第41話 絶対に起きられる目覚まし、まさかの作戦失敗!?
【悲報】茜の「寝坊しないためにホラー映画を見る作戦」、午前3時に最悪の形で成功する。
――怖くて眠れない。つむぎも眠れない。ならば解決策は一つ。中瀬のベッドへ避難しよう。なお、一番ぐっすり眠ったのは作戦を考えた本人でした。――
家の中は、静まり返っていた。
夕暮れ時。
中瀬の家の玄関が――
ひとりでに開いた。
静かに。
鉄製の廊下に、足音が響く。
ゆっくり。
のろのろ。
もちろん。
ドアが勝手に開いたわけではない。
犯人は――
ナメクジ。
そして、その後ろには。
つむぎと茜。
疲れ切っている。
荷物、多すぎ。
お腹、いっぱいすぎ。
もはや二人とも、
ドアノブを回す力すら残っていなかった。
だから。
ナメクジが助ける羽目になった。
つむぎは足を引きずりながら家に入る。
「助けないって言ってたくせに」
ナメクジに絡む。
「俺は『またあとで』って言った。それしか覚えてない」
「あ~、よかった! じゃあ私が全部覚えてるから大丈夫だね!」
つむぎ。
ニヤッ。
ナメクジ。
降参。
そのすぐ後ろから茜も入ってきた。
靴を脱ぐ。
ドサッ!!
買い物袋をテーブルに置く。
というより。
投げる。
もう丁寧に扱う体力なんて残っていない。
そして――
一直線。
中瀬のソファへ。
ぼふっ!!
「やぁぁぁ……」
茜は思いっきり伸びをした。
「休みたかったぁ……」
その時。
まだ玄関にいたつむぎ。
見つけた。
標的を。
走る。
そして――
跳んだ。
スローモーション。
「や、やぁ――!?」
茜。
反応する暇なし。
気づいた時には。
ぼふっ!!
つむぎが。
上にいた。
「あぁぁぁ~……!!」
つむぎ。
茜の上で思いっきり伸びる。
「……あ」
茜を見る。
「てへ」
そして。
自分の命が危険にさらされる前に。
逃げた。
テレビをつける。
何事もなかったかのように見る。
一方。
茜はソファに沈んだまま。
完全に。
一日中働いた人の姿だった。
そして。
働いた人といえば――
ガチャ。
玄関が開いた。
茜とつむぎ。
同時に振り返る。
そこにいたのは。
中瀬。
服。
汚れている。
袖。
まくっている。
指。
腕。
そして顔まで。
汚れている。
そして。
ものすごく大きな――
ドアを抱えていた。
「……」
「……」
二人。
見る。
中瀬。
必死。
「よ。二人とも」
「よ」
「よ! 中瀬くん」
そして。
中瀬は。
そのまま。
ドアを運ぶ。
ものすごく。
ものすごぉぉぉく。
頑張って。
数秒。
全員。
集中。
茜とつむぎは。
ただ見ていることに集中。
中瀬は。
ドアを浴室まで運ぶことに集中。
「……」
「……」
「うっ……よいしょ……っ」
つむぎ。
茜の耳元で囁く。
「働く男の声」
茜も。
ぼそっ。
「働き者……しかも強い……」
じーっ。
「やっ……見て、あの筋肉……!」
「……」
「……」
「……」
間。
茜。
我に返る。
「……うん。助けたほうがいいね」
「そうだね」
「つむぎちゃん、ドア浮かせられる?」
「できるよ」
つむぎ。
指を。
ちょい。
ふわっ。
ドアが浮いた。
「中瀬さん」
手で。
どいて。
の合図。
「あ、はい」
中瀬。
素直に離れる。
すると。
ガチャ。
ドアが。
ひとりでに。
ぴったりとはまった。
「ナメクジくーん!! ネジお願い! そこ面倒くさい!」
ナメクジ。
出動。
ネジ。
取り付ける。
「よしっ!」
茜。
拍手。
そして。
つむぎを。
がばっ!!
「さっすが私の超能力少女ぉぉぉぉ!!!」
ぎゅうううう!!
そのまま抱きしめ。
腕の中で遊び始める。
「アハハハ! くすぐったい!!」
茜。
止まる。
「……え?」
「……」
つむぎ。
固まる。
「う、嘘――!!」
遅い。
茜には。
切り札があった。
「こちょこちょこちょこちょこちょ!!」
「やぁぁぁぁぁぁ!! アハハハハハ!!」
つむぎ。
腹をくすぐられ。
完全敗北。
中瀬。
深いため息。
そして。
ナメクジに礼を言う。
正確には。
床を見て。
「……ありがとな」
たぶん。
そこにいるだろう。
と。
推測した。
いなかった。
そして中瀬は。
風呂へ向かった。
しばらくして。
風呂から出た中瀬は。
ドアを開けた瞬間。
違和感を覚えた。
暗い。
リビング。
真っ暗。
外も。
真っ暗。
そして。
どこからか。
音楽が流れている。
森の中のような。
夜の自然音。
ざわ……
ざわ……
何も見えない。
中瀬。
何年も住んでいる自分の家なのに。
壁にぶつかりかけた。
「み、みんな……?」
見えるのは。
テレビの光だけ。
その光に照らされて。
二つの。
謎の物体。
ソファの上。
それぞれ。
毛布を頭まですっぽり被っている。
まるで。
二つのイグルー。
「な、何して――!?」
「シーッ!!」
つむぎ。
静かに!
