第8話 深夜、幽霊より怖かったもの
【超速報】深夜の幽霊退治作戦スタート!?望月あかね、完全武装でまさかの大暴走!!
—
平和な夜。
……のはずだった。
窓が揺れる。
床が鳴る。
誰かが歩いた気配。
そして始まる――
望月あかね、
人生最大級の心霊パニック!!
シーツ。
ニンニク。
十字架。
懐中電灯。
なぜか恐竜スリッパまで装備完了!?
しかし。
本当に怖かったのは――
「お友達だよ!」
つむぎのその一言だった。
幽霊はいるのか?
いないのか?
そして逃げ出したあかねが向かう先は――
中瀬俊介の家。
数分後、
何も知らない彼に
人生最大級のとばっちりが降りかかる……!
夜。
望月茜の部屋。
静かだった。
今度こそ。
本当に。
布団。
二つ。
並んでいる。
一つは。
茜。
もう一つは。
つむぎ。
つむぎ。
ぐっすり。
茶色いくまのぬいぐるみ。
ぎゅう。
顔。
半分埋まっていた。
幸せそう。
ものすごく。
一方。
茜。
眠れない。
全然。
天井を見る。
じーっ。
瞬きもしない。
その時。
からっ。
窓。
少し開く。
また閉まる。
かさっ。
カーテン。
揺れる。
風はない。
なのに。
揺れる。
ぎしっ。
廊下。
床が鳴る。
誰かが。
歩いたみたいに。
茜。
考える。
『寝てる間だけ』
『力が暴走してるのかな』
『だったら』
『全部つむぎちゃんだ』
『大丈夫』
四秒後。
『……』
『いや』
『待って』
『もし』
『幽霊を呼んでたら!?』
ぱきっ。
何か鳴った。
茜。
飛び起きる。
ぴしっ。
止まる。
つむぎを見る。
天井を見る。
廊下を見る。
そして。
決意した。
「……よし」
ゆっくり立つ。
顔。
真剣。
ものすごく真剣。
でも。
本当は。
ものすごく怖かった。
認めなかったけど。
絶対に。
数分後。
つむぎ。
まだ寝ている。
ぐっすり。
一方。
茜。
変身していた。
完全武装。
頭から。
白いシーツ。
すっぽり。
目だけ。
穴が二つ。
手作りだった。
少し雑。
足元。
恐竜スリッパ。
今日も現役。
右手。
懐中電灯。
左手。
にんにく。
そのまま。
包丁も持っていた。
一緒の手で。
本人は。
問題ないと思っていた。
首には。
サングラス。
夜なのに。
必要らしかった。
理由。
『目を合わせたら』
『危ない霊もいる』
本人談。
そして。
十字架。
にんにくの隙間から。
ぴょこっ。
盾みたいに構える。
完璧だった。
本人の中では。
深呼吸。
一回。
二回。
三回。
そして。
「よぉぉぉし!!」
大きく頷く。
「出てこぉぉぉい!!」
誰もいない部屋へ。
宣戦布告。
「私は!!」
「オカルト研究会だったんだからねぇぇぇぇっ!!」
胸を張る。
どーん。
ものすごく。
自信満々。
たぶん。
本人だけ。
その時。
ふわっ。
髪。
一本だけ。
ゆっくり動く。
誰かが。
触ったみたいに。
茜。
止まる。
沈黙。
〇・二秒。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
叫ぶ。
全力で。
シーツ。
ばさっ。
懐中電灯。
ぶんぶん。
十字架。
どこか飛んだ。
にんにくだけ。
最後まで握っていた。
優秀だった。
にんにくは。
その悲鳴は。
部屋を飛び出した。
廊下を走った。
壁を抜けた。
道路まで届いた。
向かい側。
老人ホーム。
高瀬。
びくっ。
飛び起きる。
車椅子。
少し揺れた。
廊下。
次々。
電気が点く。
職員。
慌てる。
「何事ですか!?」
「大丈夫ですか!?」
高瀬。
耳を澄ます。
少しだけ。
そして。
ふふっと笑う。
「大丈夫だよぉ」
穏やかだった。
いつも通り。
「望月さんだからねぇ」
職員。
沈黙。
「ああ……」
納得。
ものすごく。
誰も驚かなかった。
いつものことだった。
一方。
望月家。
つむぎ。
ぱちっ。
目を開ける。
少しぼんやり。
