(3-7)神様有難うございました!
----肉屋のおばさんに手紙を預けて、5日目の水曜日----
久美子の心は沈んでいた。その理由は、石打スキー場に向かう途中の肉屋のおばさんに託した手紙の返事が来なかったからだ。
手紙を託して、5日目になるので、久美子は不安になった。一大決心をして、昼休みにNTTの電話案内に電話を掛けて、肉屋の電話番号を聞いた。屋号を伝えると、電話番号は登録されていて、事務的な口調で案内係は番号を教えてくれた。番号を手帳に控え「ドキドキ」しながら、肉屋に電話を掛けると、聞き覚えのある、おばさんの声が聞こえた。
久美子は、先日手紙をお願いした者ですが、如何でしたか?と聞いた。おばさんは、日曜日の夕方、田中君がコロッケを買いに来たので、間違いなく渡したと確信に満ちた声で返事をした。
その日は、仕事が終わると、一目散に家に帰った。玄関を開け、家の中に入った。
ここ数日、久美子は、母の秋江に「手紙が届いてる?」と真っ先に聞いたのだが、前日、秋江が「文通でもしているの?」と笑ったので、この日は、台所に寄らず、廊下で秋江が居る台所に向かって「帰りました」と声を掛け、二階に上がった。
部屋に入り、ベッドに腰掛けた。久美子は意を決し、一階に降り、台所に入り、他の物に目もくれず、冷蔵庫を開け牛乳を取り出し、コップに注いだ。久美子は牛乳を飲むために、意を決したのではないのだが、とにかく、牛乳を飲んだ。
牛乳を飲みながら、テーブルを見渡すと、手紙が一通置いてあった。手紙の宛名を確認すると。
「西郷久美子様」
待ち望んだ久美子宛ての手紙だった。
手紙を手に取り、裏側の差出人を確認すると「横浜市○×◇区大空町2-53-1 田中信行」と書かれていた。
久美子は秋江に「なぜ教えてくれなかったの?」秋江に口を尖らせながら不満を言った。秋江は「ゴメンね忘れてたわ」と笑いながら答えた。
久美子は、部屋に戻り、信行から届いた手紙を机の上に置き、しばらく眺めていた。深呼吸をしたあと、引き出しから木製のレターナイフを取り出し、丁寧に開封した。中の便箋を取り出し、手紙を読んだ。
「拝啓、西郷久美子さま お手紙本当にありがとうございました。思いがけないお誘いに心躍る思いです。もちろん、ぜひ一緒に滑りましょう。今週末の日曜日に石打スキー場に行きますので、都合が宜しければ、第一ゲレンデ前の丸山食堂で9時頃お待ちしております・・・田中信行」
手紙を読み久美子は、両手を胸に押し当てて「神様!有難うございました!」とつぶやいた。
久美子はキリスト教徒では無かったが思わず「神様」とつぶやいたのは、この場面で「南無阿弥陀仏」だとか「ブッダさま!」などは似合わない。恋をする女子に取って「神様!」は定番なのだろうか?。
----肉屋のおばさんに手紙を預けて、6日目の木曜日----
お昼休みに行きつけの美容室に電話を掛け、夕方の予約を取った。
久美子は、鼻歌をうたったり、時々、窓の外を眺めたりと、いつもと様子が違うので、同僚の栄子が覗き込むように。
「久美ちゃん、なんだか楽しそうね。何か良い事があったの?彼でも出来たの?」
「ふふっ!ご想像に任せるわ」
「変な子・・」
栄子は、呆れた表情で自分のデスクに戻った。
仕事が終わり、予約した美容室に行き、胸元まで伸びた髪を肩にかかる程度にカットして貰った。鏡に映った久美子を見て、美容院の先生は「久美子ちゃんは、本当に綺麗だわ・・」と褒めた。
髪のセットが終わり、家に帰ると、玄関先に雪が積もっていた。久美子は、雪かきをしながら、鼻歌をうたった。
続く・・・
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