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(7)「心配だから電話をかけてね・・お願い・・・」

冬になると、信行は毎週上越方面のスキー場に滑りに行った。ある時、毎回立ち寄る肉屋のコロッケ売り場に寄ると、店のおばさんが、女性から手紙を預かり、その手紙を信行に渡した。手紙を書いたのは、石打駅で数回すれ違った女性だった。手紙の内容は、スキーを教えて欲しいと・・・そしてスキー場で待ちわせをする。その事がきっかけになり、2人は恋に落ちていった。ある時久美子は「私、農家の長女なの・・・」

深刻な表情で言った。


その夜2人は結ばれた。久美子は信行が初めての男性だった。信行が目覚めると、久美子が横に寝ていた。信行が目を覚ますと同時に久美子も目を覚ましたようだった。信行が、久美子の髪を触ると・・・


「・・・・・」


久美子は黙ったまま、信行に抱きついた。信行もそれに応えるように久美子を強く引き寄せた。


「久美子・・・おはよう」

「おはようございます」


久美子は小さな声で返事をした。信行が起きようとすると・・・


「おねがい・・行かないで・・」


信行がどうして?と聞くと。


「怖いの・・信行さんがどこかに行きそうで・・・」


怯えるような声で言った。


「大丈夫だよ。どこにも行かない。ずっと離さないから・・・」

「絶対だよ・・絶対に離さないでね・・・」


久美子が懇願するように言うと、信行は、男性と初めて体験したことで、心が不安定になっていると思った。

久美子の額に軽くキスをして、再び身体をギュッと抱きしめた。


越後駒ヶ岳の登頂を終えて、2人は山を降りた。登頂中、久美子は、きつい登りも信行の後を必死で着いて来た。その様子を見て、信行は根性のある女性だと思った。

登山の翌日は、奥只見ダムを観光したり、小出近辺の温泉に入ったりした。夕方になり、久美子を家に帰す時間が来た。


「どこまで送ろうか?」

「家のそばまで送って・・・」


久美子の家の数キロ先に車が差しかかると


「家に寄って行く?」


と言った。急な話だったので、今回は遠慮すると答えた。


久美子を送り届け、長岡インターから関越自動車に乗り、横浜に向かった。車を運転しながら・・・


「久美子に逢いたい・・・」


信行の心の中は、久美子の笑顔、久美子の声、久美子の仕草、久美子の髪の匂いで一杯だった。一時間ほど前に別れたばかりなのに、逢いたくて、逢いたくて仕方がなかった。


信行は車を逆戻りさせ、久美子に会いに行きたいと云う衝動にかき立てられたが、その気持ちを抑えた。その理由は、送り届ける少し前に久美子が・・


「家に着いたら電話をかけて・・・」

「えっ?横浜に着くのは夜中だよ・・」

「いいの待ってるわ。無事着いたか心配だから・・」


信行は寝ている家族の迷惑になるので明日電話をすると言うと・・・


「電話の側で待っているからお願いかけて、朝になっても待ってるから・・・」

信行は・・・

「分かった、きっと電話をする・・」

「うん・・・待ってる。絶対に掛けてね・・」


久美子は信行の方を見て微笑んだ。そんな久美子がいじらしく、信行の心が「キュッ!」と縮んだ。


続く・・・・




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