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ヒミメグリ  作者: あじせ
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第8話 真夜中の幽霊より怖いもの

【超速報】深夜の幽霊退治作戦スタート!?望月あかね、完全武装でまさかの大暴走!!


—


平和な夜。


……のはずだった。


窓が揺れる。

床が鳴る。

誰かが歩いた気配。


そして始まる――


望月あかね、

人生最大級の心霊パニック!!


シーツ。

ニンニク。

十字架。

懐中電灯。


なぜか恐竜スリッパまで装備完了!?


しかし。


本当に怖かったのは――


「お友達だよ!」


つむぎのその一言だった。


幽霊はいるのか?

いないのか?


そして逃げ出したあかねが向かう先は――


中瀬俊介の家。


数分後、

何も知らない彼に

人生最大級のとばっちりが降りかかる……!

望月茜の部屋は、静かだった。


今度こそ、本当に。


寝室の床には、布団が二つ並んでいた。


茜の隣に、つむぎの布団。


つむぎは、この部屋に住む三十匹のクマのぬいぐるみのうち、一匹を抱いていた。


茶色くて、大きな耳の子。


その顔に自分の顔を埋めて、安らかに眠っている。


何の不安もなかった。


もう片方では――


茜が、瞬きすらしていなかった。


目を開けて、天井を見つめている。


周りの空間を、一ミリずつ処理している人の目だった。


窓が開いた。


閉まった。


風もないのに、カーテンが揺れた。


壁のどこかから、鈍い音がした。


廊下の板が、きしむ。


みしっ。


誰かが、気づかれないよう、そっと踏んだ時の音。


(寝てる間は……力を抑えられないのかな。それなら大丈夫。この子がやってるんだから……)


四秒ほど、安心した。


(いや、違ったら!? 私の素敵で平和な家に、幽霊を呼んでたら!?)


ミシッ。


茜は、すぐに起き上がった。


暗闇の中で、しばらく動かなかった。


つむぎを見る。


天井を見る。


廊下を見る。


「もう、いい」


ものすごく怖がっているけれど、絶対に認めないと決めた人の決意で、立ち上がった。


つむぎは、穏やかに眠っていた。


茜の装備は、こうだった。


頭から足先まで、白いシーツ。


目のところには、即席の穴が二つ。


恐竜のスリッパ。


右手に、懐中電灯。


左手に、ニンニク。


同じ左手には、包丁もあった。


その時は、両方同じくらい必要に思えたから。


サングラス。


本人いわく、“目を合わせちゃいけない相手もいるらしいから”。


さらに、ニンニクと一緒に握った、即席の十字架。


盾のように、体の前へ突き出していた。


深呼吸。


「ヨチ!」


構える。


「あはは! 私を倒せると思った!?」


劇的な間。


劇的なポーズ。


「元オカルト部だから! あなたたちのことは、よく知って――」


何かが、髪に触れた。


ゆっくり。


そっと。


興味を持ったように。


そのあとの静寂は、正確に〇・二秒だった。


「やあああああああああ!」


叫び声は、部屋を抜けた。


壁を抜けた。


道路を渡った。


向かいの老人ホームで、高瀬さんが車椅子の上で跳ね起きた。


廊下のあちこちで、明かりがついた。


(元気ですね)


何度も経験している人の落ち着きで、高瀬さんは思った。


(元気ですねえ)


寝室で、つむぎが目を開けた。


一秒、寝たまま天井を見る。


起き上がる。


眠さでふらつきながら、茜のところへ来た。


小さな足を引きずり、クマを抱いたまま。


「茜さん……?」


「ああ、生きてた!」


状況にまったく釣り合わない安心を浮かべて、茜が見た。


「追い払って、つむぎちゃん!」


腕を伸ばす。


あなたならできる。


信じてる。


そういう仕草。


相手は、二歳くらいに見える子どもだった。


目には眠気。


脇には、クマ。


つむぎは辺りを見た。


落ち着いて。


注意深く。


「でも、ここには霊なんていないよ」


「い、いない!? 本当、つむぎちゃん!?」


「う――」


「やあああっ!」


何かが、茜の脚をくすぐった。


素早く。


軽く。


遊ぶように。


「ほ、ほら! 今、ここ! つむぎちゃーん!」


つむぎが首を傾けた。


床を見る。


「ああ……」


ものすごく大げさな問題に、ものすごく簡単な説明をする声だった。


「友達が、茜さんと遊んでるだけだよ」


沈黙。


つむぎが見上げる。


茜を見る。


小さな顔に浮かんだのは、いたずらのお化けみたいな表情だった。


自分が何をしているか、よく分かっている子どもの目。


茜は、幽霊を見たような顔で見返した。


実質、そんなような状況だった。


「もう無理!」


玄関へ向かった。


速すぎて、白いシーツがついてこられなかった。


廊下に落ちた時には、本人はもう入り口にいた。


外へ。


走る。


止まる。


戻る。


廊下のシーツを拾い、慌てて引っかぶる。


つむぎを抱き上げる。


また、走り出す。


「何で帰るの、茜さん!?」


「霊がいっぱいいるから! 逃げるの!」


「何も感じなかったけど」


「甘い! 何年も勉強したの、私は! いっぱいいる!」


明らかな嘘だった。


外は静かだった。


道には、人がいない。


空には、この騒ぎなど気にもしていない星が、いっぱいだった。


「友達は?」


「あそこに置いてくる!」


「友達のこと、心配してるの? 茜さん」


「逆!」


つむぎは、一秒、黙った。


「心配しなくていいよ。すぐ後ろにいるから」


何もない、二人の後ろへ手を振った。


親しみを込めて。


いつものことのように。


「やあああああああ!」


茜は、さらに速く走った。


肩には、つむぎ。


つむぎの腕には、クマ。


後ろには、見えない友達。


静かな夜道を、二人は駆け抜けていった。


こんな時間でも、あまり質問せずに扉を開けてくれそうな人。


茜が思いつく、たった一人のところへ。

ここまで読んでくださってありがとうございます!♡


少しでも楽しんでいただけたら、下の☆から評価していただけると嬉しいです!

ブックマークも、続きを書く励みになります~!


(´▽`)


キャラクターデザインやイラストは、Pixivにも投稿しています!

よかったら、ぜひのぞいてみてくださいね♡


Pixiv:

https://www.pixiv.net/en/users/121622272


それでは、また次のお話で!♡

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