(3-6)信行の恋敵・・・
<<作者よりお願いです。第章の1話~3話を頂くと、信行と久美子の気持ちが分かり、物語が膨らむので、是非、お読み下さいませ。>>
----肉屋のおばさんに手紙を預けて、4日目の火曜日----
病院の職員出入り口を出ると雪が降っていた。上越地方独特の湿った大粒の雪は、久美子の傘の上に重く積もっていく。バス停に向かう道を歩いていると、車が近づいて来た。久美子が振り返ると、二重壱五郎が運転する車だった。壱五郎は、車を停め、車を降りると久美子の横に並び一緒に歩いた。
昨シーズンの冬に久美子が車を側溝に脱輪させ、それを助けてくれたのが二重壱五郎だった。
それが縁で半年ほど交際をした。交際と言っても、肉体関係など一切なかった。そして、久美子の心は二重から離れた。だが、久美子を忘れられない二重は、自宅に電話を掛けて来たり、職場に会いに来たりしたが、ストーカーのように粘着質な行為は一切しなかったが、反対にそれが哀れだった。
「久美子さん・・・」
「二重さんのお気持ちがとても嬉しいです。お断りしたはずです」
「なぜですか?その理由を聞かせてください」
二重は、懇願する様に言ったが、久美子は、お話をすることはないとキッパリ言い切った。
久美子が断ると、二重は素直に車に戻り立ち去った。二重壱五郎は、非の打ち所がない好青年だった。本郷家の花見に参加すると、無口な父の修造と仲良く酒を酌み交わした。そんな壱五郎を修造は気に入った。
二重壱五郎は、新潟市内で、手広く自動車整備工場を経営する親の下で働き、周囲からは、やり手の跡取り息子と評価されていた。本来、嫁ぎ先としては、玉の輿なのだが、久美子は、西郷家に入る相手を望んでいたので、反対に玉の輿だと思えなかった。
もし、壱五郎が西郷家に入って農業を継ぐと希望した場合、壱五郎と付き合いを続けた可能性はあった。
久美子が家に帰ると、玄関先は30センチの雪が積もっていた。スコップで雪を退け、家の中に入った。
久美子は、母の秋江に。
「私に手紙来ていた?」
秋江は、呆れた顔になり、毎日手紙が届いたって聞くけど文通でもしているの?と笑った。
部屋に戻った、久美子は、ベットに寝ころび「手紙を渡したかおばさんに電話で聞いてみようかな・・・」
天井を見てつぶやいた。




