第26話 光合成かもしれない。
【緊急速報】“つむぎちゃんマニュアル”、まさかの新説で大混乱!?
― 望月茜、「超能力=光合成」説を本気で提唱!! ―
「きゃああああああああ!!」
秋音。
四秒。
平和は。
本当に。
五秒も。
続かなかった。
近すぎた。
中瀬。
頭の中で。
少しだけ。
混乱する。
耳元で叫ばれたことを。
気にするべきか。
それとも。
望月秋音が。
あんなに近くにいたことを。
気にするべきか。
結論。
分からない。
「中瀬!!」
「このバカ!!」
中瀬。
いつもの顔。
(俺は何もしてない。)
「何もしてません。」
「関係ないの!!」
「はい。」
その頃。
リビングでは。
つむぎ。
成功。
大人たちが。
ほんの四秒。
目を離した隙に。
テレビのリモコン。
確保。
そして。
小さな両手で。
真剣に。
番組を探していた。
一方。
大人二人は。
子どもよりも。
よっぽど子どもっぽいことで。
言い争っていた。
「最初の項目は次のページです!」
「いや。」
「まだ半分空いてるんだから。」
「ここに書けばいいでしょう。」
「だめ!!」
「きれいじゃないもん!!」
そして。
二人同時に。
「ただのマニュアルだろ。」
「マニュアルなの!!」
まったく違う。
声の大きさ。
中瀬。
負けた。
「……分かりました。」
「次のページにします。」
秋音。
満足。
中瀬。
ページをめくる。
ペンを持つ。
その時――
静寂。
……を破る。
突然。
テレビの音量。
上昇。
つむぎ。
見つけた。
『ピポとゼラチン星』。
大成功。
中瀬の高いペン。
かじかじ。
テレビ。
じーっ。
人生。
大満足。
中瀬。
タイトルを。
見つめる。
『髪の色』
考える。
真剣に。
超常現象の子どもを。
どう説明すればいいのか。
「髪の色……」
秋音も。
繰り返す。
なんとなく。
中瀬みたいに。
考えている雰囲気を。
出しながら。
実際は。
何も考えていない。
「まず。」
「緑。」
中瀬。
ページの端に。
書く。
「そう!」
「緑はね!」
「つむぎちゃんが!」
「すっごく元気な時!」
「……ですね。」
中瀬。
書く。
「次。」
「ピンク。」
「はい!」
「ピンクは……」
秋音。
少し考える。
今までを。
思い返す。
「お腹が空いてる時!」
「……たぶん。」
中瀬。
書く。
「あと!」
「茶色!」
「元の髪の色!」
「はい。」
追加。
「それから。」
「灰色。」
秋音。
少しだけ。
表情が曇る。
あの日。
ショッピングモール。
思い出す。
「悲しい時……」
「かな。」
「ええ。」
「僕も。」
「そう思います。」
中瀬。
その言い方。
少しだけ。
笑っていた。
まるで。
他に答えなんて。
あるわけない。
そんな声。
あの日。
つむぎは。
本当に。
傷付いていた。
「これで全部ですね。」
「望月さん。」
「うん!」
「たぶん全部!」
中瀬。
そのまま。
次の項目を。
同じページへ。
書こうとして――
「だめーーーー!!」
「……」
「次のページ!!」
「……」
中瀬。
無言。
ページをめくる。
従う。
「よし!」
「次は!」
「一番謎!!」
「つむぎちゃんの年齢!!」
中瀬。
そのまま。
書いた。
『よし。次は一番謎。つむぎちゃんの年齢。』
秋音。
停止。
「ち、違う!!」
「それを書くんじゃなくて!」
「いいじゃないですか。」
「面白いし。」
そのまま。
書き続ける。
秋音。
真っ赤。
「~~~~っ!!」
「えっとね!」
「私は!」
「つむぎちゃん。」
「まだ元に戻ってないと思うの!」
中瀬。
顔を上げる。
「でも。」
「今は赤ちゃんでしょう。」
「普通に戻っただけじゃ……」
「まだ能力あるじゃん!!」
「さっき見たでしょ!?」
秋音。
つむぎを指さす。
ソファ。
テレビ。
ぺたん。
おとなしく。
座っている。
「……」
「何をですか。」
「壁!!」
「登ってたでしょ!!」
「……。」
「そうでした。」
「能力は。」
「まだありますね。」
「でしょう!?」
「もし。」
「普通に戻ったなら。」
「どうして。」
「昨日は。」
「あんなことになったの?」
秋音。
