第24話 宇宙人、現る。
【最新ニュース】謎の声が宇宙人誘拐事件に繋がる!?
―望月茜、単独で「つむぎを狙う敵」を特定!?
スーパーで買い物中――
茜は突然、謎の声を聞いた。
最初は中瀬の声かと思った。
一体誰だ!?
こうして、元オカルト研究部部長、望月茜の推理が始まった!?
謎の声 → 敵 → つむぎを狙う → 宇宙人誘拐計画!?
一方、つむぎは必死だった。
「そんなはずない!」
「敵じゃない!」
しかし、子供である彼女は――
意思疎通ができない!?
そしてついに、つむぎのテレパシーが最大限に発揮され、茜に届いた!
「……親友。敵じゃない。」
事件解決!?
彼は本当にただの「親友」なの?
そして、つむぎがついに問いかける。
「…もしかして、彼は宇宙人?」
宇宙人説も、完全に否定できるわけではないのだ!
つむぎは、少し混乱していた。
カンガルーみたいに、布に包まれて。
茜の胸に、ぴったり。
高いところから、世界を見ていた。
輿で運ばれている女王みたいな、顔で。
茜は、二つのことを同時にしていた。
宇宙と自分たちの間に、何が起きているのか説明すること。
ベビーフード売り場を、探すこと。
中瀬は、後ろにいた。
何も、していなかった。
正確には。
カートを、押していた。
でも。
どうやら、スーパーのカートには間違った押し方があるらしい。
中瀬は、間違った押し方をしていた。
具体的に、どう押せば間違いになるのか。
それは、分からない。
でも。
間違っていた。
茜が、そう言ったから。
だから、カートも茜が取った。
中瀬は、本当に何もしなくなった。
もっとも。
茜の話を聞いて、考えについていくこと自体。
かなり難しい仕事だった。
それだけで、十分かもしれなかった。
「今日、少し前に声が聞こえたの」
「……」
まだ、赤ちゃん用品の通路を探していた。
「それで、中瀬くんだと思った」
中瀬が、あの顔をした。
胸に、手を当てる。
『よりによって……私?』
「そのあと、同じ声がまた聞こえて。また、中瀬くんだと思った」
「ま、待ってください。どうして私が、そんなことをすると?ラーメンとか、紙パックのジュースとか……」
茜が、カートを止めた。
振り向く。
ゆっくり。
ものすごく。
ゆっくり。
中瀬の魂の奥まで、見た。
中瀬が、唾を飲み込んだ。
「初めて会った日から、人をからかうことしか言ってないから」
中瀬は、傷ついた。
本当に。
茜が、失敗に気づいた。
「あっ!ち、違っ――じゃなくて――」
深呼吸。
「男の人、中瀬くんしかいなかったから!」
中瀬は、それにも傷ついた。
今度は、違う意味で。
「男の声だったんですか?」
違う調子で、聞いた。
「……」
茜が、考えた。
「そう……そうだった!いいところに気づいたね、中瀬くん!」
中瀬の顔が、言っていた。
『今、言ったのはあなたでしょう』
「でも……つむぎちゃんだった可能性は?考えませんでしたか?」
中瀬は、状況を見直そうとした。
茜が、またカートを止めた。
勢いよく、振り向く。
つむぎが、危うくカートへぶつかりそうになった。
茜は、気づかなかった。
「私を誰だと思ってるの、中瀬くん!?」
「私は――」
「学校で、オカルト研究会の部長だったの!」
「……」
「つむぎちゃんのテレパシーの声は、そのまま、つむぎちゃんの声なの!」
「そ、それは知りま――」
「聞いたことない!?テレパシーの声、一度も聞いたことない!?」
「……分かりません。覚えてません」
茜が、苛立った。
「覚えてない!?私は、この子の世話をするために選ばれたのよ」
つむぎが、目を見開いた。
「今、分かった……私が選ばれたんだ……敵の小さな声にまで、気づけたから……」
茜の、劇的な時間だった。
スーパーの景色まで、味方するように変わって見えた。
その間に。
つむぎは、一つの言葉を理解した。
『敵』
赤ちゃんの頭で、考えられるだけ考えて。
何かが、分かった。
言いたかった。
でも。
茜の演技は、今が頂点だった。
「そうよ……つむぎちゃんを奪おうとしている敵がいて、それで、もしかしたら――」
「あん、あん!」
声。
つむぎが、話そうとしていた。
しつこく。
「あれ……?」
茜と中瀬が、見た。
つむぎの声は、どんどん強くなっていた。
たくさん、話しているようだった。
目的も、あった。
急いでも、いた。
でも、出てくるのは。
解読できない、赤ちゃんの声だけ。
「あん、あん!あ、あん、あん、あん!」
「……」
「……」
つむぎが、止まった。
また、始めた。
もっと、伝えようとした。
もっと、急いで。
