。


行こう。

今!ばぁばの所へ!


でも、ばぁばに、幸の声、聞こえるかしら。

じぃじがそばにいれば、あるいは。


人道橋を渡って、家々を通り過ぎ、

前におじいちゃんたちが住んでいた家へ向かう。


  ばぁば、おうちにいるかしら。


どきどきしながら、窓から中を覗くと、

ぼんやりソファーに座っているじぃじの姿があった。






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