(2-3)兄
冬になると、信行は毎週上越方面のスキー場に滑りに行った。ある時、毎回立ち寄る肉屋のコロッケ売り場に寄ると、店のおばさんが、女性から手紙を預かり、その手紙を信行に渡した。手紙を書いたのは、石打駅で数回すれ違った女性だった。手紙の内容は、スキーを教えて欲しいと・・・そしてスキー場で待ちわせをする。その事がきっかけになり、2人は恋に落ちていった。ある時久美子は「私、農家の長女なの・・・」
深刻な表情で言った。
西郷家は、昔、有数の豪農だったが、敗戦後、連合軍総司令部の命令に基づき、農地改革が行われ、農地を政府が強制的に買取り、その田んぼを小作人達が格安の価格で譲り受けた。
本郷家は、小作人に譲った土地を地道に買い戻して、今の土地に広げた。
(注、この物語は、フェクションであり、名前等の名称は、作者の創作により書かれています。万が一、実在したり、現存したりした場合、ご連絡頂ければ、速やかに対処いたします。尚、地名等は、リアル性を持たせる為に実在の駅名、土地名を使用していますのでご了承ください)
ある日のお墓参りに親戚のトミ子も来た。修造が・・・・
「トミ子さん、忙しい中ありがとう・・」
「いいのよ・・・」
「健一ちゃんが生きていたら、今年で何歳だろうか・・」
「うん・・あの時5歳だったから・・・29歳だな・・」
「あの時から24年も経ったのね」
「ああ・・早いものだ・・・」
修造は健一の事を思い出すように青く広がる空を見た。
久美子の上に健一と言う長男がいたが、5歳の時亡くなってしまった。
死んだ原因は、病死だと久美子は聞かされていた。久美子が生まれる前に死んでしまった長男には、お墓の前でしか会えないが、手を合わせ、久美子は
「お兄さんが生きていたら・・・」
兄が西郷家を継ぎ、久美子は外にお嫁に行けたのに・・と、お墓参りのたびに考えた。
夜になり、久美子が野菜の仕分け作業場に行くと、母の秋江が作業をしていた。
「お母さん、手伝おうか?」
「ああ・・・・」
父の修造と同じで、秋江は口数が少ないが、朝早くから夜遅くまで休むことなく働いていた。
「母さん・・お兄さんてどんな人だったの?」
「良い子だったよ・・」
「なぜ死んだの?」
「病気だよ・・・」
久美子が高校生の頃、同じ質問をしたことがあったが、秋江は、今回と同じことを言った。
続けて話を聞こうとするのだが、話を逸らしたり、席を立ち、その場から立ち去ったりしたが、久美子は成人し、分別出来る年齢になり、西郷家にとっても、将来、家を継ぐ久美子には、話さなくていけないと思った。
続く・・・・