壁を見つめる。
もう。
自分だけの世界。
頭の中で。
昨日の出来事が。
ぐるぐる回る。
中瀬。
何か言おうとして。
口を開く。
でも。
その隙は。
来なかった。
「昨日。」
「何か。」
「違うこと。」
「しましたっけ。」
「……。」
「特には。」
「何も。」
中瀬。
思い返す。
「何も……」
秋音も。
繰り返す。
「何も……」
「何も……」
突然。
「何もしてない!!」
中瀬。
「……?」
「何も?」
「そう!!」
「何もしてないの!!」
「つまり!!」
ペンを。
ひったくる。
勢いよく。
マニュアルへ。
書く。
『つむぎちゃんは昨日、一度も能力を使っていない!!』
中瀬。
黙って。
その文字を見る。
正直。
もう。
秋音の思考回路は。
ずっと前に。
理解することを。
諦めていた。
だから。
今は。
とりあえず。
話だけ。
聞く。
……ついでに。
文字も見る。
相変わらず。
ひどい字だった。
読める。
でも。
ぎりぎり。
「だからね!!」
秋音。
両手。
ぶんぶん。
使い始める。
本気で説明する時の。
癖だった。
「もし!」
「つむぎちゃんが!」
「光合成みたいなものだったら!?」
静寂。
中瀬。
小さく。
笑う。
(……。)
(よりによって。)
(光合成。)
世界中。
どんな例えでも。
できたはずなのに。
選ばれたのは。
光合成だった。
秋音。
その反応を見て。
むっとする。
「本気だよ!?」
「聞いて!」
中瀬。
「はい。」
秋音。
身を乗り出す。
「超能力を使うことが!」
「エネルギー補給なんじゃない!?」
「植物が光合成するみたいに!」
「能力を使うことで!」
「つむぎちゃん自身の!」
「エネルギーになるとか!!」
中瀬。
しばらく。
秋音を見る。
本当に。
しばらく。
真顔。
(……。)
(本気なんだ。)
確認。
完了。
「……。」
「まあ。」
「かなり無茶な理論ですけど。」
「でも。」
「あり得なくは……」
秋音。
食い気味。
「でしょ!?」
「もし間違ってても!」
「別に困ることないし!」
中瀬。
即答。
「一か月。」
「スーパー出入り禁止くらいですね。」
沈黙。
秋音。
停止。
「…………」
「え?」
「なんで?」
「知ってるの?」
中瀬。
スマホを。
少し持ち上げる。
「さっき。」
「スーパーから。」
「メールが来ました。」
「……。」
「僕が。」
「先に謝っておいたので。」
秋音。
石。
みたいに。
固まる。
「ど、どうして!?」
「なんで謝るの!?」
「謝るべきでしょう。」
「だめだよ!!」
「なんで!?」
「向こう!」
「私たちだって!」
「分かっちゃうじゃん!!」
「その方が。」
「いいでしょう。」
秋音。
言葉。
出ない。
その時――
ドォン!!
ものすごい音。
玄関のドア。
勢いよく。
開いた。
速い。
あまりにも。
速い。
全員。
びくっ。
秋音。
胸を押さえて。
誰にも真似できない。
謎のポーズ。
つむぎ。
目。
まんまる。
口から。
かじっていたペン。
ぽとっ。
落ちる。
中瀬。
一瞬。
固まる。
(……。)
(もう。)
(何が起きても。)
(驚かないと思ってた。)
(甘かった。)
静寂。
秋音。
ゆっくり。
玄関を見る。
目。
見開く。
「し……」
「しおりちゃん!?」
信じられなかった。
そこに立っていたのは。
天宮栞。
息を切らしながら。
肩で。
呼吸をしている。
髪も。
少しだけ。
乱れていた。
制服のまま。
どう見ても。
全力で。
走ってきた。
秋音。
立ち上がる。
「どうしたの!?」
「何かあった!?」
栞。
返事をしない。
その代わり。
部屋の中を。
ぐるり。
見回した。
つむぎ。
中瀬。
秋音。
机。
ノート。
そして――
大きく。
書かれた。
『つむぎちゃんマニュアル』
栞。
「…………」
数秒。
沈黙。
そして。
小さく。
口を開いた。
「……。」
「何してるの?」
秋音。
にこっ。
「マニュアル作ってるの!」
栞。
さらに。
沈黙。
(……。)
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