まだ眠そう。
くまさん。
ぎゅっ。
抱えたまま。
とて。
とて。
歩く。
茜のところまで。
「もちすき?」
眠そうな声。
ものすごく。
茜。
振り返る。
涙目。
「つむぎちゃぁぁぁん!!」
「生きてたぁぁぁ!!」
ぎゅうっ。
抱き締める。
つむぎ。
きょとん。
何も分からない。
でも。
抱き返した。
ぎゅっ。
小さな腕で。
「追い払ってぇぇぇ!!」
「お願いぃぃぃ!!」
突然だった。
つむぎ。
部屋を見る。
右。
左。
天井。
床。
じーっ。
真剣だった。
数秒。
そして。
「……?」
首。
ころん。
傾く。
「誰もいないよ?」
沈黙。
茜。
固まる。
「え?」
「霊さん」
「いない」
「本当に?」
「うん」
「一人も?」
「うん!」
元気だった。
ものすごく。
茜。
少し安心する。
肩の力。
抜ける。
その瞬間。
すりっ。
誰かが。
足を撫でた。
茜。
停止。
一秒。
二秒。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
飛ぶ。
文字通り。
「つつつつつつつむぎちゃぁぁぁぁぁん!!」
「今ぁぁぁぁ!!」
「今いたぁぁぁぁぁ!!」
つむぎ。
床を見る。
「あ」
思い出した顔。
「お友達だ」
茜。
「……」
「……え?」
つむぎ。
にこっ。
「遊んでるだけだよ」
「もちすきと」
茜。
ゆっくり。
顔色が消えていく。
「…………」
「もう無理ぃぃぃぃぃぃっ!!!!」
茜。
走る。
全力で。
廊下へ。
そのまま。
玄関。
靴。
履く暇もない。
扉。
ばぁん!!
開ける。
外。
飛び出す。
三歩。
走る。
そして。
止まる。
「……」
沈黙。
一秒。
二秒。
「……あ」
思い出した。
つむぎ。
置いてきた。
「ご、ごめんねぇぇぇ!!」
Uターン。
人生最速。
また部屋へ戻る。
つむぎ。
まだ玄関。
きょとん。
くまさん。
ぎゅっ。
抱えたまま。
茜。
勢いそのまま。
ひょいっ。
抱き上げる。
「行くよぉぉぉ!!」
「どこへ?」
「安全な場所ぉぉぉ!!」
また走る。
今度こそ。
外へ。
夜道。
全力疾走。
住宅街。
静かだった。
茜だけ。
静かじゃなかった。
「もちすき」
「な、なに!?」
「どうして逃げるの?」
「幽霊がいるから!!」
「いないよ?」
「いるのぉぉぉ!!」
「いないよ?」
「いるったらいるのぉぉぉ!!」
完全に。
子供だった。
年上なのに。
つむぎ。
少し考える。
「でも」
「うん?」
「お友達は?」
茜。
即答。
「置いていく!!」
迷いゼロ。
つむぎ。
ぱちぱち。
瞬き。
「かわいそう」
「かわいそうじゃなぁぁぁい!!」
「だって」
「すごく楽しそうだったよ?」
「遊んでたし」
茜。
青ざめる。
「……」
「遊んでた?」
「うん!」
「もちすきと」
沈黙。
長かった。
ものすごく。
つむぎ。
後ろを見る。
にこっ。
小さく手を振る。
「またあとでねー!」
何もない空間へ。
茜。
見てしまう。
「……」
「…………」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
さらに加速。
今日一番。
速かった。
たぶん。
つむぎ。
揺られながら。
少し嬉しそう。
「もちすき」
「な、なにぃぃぃ!?」
「お友達」
「うん!?」
「ちゃんと後ろにいるよ」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
住宅街。
悲鳴。
響く。
向かう先。
中瀬俊介の家。
本人は。
まだ知らない。
数分後。
人生最大級の。
とばっちりを受けることを。
読んでいただきありがとうございます!♡
少しでも面白いと思っていただけましたら、
お気に入り登録
応援
いいね
などで応援していただけると嬉しいです!
(´▽`)
また次回もよろしくお願いします!♡




