6話「ダークホースの逆走は何が起きるか分からない」
私たちはユメさんたちの町に着く。
「あっ、来ましたね」
「兄貴ー」
そこにはアポロニアとテンマがいた。例の正義の騎士団もみんないる。というか二人は彼らの前で話をしていたのだろう。
「兄貴たちも聞いていてください」
テンマに言われたので立ち止まって耳を貸す。彼はそのまま話し続ける。
「我ら正義の騎士団は本日をもって魔王を討伐した。だが、俺たちの役目はそれで終わりか?違うだろ?正義とは何だ?今一度、己の心に聞け。そして決断しろ。正義の騎士団としてやるべきことを。あぁ、横にいる姫……いや、王を守ることだ。そこで王、先ほど何とおっしゃいましたか?」
そう振られて赤面をする彼女。そしてぽつりと口にする。
「吉田健三のフィアンセになります」
いや、待て。そういえばあの時、約束したけど。そんなこと大勢の前で言うと……。
私の方へ回れ右をして周りの者は武器を私に向ける。
「いや、世界を救った英雄が世界を救ったハッピーエンドではなく、女王に恋された英雄が世界のためにバットエンドですか?花咲さん、助けてください」
「あの時のキスは私を苦しめて楽しむためなのですか?乙女の唇にとってとろけるチーズが焼けるよりも心が熱くて溶けてしまう思いでキスをしたのに。それが何ですか?この際です。はっきりどっちが好きなのか、言ってみてください。場合によっては殺しますから」
(待って。君、私のナビだよね?その拳下ろしてくれないかな?というかあの二人どこいった!!)
そう言って有川さんとユキさんを探そうと周りを見る。しかし彼女たちはいない。
「俺はどちらも嫌いだ。殺したいなら殺せ。ただし後悔はするなよ?」
我ながらひどくて卑怯だと思った。好きだった相手を殺すことがどんなに辛いのか分かっている。だが、それほどどちらも愛している。いや、彼女たちだけではない。テンマもユキさんも有川さんも愛している。愛しているからこそそれを決めて苦しむ姿を見せるぐらいならこうするしかなかった。だからこそ決められないのだ。
「フッ。さすが兄貴だ……んげっ、ユメさんだ」
ユメさんが拳に息をかけて近付いてくる。
「あんたたち、英雄様を怖がらせるでないよ?まったく有川様とユキ様は飛んで来たのに遅いと思ったらあんたらが邪魔をしていたとはねぇ。宴の始まりよ?」
「炊飯ジャー!!」
みんな声を合わせて彼女に向かって言う。ユメさんの宿屋の前で大きな机が運ばれていく。いや、他の店からも運ばれてくる。それと共に歩いていると、有川さんとユキさんが広場にいた。その近くにレッドアイさんもいた。
「おぉ、帰ってきた帰ってきた。君たちのお陰でこんなふうに町は修復されたよ」
「これがあの町?」と花咲さんは言う。
一枚の写真に近代未来の町が映っていた。
「さて、治療しましょうかな?」
いや、手に持ってる五本のドライバーとハンマーは何だよ。
「お断りします」
「あら、そう。寝てる時にでもお姉さんが痛く苦しくしてあげるわ」
「その必要はないわ、お母様。だって私がいるのですから」とユキさんは助け舟を出す。
「そうね。あなたを拒んでいる娘に治せるのかしら。ぐふふ」
あなたよりは少なくとも大丈夫な気がします、と口に出すと手に持ってるハンマーが頭に直撃しそうなので心の中で唱えた。
私はそこでひとまず次の日の朝日を迎えるまでそこで仲間たちと宴をした。美味しい食い物や飲み物など楽しめていたが、やっぱりここじゃないと私は思ってしまう。




