(2-7)元彼、壱五郎との出会い・・・
冬になると、信行は毎週上越方面のスキー場に滑りに行った。ある時、毎回立ち寄る肉屋のコロッケ売り場に寄ると、店のおばさんが、女性から手紙を預かり、その手紙を信行に渡した。手紙を書いたのは、石打駅で数回すれ違った女性だった。手紙の内容は、スキーを教えて欲しいと・・・そしてスキー場で待ちわせをする。その事がきっかけになり、2人は恋に落ちていった。ある時久美子は「私、農家の長女なの・・・」
深刻な表情で言った。
---解説---
二重壱五郎は(にじゅういちごろう)、久美子の元彼だった。一時は、二重壱五郎を結婚の対象として真剣に考えたが、二重壱五郎は、新潟を絶対に離れないと言った.西郷家の婿に入って貰う事を望んでいる久美子の心は離れて行った。
だが、壱五郎は、久美子の事を諦められなかった。
話を2人の出会いに戻そう。久美子と壱五郎の初めての出会いは、田中信行と石打駅待合室ので出会う一年前の冬だった。
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早速、久美子は電話案内で調べた二重自動車整備工場の本社に電話を掛けた。
直ぐに男性の社員が電話に出た。
「お電話ありがとうございます!二重自動車です!」
電話に出た社員のテキパキとした電話の応対で二重自動車整備工場のしっかりした社員教育と会社の活気が感じられた。久美子は。
「お忙しいところ恐縮ですが、御社のステッカーの事でお聞きしたいのですが」
会社名が書かれたステッカーの事を尋ねると電話に出た社員は。
「当社の名前が入ったステッカーは、販売した全車に貼ります」
久美子は、電話に出た社員に、雪道で車のタイヤを側溝に落としました。たまたま通った車の方に、ワイヤーロープで車を引きだして頂きました。助けて頂いた方にお礼をしたいと言うと「お礼など必要ない」と立ち去ってしまいました。
その車の手掛かりが、リアガラスに貼ってあった、御社のステッカーです。と説明した。その話を聞いた社員は。
「側溝にタイヤを落した車は白色の日産キューブですよね?」
「はい!なぜご存じなのですか?」
「貴女の車を引きだしたのは、僕です」
「えっ?本当ですか?その節は有難うございました。お礼をしたいので、そちらにお伺いして宜しいでしょうか?」
お礼の話をすると、困った時はお互い様ですと、助けて貰った時と同じ事を言って申し出を断ったが、久美子が同じことを繰り返すと「スキーは出来ますか?」と聞いたので「出来ますけど、初心者です」と答えた。
「実は、僕が非常勤教師をしているスキー学校主催の競技スキー大会が週末に開催されるのですが、参加者が少なく、困っています。宜しければ参加していただけませんか?」
「競技大会ですか?、私の様に下手なのが出て大丈夫ですか?」
「はい!大歓迎です。レベルに合わせたクラス分けをするので、大丈夫です。賞品も沢山出ますので優勝を目指して頑張って下さいね」
参加者名簿に氏名を載せるため名前を聞かれた。スキー場は、石打大松スキー場で、当日は9時頃までにスキー学校の受付に来て下さいと説明したあと、僕は二重ですと自分の名前を言った。名前が会社名と同じだった。
「二重さんですか?社長様でしょうか?」
「違います!下っ端です」
壱五郎は笑いながら言った。久美子は、大会当日、スキー学校の受付にお伺いしますと言って電話を切った。
父の修造に助けてくれた方が見つかったと報告すると、それは良かったと安堵した表情になり。
「うん!お父さん、それが驚いたことに二重自動車の社員の方だったの」
「ほ~ぉ!早速、お礼に行きなさい」
「それがね、お礼は必要ないので変わりにスキー大会に出てくれって」
「スキー大会?」
「そうよスキー大会に出るの。優勝して、優勝カップを貰って来るから」
それを聞いた修造は、温和な表情になり。
「ちゃんとお礼をするのだよ」
「はい!」と返事をしたあと、久美子は部屋に戻った。化粧台の前に座り、くしで髪をとかしながら
「あの方は二重さんって言うんだ。ちょっと素敵な方だったかな・・・」
車にワイヤーロープを手際よく繋ぐ壱五郎の姿を思い出し、スキー場で再会出来るのを楽しみに思った。
注、この物語は、フェクションであり、名前等の名称は、作者の創作により書かれています。万が一、実在したり、現存したりした場合、ご連絡頂ければ、速やかに対処いたします。尚、地名等は、リアル性を持たせる為に実在の駅名、土地名を使用していますのでご了承ください)




