(6)一緒に来てくれてありがとう・・・
冬になると、信行は毎週上越方面のスキー場に滑りに行った。ある時、毎回立ち寄る肉屋のコロッケ売り場に寄ると、店のおばさんが、女性から手紙を預かり、その手紙を信行に渡した。手紙を書いたのは、石打駅で数回すれ違った女性だった。手紙の内容は、スキーを教えて欲しいと・・・そしてスキー場で待ちわせをする。その事がきっかけになり、2人は恋に落ちていった。ある時久美子は「私、農家の長女なの・・・」
深刻な表情で言った。
2人が乗った車は、小出インターで高速道路を降り、薬師寺スキー場を左に見て、快調に走行した。助手席の久美子は、窓ガラスを少し開け
「あ~ぁ!緑も綺麗だし、気持ちがいいわ」
「うんっ!でもこの先は、長いトンネルだよ・・・」
信行は以前、奥只見丸山スキー場に滑りに行ったことあったので、この先に長いトンネルがあるのを知っていたのだ。
その奥只見丸山スキー場は、豪雪地帯の山岳部に位置しているので、冬の間は、雪が多過ぎて閉鎖になり、他のスキー場が終わった春にオープンする珍しいスキー場だった。
「トンネルの先にスキー場があるのを知っている?」
「うん・・詳しくは分からないけど聞いた事はあるわ・・」
信行がスキー場は、5月過ぎまで滑れると説明すると、久美子が・・・
「来シーズンの春に来ようね」
「景色も良いし。でも、春は、コブがびっしりだよ」
信行がコブ斜面が凄いと言うと、久美子は、コブ斜面は苦手だけど、かっこ良く滑りたいと言った。そして・・
「信行さん!。冬に滑り方を教えてね。いっぱい教えて貰って、いっぱい練習して、春に奥只見のコブを制覇するから!」
「厳しい練習に泣くなよ!」
信行が笑いながら茶化すと・・
「久美子は強い子だから大丈夫よっ!」
その言葉を聞いた信行は、今まで経験したことのない感情に包まれた。そして、この人と生涯を過ごすのだろうか?と漠然と考えた。
シルバーラインのトンネルは、岩盤を掘削した跡がむき出しになっていたり、地下水が雨の様に垂れ落ちる場所があったりと、コンクリートで綺麗に塗り固めたトンネルと違い、ある意味、凄みを感じるトンネルだった。
このトンネルはどこまで続くのだろうと不安になった頃、銀山平方向を示す、小さな標識が見えた。
「ここを曲がると銀山平だから」
「うん・・・」
ほっとした返事をするが、先ほどまでの元気は、久美子から消えていた。その理由は、今夜、信行と宿を共にするからだった。
「私、冷え性なの?だから靴下を履かないと寝られないのよ・・」
久美子は、急にとんちんかんな話をした。信行は、久美子の緊張をほぐすように・・・
「新潟のお酒は美味しいから大丈夫だよ・・・」
信行もとんちんかんな事を言った。
宿に到着した。2人が泊まる部屋に入ると信行は・・
「一緒に来てくれてありがとう・・・」
久美子を抱き寄せた。久美子は、信行の胸に顔をうずめ
「私も・・・」
二人は熱いくちずけをした・・・・
続く・・・