の合図。
「中瀬くん」
茜。
囁く。
そして。
自分の隣のソファを。
ぽんぽん。
座れ。
中瀬。
行く。
端に座る。
横を見る。
『……なんで二人とも毛布に完全装備なんだ?』
そして。
テレビを見る。
「……!!」
『やっ!? 何だこれ!?』
画面に映っていたのは――
ホラー映画。
「な、何見せてるんですか!? 望月さん!」
「いろんなジャンルの映画を知る必要があるの」
「ないです」
即答。
「しかも、こんなの見たら夜ちゃんと眠れなくなるでしょう」
茜。
にや。
「それが狙い……」
人差し指を。
こめかみに。
『これが作戦。』
中瀬。
呆れる。
「……馬鹿げてる」
「寝坊しないためだから」
「素晴らしい解決策ですね」
「でしょ?」
茜。
皮肉に気づかない。
つむぎは。
映画の映像表現に夢中。
今のところは。
中瀬。
最後に茜へ囁く。
「まあ、好きにしてください。俺は部屋で寝ます」
立ち上がる。
「心配しなくても、俺はもう少し普通の方法で起きますから」
茜。
ニヤニヤ。
「あ~、はいはい。例の『目覚まし』ね」
「ちゃんと鳴ります」
ゆっくり立ち上がる。
つむぎのところへ。
「おやすみ、つむぎちゃん」
「おやすみなさい、中瀬さん」
中瀬。
しゃがむ。
そして。
小さな声で。
「怖くなったら、呼んでいいからな」
つむぎ。
ぱあっ。
嬉しそうに。
「うん!」
中瀬。
立ち上がる。
寝室へ。
「おやすみ、望月さん」
「おやすみ、中瀬くーん!!」
茜。
手を振る。
そして。
二人は。
映画を見続けた。
これが。
彼女たちの。
天然の目覚まし時計になる予定だった。
茜によれば。
午前3時04分。
真っ暗。
外から。
物音。
茜。
眠れない。
まったく。
眠れない。
ソファのクッションを。
ぎゅううううっ。
抱きしめる。
怖い。
時間が経つほど。
もっと怖い。
その時――
足元。
何かが。
触れた。
『やっ――!!』
声にならない悲鳴。
「はぁ……び、びっくりした……」
まだ。
何にでも驚く。
そして。
眠れない。
すると。
「起きてる、茜さん?!」
「やぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
心臓。
二回目。
つむぎだった。
「私も眠れない」
「怖いんでしょ!?」
「違う。茜さんが場所取りすぎ」
「ちょっと! つむぎちゃんだって成長してるでしょ!」
「……」
「……」
茜。
まだ。
何か音がするたびに。
びくっ。
その時。
つむぎ。
立ち上がった。
「えっ!?」
茜。
焦る。
「ど、どこ行くの!? ひ、一人にしないで――!!」
「行こう」
「どこに!?」
「中瀬さんの部屋」
「なっ――!?」
茜。
五分以内。
小パニック三回目。
「怖くなったら来ていいって言ってた」
そして。
つむぎ。
茜を見る。
「茜さん、怖いんでしょ……?」
その言い方。
別の意味。
そして。
ぱちっ。
ウインク。
茜。
ぼっ。
顔。
真っ赤。
「……そ、そうね」
二人。
そろそろ。
慎重に。
寝室のドアまで歩く。
つむぎ。
開ける。
茜。
そのすぐ後ろ。
中瀬は。
ダブルベッドの。
ど真ん中。
静かに眠っていた。
つむぎ。
無言で合図。
『私、左。』
茜。
ごくっ。
右側。
つむぎ。
ベッドに入る。
そして。
中瀬に。
ぎゅっ。
茜。
「……」
勇気。
集める。
ゆっくり。
ベッドへ。
布団をかける。
そして。
少しずつ。
近づく。
そっと。
中瀬を。
抱きしめた。
そして。
三人。
一緒になった。
午前3時39分。
茜。
中瀬に。
ぎゅうううう。
完全にくっついている。
しかも。
よだれ。
そして。
いびき。
おまけ付き。
つむぎは。
足を茜の手の上に乗せ。
頭は。
中瀬の膝。
そして。
中瀬。
起きていた。
眠ろうとしていた。
その時の中瀬には。
少しだけ。
新しい反応があった。
顔に出るようなものではない。
目で見て。
分かるようなものでもない。
ただ。
単純に。
気にしていなかった。
穏やかだった。
もちろん。
この寝方は。
最悪だった。
腕は痺れている。
枕はどこかへ消えた。
足は変なところにある。
それでも。
嫌ではなかった。
二人がいることは。
そこに。
二人がいることだけは。
読んでいただき、本当にありがとうございます~!!♡♡
少しでも皆さんを元気にできたり、
ちょっとでも笑っていただけていたら、とっても嬉しいです!(´▽`)♡
そしてぜひ、
「このキャラクターたちって実際どんな見た目なの?」
と思ったら、イラストも見に来てください~!!
物語を読みながら、みんなの姿をもっと楽しく想像していただけるように、
キャラクターデザインやイラストも自分で描いています!✧
Pixivはこちらです♡
Pixivでキャラクターたちを見る
遊びに来ていただけたら、すっごく嬉しいです!!♡
それでは、また次回お会いしましょう~!!
またね~~!!(´▽`)ノ♡