「あん、あん!!あ、あん、あん、あん!!」
「何かに取り憑かれてる!!」
茜が、勢いよく反応した。
「もうですか?」
中瀬は、宇宙人の侵略をあまり気にしていなかった。
「中瀬くん、早く!ベビーフードを一つと、おむつを一袋!」
「はい!」
「守るからね、つむぎちゃん!」
茜が、急いで車へ向かった。
着いた。
「……」
「……」
妙な、空気になった。
茜が、つむぎを見た。
つむぎが、茜を見た。
沈黙。
「……取り憑かれてたんじゃないの?」
沈黙。
りりりりっ。
携帯が、ものすごい音で鳴った。
「ぎゃああああ!!」
茜が、驚いた。
つむぎは、茜の驚き方に驚いた。
画面を、見た。
中瀬からだった。
『もう……本当に、何なの、中瀬くん』
電話に、出た。
「もしもし」
『望月さん、インスタントラーメンのベビーフードは、ありませんでした』
「……」
茜は、何と言えばいいのか分からなかった。
「よかったね。じゃあ、ニンジンのにして」
『分かりました』
少し、間。
中瀬が、ベビーフードを取った。
『望月さん』
「何」
『つむぎちゃんのおむつのサイズ、分かりますか?抱いた時の手の大きさと、囲める範囲からすると――』
「一番、小さいの」
『私も、そう思いました。それにします』
「……」
『それだけですか?』
「うん」
電話が、切れた。
茜は、携帯を見ていた。
『三十八歳にもなって、どうしてこんなことができるの?』
劇的なモードへ、戻った。
つむぎを、見る。
さっきとは、違う目。
強い。
探るような。
つむぎが、驚いた。
「つむぎちゃん……教えて……敵の宇宙人は、いる?」
つむぎは、集中しているようだった。
『宇宙人』が、何なのか。
分かろうとして。
ばんっ。
車のドアが、閉まった。
「ぎゃあああああ!!」
「すみません」
中瀬が、落ち着いて言った。
買い物袋を持って、乗り込みながら。
茜とつむぎは、驚いて反対側の座席にくっついていた。
「はい。ベビーフードです」
中瀬が、つむぎの怯えた顔を見た。
「何をしたんですか、望月さん?」
「私!?誰かがすっごく大事なことを聞いてる時に、突然車に乗り込んだのかもね!『敵の宇宙人はいる?』っていう、すっごく大事な質問を!」
「……」
中瀬が、考えた。
「つむぎちゃんに、敵の宇宙人がいるか聞いたんですか?」
「任務を進めるうえで、重要な情報だから!」
「宇宙人が何なのかも、知らないでしょう」
「確かに!」
中瀬が、つむぎを膝に乗せた。
ベビーフードを、食べさせるために。
茜は、身振りで車内全部を占領していた。
「緑色で、頭が変な形で……賢くて、独特な特徴があるの!」
つむぎは、口の周りを汚しながら食べていた。
中瀬も、つむぎと同じ顔をした。
「……」
「……」
「……」
中瀬が、危険な質問をすることにした。
「すみません。どうして私たちが攻撃されているのか、まだ分からないんですが」
「わざと中瀬くんだと思わせるような声が聞こえたの。そのあと、中瀬くんじゃないって分かった。だから、考えたの。どうしてだろうって」
「あなたがおかしくなっている可能性は?」
「おかしくなってない」
「……」
中瀬は、何も言わなかった。
言いたかったけれど。
つむぎは、じっと見ていた。
何か、言いたかった。
「とにかく。私たちを引き離したかったのかもしれないでしょ、中瀬くん!引き離して、有利になってから、つむぎちゃんを奪って別の星へ連れていくの!この敵……計画の裏にいる相手を、捕まえないと!」
突然。
つむぎが、ものすごく集中した顔になった。
目を、閉じた。
肩を、上げた。
変な顔に、なった。
「つむぎちゃん!?」
「またですか?」
中瀬も、見た。
つむぎは、集中し続けていた。
『お願い、お願い……!』
『言わなきゃ……!』
「うんちしたいんだ!!」
「望月さん……違うと思います。まだ、消化する時間もなかったでしょう」
「ど、ど、ど、どうするの!?」
つむぎは、続けていた。
集中して。
真剣に。
あの、力を込めた顔で。
そして。
『親友。敵じゃない』
小さな声が、届いた。
ほかの声とは、違っていた。
茜には、聞こえた。
中瀬は、耳を叩いた。
蚊だと、思った。
つむぎが、目を開けた。
二秒間、テレパシーを使っただけで。
疲れ切っていた。
静かに、なった。
全部、普通だった。
普通では、なくなる
今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございます!!
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