5話「翼をください」
システムメッセージが流れる。
『この世界に残りますか?
YES NO』
どうやら、ボタンが押せるようだ。私の目の前にそれが現れる。赤い文字でまるで緊迫感を漂わせる。こんなに止まってるなら他の者達と移動できると思ったが、腕と手以外は動かせられない。また有川さんの姿だけは見えなかったが、他の人たちも動かせないようだ。
そもそもこの質問はどういうことだろう。ここで残れば助かる可能性は低い。しかし残らなければどうなる?元いた世界に戻るのか?いや、私は死んだぞ。元に戻ると言ってもせいぜい病院で寝たきりで人生を終えてしまうだろう。いや、それどころか天国か地獄に行ってそれなりの過ごし方をするのかもしれない。いや、待てよ。このまま居なくなったら他の仲間は?この世界は?どうせなら、このまま落ち着くまでこの世界にまだ居残ろう。
私は『YES』のボタンを押した。私の体が楽になる。それと同時に瓦礫が落ちてくる。
「神様、ありがとうございます」
有川さんのその言葉と共に瓦礫が虹に弾き飛ばされる。いや、虹ではなかった。彼女の翼だった。
彼女は落ちてくる瓦礫を全て払い除けて私たちに説明する。
「神様に『どうか、私のためにもう二度と壊れない翼をください』と祈ったら貰えたわ」
「それ、飛べるか?」
「おそらく飛べるけど、どうして?」
「俺を上に連れてけ」
「なら、私はここでこいつの足を駆除しておきますわ」
「ダメイド、ありがとう」
「名前で呼んでもらってもよかったのに」
ユキさんは悔しそうに魔王の足を眺める。私は有川さんに体を預けた。
「私も行っても?」と花咲さんは物欲しそうに聞いてくる。
「当たり前だ!!」と私は言い放った。
そして彼女の翼により、私は魔王の顔面に飛んで行った。花咲さんも横にいた。
魔王は呻き声を上げている。
「おい、魔王。お前は俺ら、ダークホースに喧嘩を売るべきではなかった。理由は三つだ。まず一つ、先程も言ったが俺の仲間はお前に恨みを持った奴だらけであること」
私が話している最中、花咲さんはそんな彼に攻撃をする。しかし効果は無い。むしろ攻撃されてくる。それを有川さんの虹色の翼が防ぐ。
「二つ、それはこの世界にとって大事なアポロニアを敵に回したことだ。ぶへほっ!?」
「あら、ごめんなさい。この翼で攻撃できるかと思って翼だけ当てるつもりが」
彼女はその言葉通り、魔王に翼を当てて攻撃したのだろう。しかしいきなり飛び出したので私的には気持ち悪くなった。
「うぇっ。三つ目……有川さん、奴の頭に行ける?」
「炊飯ジャー!!」
彼女は私を持って黒い雲と大きな魔王の頭の上に連れていく。
「お前はこの最低男、吉田健三を最後の敵にしたことだー!!国境国境!!」
そう言って魔王の頭に黄金の武器”八切”を振るう。その振りが大き過ぎたせいで私の体が有川さんの腕から離れる。それと同時に彼の頭に私の持っていたそれが大きくなり、大きな黄金の剣となった。さらに魔王と私の黄金の剣の真上から太陽の光が一直線に入って来た。
私は物凄いスピードで切り裂きながら落ちて行く。私は彼の体の半分くらいの所でその大きな剣の持ち手のところを何とか両手両足を載せて立つことが出来た。地面にその剣は斜めに突き刺さった。彼の体はそのまま縦に半分に引き離されるなり、塵となって太陽の光に吸い込まれてしまった。
「よっ、ダメイド。ただいま」
「そのまま土におかえりくださいませ」
「いや、何でだよ」
べちゃっ。
私の上からなにか落ちてきた。私は頭に降ってきたそれを撫でる。いや、これあれだよな。あぁ、なるほどね。ユキさん、君もこれをかけられて怒ったのね。
魔王を切り裂いて上から落ちてきたものはそれを見ていた気絶状態の上の二人の口から吐かれた汚物でした。
彼女たちは下に降りるなり、声を合わせて「グロデスク」と何回も連呼して言う。
何はともあれ、黒くなった雲が晴れるかのように私たちは魔王を討ち取ったのだ。
彼女の寄越したタオルで私は頭を拭く。
「それでどうするのです?」とユキさんは言う。
「戻ってきた道を戻ろう。だって私たちが最初に出会った町を含め通ってきた町に約束を残してきたからな」
「これはどうします?」
彼女は太陽に照らされた黄金の大きな剣を指差して聞いてくる。
「これは勝った証拠であり、負けた魔王の墓だ。だからこのまま照らされて置こう。この世界が平和であることを祈って」
「あっ、技使えたのですね。気絶してすみません。あの武器はその合成した武器のどれかの技名を言えばそれ相当の威力が出るのですが、もし一度でも使用したら使用不可になるので最後の最後まで黙ってました」
「あぁ、ありがとう」
「いえいえ」
私たちは魔王の城を出た。死体や骨がたくさんあった。ひとまず私たちはユメさんたちと約束した町に向かうのだった。魔王を倒す旅は終わった。しかし私たちの旅は終わらない。約束を果たす旅がこれから始まるのだった。




