↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
43/46

第43話 何も覚えてなくてよかった!

【朗報】茜の青春時代、大切なものまで一緒に戻ってきました。中瀬には何も戻ってきませんでした。


――制服、思い出のキーホルダー、そしてお気に入りの鉛筆削り。青春との再会に大喜びする茜。一方、中瀬に必要だったものは何ひとつ戻ってこなかった。本人いわく、それでいいらしい。――


茜が中瀬を追い回す騒ぎは、終わった。


でも。


茜の恨みは、終わっていなかった。



パンをかじりながら、中瀬をにらむ。


紫色のオーラ。


根に持っている顔。



一方、中瀬は。


靴が、ありえないほどきついことに困っていた。



今の心配事は、それだった。



つむぎは、もう食卓を離れ、初めての登校に必要なものを全部準備していた。


洗面所の前の、小さな廊下へ現れる。



「じゃーーーん!!」



ポーズ。


制服を見せる。


一回転。


鞄も見せる。



「準備ばっちり!」



楽しそうで、自信たっぷりだった。



「やあああ!! すっごく似合う、つむぎちゃん!!」



制服姿のつむぎを見て、茜の機嫌は完全に変わった。



紫色のオーラ、消滅。



「ヨチ! 私たちも着替えよう!」


「ヨチ……」


中瀬も、二人の喜びに混ざろうとして繰り返した。



本当は。


思春期の生徒たちを想像するだけで、この計画を立てたことを後悔していた。



自分で。


立てた計画を。



ともかく。



中瀬は煙草を取り、火をつけた。


着替えるために、書斎へ向かう。


女の子たちは、寝室へ。



茜は制服を着た。


リボンを結ぶ。


スカートを整える。



完成。



「やあああ!!」



鏡の前で、嬉しそうにくるっと回った。


「制服だけで十歳若く見えるって、すごい!」


「十歳若くなってるんだよ」


つむぎが目を細めた。


当たり前だからこそ、言わなければならないことを言うように。



「服のおかげ」


茜も目を細めた。


理屈の方を説得して、考えを変えさせようとしながら。



「とにかく! 次はメイク――」


「化粧は禁止です」



別の部屋から、中瀬の声。


落ち着いていて。


自動的で。


先生そのものだった。



茜は、彼がいる方の壁を見た。


「つまんない」


「つまんない」


つむぎも繰り返した。



書斎では、中瀬が小さな鏡の前に立っていた。



「……」



何も言わない。



ただ、いろいろな角度から自分を見る。



――こんな姿で学校に行くとは、思っていなかったな。



もう一度見る。



――こんなに……普通の姿で。



深呼吸した。


扉へ向かう。



――悪くない。



開けた。



「やあああああ!!」



何より先に、茜の悲鳴が届いた。



中瀬が、驚いて目を見開く。



つむぎが、急いで寝室の扉を開けた。


「これ、見て!」



中瀬は、どう反応していいか分からなかった。



悲鳴。


そして、その悲鳴が来た部屋への招待。



「……やれやれ」



考えるのをやめた。


つむぎについて、中へ入る。



そして、見た。



「見て、これ!!」



茜は、中瀬のベッドに広がったものを見ていた。


全部、彼女の通学鞄から出てきたもの。



「当時の私の文房具!!」



「……」



中瀬は、無表情で眺めていた。



「どうしてこうなったのか、分からない……」


つむぎは、本気で仕組みを考えていた。



「やあああ!! お気に入りの鉛筆削り!!」



茜は、あれこれ探りながら、全部を思い出していた。


お気に入りの鉛筆削りを手に取る。



「鉛筆削りに、お気に入りなんてありますか?」



中瀬が、この話から理解できたのは、それだけだった。



つむぎは、顎に手を当てて考え続ける。



茜はその隣で、学校へ持っていっていた、さまざまなものの大切さを説明していた。



「このチャーム、覚えてる!! 初めて東京の中心部に行ったときに買ったの!!」



チャームを、胸へ抱く。



「ああ、二〇一七年だったなあ……やああ、懐かしい!!」



嬉しすぎて、チャームを持ったまま体を揺らしていた。



「……」



中瀬は、その姿を見て少し引いていた。



突然、つむぎが声を上げた。



「分かったかも!」


「……!?」


「つまりね。この……」



ベッドに散らばったものを見る。


適切な言葉を探す。



「……いろいろなものを出したのは、茜さんの記憶じゃないと思う」


「ひとまとめにしないで」


茜は、傷ついた。



「とにかく。過去の茜さんを取り出したから、そのとき無意識に持っていたものも、この『スキン』と一緒に来たのかもしれない。当時の茜さんの一部だったから」



「……」



「ばかばかしいですね」


中瀬。



「すごい!」


茜。



「でも、中瀬くんには起きなかったのが不思議……」


「そこは気にしなくていいですよ。当時のものに、無意識に必要としているものはありませんから」



「……」


「……」



静寂。



「……今の、冷たかった」


茜が言った。



つむぎは、凍えたような仕草をした。



中瀬は普通に鞄を取り、リビングへ向かった。



茜は、また傷ついた。


あとを追う。



「昔のものを無意識に必要としてる私が、子供っぽいって言いたいの!?」


「そう言ったのは、あなたです」



中瀬は、落ち着いて答えた。


煙草を始末し、車の鍵を取る。



「ちょっとぉぉ!!」



茜が、怒って追いかける。



つむぎも、ついていった。



自分の鞄を背負って。


茜が置き忘れた鞄も、持って。



そうして、三人は出発した。



初めての登校へ。



人生で初めて。



そして。



何年かぶりの。



読んでいただき、本当にありがとうございます~!!♡♡


もしこの作品で少しでも笑顔になっていただけたら、★で応援していただけると、とっても嬉しいです!


皆さんからいただく評価は、

「もっともっと面白い作品を作りたい!」

と思える大切な励みになっています


(´▽`)


Pixivではキャラクターデザインやイラストも投稿しています!


Pixiv:

https://www.pixiv.net/en/users/121622272


また次回もよろしくお願いします~!!♡♡


(≧▽≦)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。