第32話 聞こえた声
【緊急速報】茜さん、超能力者デビュー……ならず!?
― 喜んだ直後に即否定! その一方で、つむぎの過去に新たな謎が浮上――! ―
茜とつむぎは。
食卓についていた。
朝ごはん。
さっきまで。
家が半壊していたとは。
思えないくらい。
穏やかな朝だった。
隣では。
中瀬が。
電話をしている。
玄関のドアについて。
業者と話していた。
「はい。」
「はい。」
「ありがとうございます。」
ぴっ。
通話終了。
茜は。
まだ。
少しだけ。
落ち着かなかった。
顔には。
出さない。
必死に。
隠している。
でも。
肩が。
少しだけ。
縮こまっていた。
コーヒーを見つめる。
静かだった。
いつもの茜なら。
考えられないくらい。
中瀬は。
その様子を。
ちらりと見る。
小さく。
息をついた。
「さて。」
「この週末は。」
「いろいろありましたね。」
「うん!」
つむぎが。
嬉しそうに頷く。
「ほんとに!」
茜は。
黙ったまま。
カップを持ち上げた。
「例えば――」
「――あっ!!」
「そうだった!!」
つむぎが。
勢いよく。
椅子の上に立ち上がる。
「わっ。」
「言ってもいいですか!?」
「え?」
「いいですよ。」
「昨日のことです!」
「茜さん。」
「正しかったです!」
「昨日。」
「おじいさんたちと一緒にいた時は。」
「力を使わなかったから。」
「すごく疲れちゃったんです。」
茜。
ぴくっ。
顔を上げる。
「だから。」
「昨日は。」
「力はあったんですけど。」
「うまく集中できなくて……」
「簡単なことでも。」
「すごく力を使っちゃって。」
「それで。」
「茜さんに。」
「レスマのことを伝えようとした時も。」
「頑張りすぎちゃって……」
「スーパーが。」
「無事じゃ。」
「済みませんでした。」
「ほらぁぁぁぁぁ!!」
茜。
ばんっ!!
テーブルを叩く。
「言ったでしょ!!」
「私!!」
「ちゃんと!!」
「言ったもん!!」
そのまま。
どやぁ……。
中瀬を見る。
ものすごく。
誇らしげだった。
中瀬も。
静かに。
見返す。
「……」
「……」
視線だけで。
会話する。
『ほら。』
『当たってた。』
『そうですね。』
『でも。』
『機嫌は直りましたか。』
『…………』
茜。
すっと。
目を逸らす。
「えっと!!」
「そ、それは!!」
「今は!!」
「別問題だから!!」
こほんっ。
一回。
咳払い。
何事も。
なかった顔で。
椅子に座り直した。
「そ、それで?」
「他にも。」
「何かあるの?」
「はい!」
つむぎは。
大きく頷く。
「あ。」
「それと。」
「皆さんに。」
「話さないといけないことが。」
「あります。」
「…………」
食卓が。
少しだけ。
静かになる。
茜と中瀬。
顔を見合わせた。
その様子だけで。
なんとなく。
大事な話だと分かった。
「まず。」
「茜さん。」
「どうして。」
「レスマの声が聞こえたのか。」
「それなんですけど……」
「……レスマ?」
茜が。
首をかしげる。
「あ。」
「えっと。」
「私の。」
「親友です。」
「いつも。」
「一緒にいます。」
「でも。」
「今まで。」
「皆さんには。」
「声は聞こえていませんでした。」
「こういう存在の声は。」
「普通。」
「私たちみたいな人しか。」
「聞こえないんです。」
「だから。」
「昨日。」
「茜さんが。」
「レスマの声に反応した時。」
「すごく驚きました。」
「私も。」
「どうしてなのか。」
「まだ分かりません。」
つむぎは。
椅子の上で。
腕を組む。
真剣だった。
「もしかしたら。」
「昨日。」
「私の力が。」
「弱くなっていたことと。」
「関係があるのかも。」
「でも。」
「それだけじゃ。」
「説明できない気がします。」
考える。
考える。
まだ。
答えは出ない。
「ははっ!」
茜が。
急に笑う。
「もしかして私!」
「超能力者に――」
「なれません。」
即答。
しかも。
真顔。
「…………」
茜。
すとん。
椅子にもたれた。
「早かったぁ……」
「断言が。」
「早かったぁ……」
しょんぼり。
ものすごく。
しょんぼりだった。
「じゃあ。」
中瀬が。
静かに口を開く。
「試してみましょう。」
「レスマ。」
「何か。」
話してもらえますか。」
「はい!」
つむぎは。
にこっと笑って。
何もない空間へ。
顔を向ける。
「レスマ。」
「何か。」
言って。」
「…………」
静寂。
数秒。
「聞こえましたか?」
「いいえ。」
「全然。」
「俺も。」
「聞こえません。」
「そうですよね……」
つむぎは。
少しだけ。
首をかしげる。
「じゃあ。」
「今度は。」
「普通に。」
「話してもらいます。」
「…………」
しばらく。
待つ。
「…………」
「…………」
「聞こえましたか?」
「いいえ。」
「全然。」
「そうですか……」
つむぎは。
少しだけ。
困った顔になる。
「レスマ。」
「普通に。」
話して。」
「…………」
また。
沈黙。
数秒。
「…………」
「……まだですか?」
茜が。
おそるおそる聞く。
「まだです。」
「レスマ。」
「何も言ってません。」
「…………」
「え?」
「ふざけてます。」
「…………」
「え?」
「皆さんを。」
からかってます。」
「…………」
中瀬。
目を閉じる。
(自由ですね。)
その瞬間。
「ぶっ。」
耳元だった。
茜。
びくぅっ!!
椅子ごと。
飛び上がる。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「いっ、いたぁぁぁ!!」
「いた!!」
「今いた!!」
「耳!!」
「耳ぃぃぃ!!」
両耳を押さえながら。
部屋中を。
ぐるぐる回る。
「ど、どこぉぉぉ!?」
「どこにいるのぉぉぉ!?」
「レスマ!」
つむぎが。
少しだけ。
頬を膨らませる。
「だめです。」
「ちゃんと。」
謝ってください。」
「…………」
数秒。
「…………」
「反省してますって。」
「そうですか。」
素直だった。
「あ。」
「今。」
謝りました。」
「聞こえませんでした。」
中瀬が。
静かに言う。
「はい。」
「私だけです。」
「ずるいぃぃぃぃ!!」
茜。
涙目。
「私だけ!!」
「びっくりしてるじゃん!!」
「それも。」
「謝ったの!?」
「私じゃなくて!!」
「つむぎちゃんにぃぃぃ!!」
「はい。」
「そうです。」
「ひどいぃぃぃぃ!!」
「と、と、とってぇぇぇぇ!!」
「レスマをぉぉぉぉぉ!!」
茜は。
半泣きのまま。
部屋中を逃げ回る。
もちろん。
レスマは。
見えない。
「望月さん。」
「落ち着いてください。」
「無理ぃぃぃぃ!!」
「耳にいるぅぅぅぅ!!」
勢いよく。
後ろへ。
一歩。
つまずく。
「あっ。」
ぐらっ。
身体が傾く。
「危ない。」
中瀬が。
とっさに。
手を伸ばえた。
ふわっ。
そのまま。
茜の身体を受け止める。
「……」
「……」
時間が。
少しだけ。
止まった。
茜は。
まだ。
レスマのことで。
頭がいっぱい。
だから。
気づくのが。
少し遅れた。
「……あれ?」
視線を下げる。
「…………」
中瀬。
「…………」
自分。
「…………」
腕。
「…………」
「…………え。」
一秒。
停止。
そして――
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
再起動。
「ご、ご、ご、ごめんなさぁぁぁい!!」
ばっ!!
ものすごい勢いで。
飛び退く。
耳まで。
真っ赤だった。
「……すみません。」
中瀬も。
小さく頭を下げる。
「い、いや!!」
「ち、違うの!!」
「これは!!」
「事故だから!!」
「うぅぅぅぅ……」
顔を隠す。
恥ずかしい。
恥ずかしすぎる。
その空気を――
「よし!」
つむぎの声が。
きれいに。
切り裂いた。
「分かりました!」
つむぎが。
ぱっと。
顔を上げる。
「レスマが。」
「全部。」
教えてくれました!」
「え?」
茜が。
まだ少し赤い顔のまま。
振り向く。
「茜さんは。」
「中瀬さんより。」
「少しだけ。」
こういうものを。」
「感じやすいみたいです。」
「だから。」
「昨日。」
「レスマの声が。」
「聞こえたんだって。」
「ははっ!」
茜。
急に。
笑い出す。
「ほらぁぁぁぁ!!」
「やっぱり!!」
「私は!!」
「選ばれし者だったんだよ!!」
ばんっ!!
勢いよく。
テーブルを叩く。
「言ったもん!!」
「絶対!!」
「何かあるって!!」
「…………」
中瀬。
コーヒーを一口。
飲む。
「まだ。」
「そういう話では。」
「ないですよ。」
「え?」
つむぎも。
こくり。
頷く。
「はい。」
「違います。」
「え?」
「え?」
茜。
瞬きをする。
二人を見る。
「レスマも。」
「そう言ってます。」
「今。」
「茜さんが。」
「聞こえたのは。」
「たまたま。」
「少しだけ。」
「感覚が。」
「近づいたから。」
「それだけ。」
「…………」
「だから。」
「超能力者には。」
「なれません。」
「…………」
沈黙。
一秒。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……」
茜。
目に見えて。
しぼんだ。
「でも。」
つむぎが。
続ける。
「皆で。」
「一緒にいるうちに。」
「少しずつ。」
「変わることは。」
「あるかもしれません。」
「信じる気持ちがある人は。」
「そういうものを。」
「受け入れやすいから。」
「中瀬さんは。」
「あまり。」
「気にしないので。」
「聞こえませんでした。」
「……そうですね。」
中瀬は。
静かに頷く。
「たぶん。」
「その通りです。」
茜の目が。
きらっ。
輝いた。
「つまり!!」
「つむぎちゃんと!!」
「一緒にいれば!!」
「私も!!」
「もっと!!」
「見えたり!!」
「聞こえたり!!」
「するかもしれないってこと!?」
「たぶん。」
「そうです。」
「やったぁぁぁぁぁ!!」
ばんっ!!
また。
テーブルを叩く。
「中瀬くん!!」
「メモ!!」
「今すぐ!!」
「マニュアルに!!」
「書いてぇぇぇぇ!!」
「……はい。」
「急いで!!」
「忘れる前に!!」
「三秒!!」
「三秒以内!!」
「はい。」
中瀬。
席を立つ。
ノートを取りに行く。
「違う違う!!」
「走ってぇぇぇぇ!!」
「そんな歩く速度じゃ!!」
「間に合わないよぉぉぉ!!」
「何に。」
「間に合わないんですか。」
中瀬は。
ノートを取りに行った。
茜は。
その後ろから。
「急いでぇぇぇぇ!!」
まだ叫んでいる。
つむぎは。
その様子を見て。
ふふっと。
小さく笑った。
「懐かしいな……」
ぽつり。
誰にも聞こえないくらいの声。
ソファへ。
ぽすん。
身体を預ける。
力を使える。
普通に話せる。
普通に笑える。
それだけで。
胸の奥が。
少しだけ。
あたたかかった。
「……よかった。」
自然に。
言葉がこぼれる。
茜と中瀬のやり取りは。
もう。
心地いい。
いつの間にか。
当たり前になっていた。
だから。
その騒がしさを。
子守歌みたいに聞きながら。
目を閉じる。
そして。
ふと。
「……ねぇ。」
小さく呟く。
「今……。」
「何が起きてるんだろう。」
その瞬間だった。
記憶が。
何の前触れもなく。
流れ込んできた。
色。
色。
色。
鮮やかすぎる。
現実とは思えないほど。
人工的な色彩。
まるで。
この世界じゃない場所。
そんな部屋だった。
スーツ姿の人たち。
白衣の人たち。
何人も。
何人も。
何かを話している。
つむぎは。
まだ。
赤ちゃんだった。
それなのに。
生まれたばかりだったことだけは。
なぜか。
分かった。
言葉は。
聞き取れない。
夢みたいに。
全部。
ぼやけていた。
でも。
一つだけ。
はっきり覚えている。
みんな。
困っていた。
報告を聞く人の顔じゃない。
起きてはいけないことが。
起きてしまった。
そんな顔だった。
(……レスマ。)
つむぎは。
心の中で。
そっと呼びかけた。
『私に。』
『あれを見せたの。』
『レスマだよね?』
少しだけ。
間があく。
『うん。』
レスマの返事は。
いつも通り。
穏やかだった。
『つむぎ。』
『思い出さなきゃ。』
『あの日。』
『何があったのか。』
『全部。』
『…………』
『でも。』
『何も思い出せないよ。』
『あれだけじゃ。』
『何も。』
『分からない。』
『それでいいんだよ。』
レスマは。
優しく答えた。
『少しずつで。』
『いい。』
『急がなくていい。』
『…………』
『ねぇ。』
『あの部屋に。』
『レスマも。』
『いたよね?』
『いた。』
『じゃあ。』
『教えて。』
『あの日。』
『何があったの?』
静寂。
ほんの数秒。
でも。
その沈黙は。
少しだけ。
長く感じた。
『ごめん。』
レスマは。
静かに言った。
『それは。』
『僕からは。』
『話せない。』
『…………』
『どうして?』
『つむぎ自身が。』
『思い出さないと。』
『意味がないから。』
『だから。』
『待ってる。』
『君が。』
『全部。』
『思い出せる日を。』
つむぎは。
何も言えなかった。
胸の奥に。
小さな何かが。
残る。
怖さじゃない。
悲しさでもない。
もっと重たい。
名前のない。
好奇心だった。
「つむぎちゃん?」
茜の声。
はっと。
我に返る。
いつものリビング。
いつもの朝。
中瀬は。
玄関で。
壊れたドアを測っている。
茜は。
舌を少しだけ出しながら。
真剣な顔で。
マニュアルに。
何かを書いていた。
平和だった。
いつも通りだった。
だからこそ。
つむぎは。
小さく笑う。
「うん。」
「なんでもない。」
そう答えながら。
心のどこかでは。
もう。
分かっていた。
きっと。
もうすぐ。
何かが。
動き始める。
三人一緒に。
その答えへ。
少しずつ。
近づいていく。
読んでいただき、本当にありがとうございます~!!♡♡
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(´▽`)
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また次回もよろしくお願いします~!!♡♡




