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ヒミメグリ  作者: あじせ
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23/48

第23話 宇宙は、私たちの敵。

【緊急速報】望月茜、ついに世界を敵に回す!?


― 「ジュースとカップ麺」の一言から、まさかの超能力戦争へ!? ―


買い物へ向かう茜、中瀬、そして赤ちゃん姿のつむぎ。


ただの平和なドライブ――


のはずが。


突然、茜の頭の中に謎の声が聞こえ始める。


「ジュース。」


「あと、カップ麺。」


犯人は中瀬くん!?


いや――

つむぎちゃんの能力を奪った!?


さらに疑惑はどんどん暴走し――


宇宙人!?

敵!?

超能力者!?


そして茜がたどり着いた結論は、


「つまり――世界中が敵!!」


果たして本当に世界との戦争が始まるのか!?


それとも全部、茜の壮大な勘違いなのか――!?


とりあえず、牛肉味のカップ麺は禁止です!!


中瀬の住むアパートの駐車場は、完全に静まり返っていた。


声が、響きそうだった。


外なのに。



茜は、軽トラックの前にいた。


険しい顔で。



リモコンのボタンを、押していた。


決意は、強かった。


効果は、なかった。



カチッ。


カチッ。


カチッ。



肩を、上げた。


何かを、呟いた。


もう一度、押した。



軽トラックは、開かなかった。



アパートのドアが、音を立てた。



中瀬が、駐車場へ来た。


深く息を吸って、言った。



「私の車の鍵では、あなたの軽トラは開きませんよ」



正しい鍵を、持ち上げた。


茜の、軽トラックの鍵。



茜が、止まった。


中瀬を、見た。



視線で話せる、あらゆる言語で。


怒りを、伝える目だった。



『ああ、もう!どうして何でもできるの!?』



顔を伏せた。


鍵を受け取ろうと、歩いた。



その途中で。



声が、聞こえた。



はっきりした。


遠慮のない、声。



『何でもできるわけじゃない。君よりできるだけ』



茜が、止まった。


怒りで、震えていた。


何もない場所を、見た。



声が、親切に付け足した。



『それ、難しくないけどね』



体の中が、熱くなった。


怒りが、足元から上がってくる。


あの、独特な感じ。



「黙ってーーー!!」



中瀬を、指さした。



中瀬には、何も分からなかった。


頭の上のつむぎにも、分からなかった。



茜が、苛立ちながら鍵を取った。


どすどす、軽トラックへ向かう。



『バカ!どうして、そんなこと考えるの!?』


『自分だって、できないことあるくせに――!』



ドアが、閉まった。



茜は、中でエンジンをかけようとしていた。



その時。


横の窓が、ふさがった。



中瀬が、もたれていた。



「怒ってます?」


「怒ってない」


「……」



二秒間、観察した。



茜が、力いっぱいギアを入れた。



「どうして怒ってるのか、分かりません」



中瀬が、軽トラックの後ろを回った。


茜が、バックした。



「いたっ!」



車が、当たった。


危うく、死ぬところだった。



でも。


止まらなかった。



今度は、助手席から乗り込んでいた。


頭からつむぎを下ろして、膝へ乗せる。



茜が、それを見て止まった。


勢いよく、助手席へ顔を向けた。



中瀬は、シートベルトを締めていた。



「何してるの!?」


「一緒に行きます」


「この軽トラ、ちゃんと座れないでしょ」



中瀬が、つむぎを抱き直しながら茜を見た。



「怒ってる時は、誰かが隣にいた方が――」



最後まで、言う必要はなかった。



『誰かが、隣に』



茜は、もう赤すぎた。



「あああ、中瀬くん、このバカ、鈍感、もう、耐えられない――!」



駐車場から出ながら。


思いつく限りの言葉で、怒っていた。



中瀬は、聞いていた。


その間に、つむぎを抱き直していた。



この狭さにしては。


元気が、ありすぎた。



「つむぎちゃん、じっとして。危な――」



どんっ。



とんでもない、急ブレーキ。



茜には。


まったく、普通だった。



つむぎが、飛びかけた。


中瀬の額が、勢いよく天井にぶつかった。



「いた……!」



額を、痛めた。



茜は、いつも通りだった。


怒っていた。



「つむぎちゃん、大丈夫!?」



中瀬が、支えた。



でも。


つむぎは、何もないところを見ていた。



「……」



返事が、なかった。



正確には。


声を、出さなかった。



赤ちゃんの言葉だって、反応くらいは分かるのに。



「頭をぶつけたんでしょうね」


中瀬が、落ち着いて言った。



「どうして!?」


茜には、信じられなかった。



勢いよく、横を見た。


また。



つむぎ。



「……」



「何、これ……」



茜が、顔の前で手を振った。


瞬きするか、確かめるために。



した。



「少なくとも、生きてますね」


「そこだけじゃないでしょ、中瀬くん!」



信号が、青になった。


茜が、進んだ。



少しすると。


つむぎが、元に戻った。


何もなかったみたいに、また動き始めた。



「おお……」



中瀬が、驚いた。



同時に。


まったく普通のことだとも、思った。



「つむぎちゃん!」


茜が、ちらっと見る。


すぐ、道路へ戻る。


「つむぎちゃん、大丈夫!?」



つむぎが、茜を見た。


答えた。



赤ちゃんの言葉で。



「あう、ばう、ば……」



聞き取れなかった。



茜は、真剣に聞いていた。


つむぎへ顔を向けて。



一音ずつ。


全部、理解しているみたいに。



中瀬が、それを見ていた。



『すごい』



その時。


茜に、またあの声が聞こえた。



『紙パックのジュースが欲しいんだって。あと、インスタントラーメン』



「……」



また、怒りがこみ上げた。



「何考えてるの!?」


「どうしました、望月さん?」



中瀬が、聞いた。


道で出会った、おかしな他人を見るみたいに。



「今の、聞こえなかった!?」


「……今の?」



茜が、中瀬を見た。



全部、分かったと思った。



「ふざけてるんでしょ、中瀬くん」


「……?」


「私、全部やってるの。ちゃんとしたご飯も、飲み水だって浄水したのがあるのに――」



二人とも、分からなかった。



「紙パックのジュースと、インスタントラーメンを要求するわけ!?」


「要求してま――」


「聞こえたから……ああ、分かった」


「何が――」


「全部、分かった」


「何が――」



茜は、爆発しそうだった。



「つむぎちゃんの能力を取って、テレパシーでそんなこと言ってるんでしょ!?ねえ、中瀬くん!」


「……?」


中瀬に、わずかな反応があった。


「待ってください。意味が分か――」


「今度は、とぼけるわけ!」


「私は――」


「能力を、返しなさい」



茜は、運転しながら取り乱していた。


中瀬には、何も分からなかった。



つむぎは、その一秒一秒が大好きだった。



表情。


叫び声。


走る軽トラックの中の、混乱。



幸い。


スーパーの駐車場へ着いた。



茜が、道路の真ん中で爆発する前に。



「望月さん、落ち着かないと……」


「……!!」



茜の眉が、片方だけ上がった。



はっきり、言っていた。



『落ち着く!?落ち着いてるけど!?』



中瀬が、ゆっくり息を吸った。


ゆっくり、吐いた。



やり方を、見せた。



茜の我慢が、切れた。



車を降りた。


鞄と、つむぎを取った。


ドアを、閉めた。



「つむぎちゃん、行くよ!」



中瀬は、車の中に残った。



何も、分からなかった。



気の毒だった。



スーパーの入口へ向かいながら。


茜は、考えていた。



『私をおかしくさせたいんだ!』


『独り言を言わせたいの!?それが楽しいわけ!?』


『どうして私、好きにな――』



つむぎが、腕から落ちかけた。



「あっ!ごめんね、つむぎちゃん!」



息を、吸った。


落ち着いた。



『落ち着かなきゃ』


『中瀬くんから能力を取り戻して、かわいそうなつむぎちゃんを助ける方法を考えないと』



戦争へ行く準備ができた。


そんな目をしていた。



その時。



声が、聞こえた。


中瀬も、話した。



同時に。



『牛肉味のラーメンが欲しいんだって』


「……望月さん、それを忘れてますよ」



同時だった。



「……」



茜が、止まった。



完全に。



「あ、ああ――え――あ……」


「望月さん!?」


中瀬が、心配して隣へ来た。


「ちょっと!」


「だ、大丈夫!」



突然、戻ってきた。



「待って……」



『声と中瀬くんが、同時に話した』


『じゃあ、あれを言ってたのは中瀬くんじゃない!』


『……つまり……誰かが、私たちを引き離そうとしてる』



最初の結論が、それだった。



茜が何もない場所を見て考えている間に。


つむぎが、腕から滑り落ちかけていた。



中瀬が、脇の下から抱き取った。


もう何度もやった人の、落ち着いた手際で。



そして、茜を見ていた。



『大丈夫かな、この人』



そんな顔で。



大丈夫では、なかった。



『宇宙が、私と中瀬くんを引き離そうとしてる!?』


『そうだ!気をつけなきゃ!宇宙に負けるわけにはいかない!』



視線を、別の方へ向けた。



取り乱すのは、続いていた。



あの目で。



『それとも……近くに敵がいる!?』


『つむぎちゃんを守らなきゃ!そうだ!そのために、私と中瀬くんを引き離そうとしてるんだ!!』



また、目を動かした。



『つまり、相手は宇宙と超能力者!?』



そう。



茜は、自分の考えの中を。


驚くほどの速度で、駆け巡っていた。



本人には、筋が通っていた。



「中瀬くん!」



両手を、中瀬の肩へ置いた。



中瀬が、驚いた。


赤くなった。


一瞬で。



「は、はい?」


「このままなら、世界と戦う準備をしなきゃ!」



沈黙。



中瀬が、考えた。



『このまま……』



家族のような、三人を思った。



年の差。


小さなアパート。


古い軽トラック。


腕の中の、つむぎ。



『……確かに』



「た、確かにそうですね」


ようやく、言った。



「何から始めますか?」



真剣だった。



茜の真剣さとは。


違う種類の、真剣さだった。



それでも、同じ場所へ着いた。



茜が、あの大胆な目をした。



「まず!牛肉味のラーメンを買わないこと!」


「……」


「それこそ、向こうの狙いだから!」


「……」



中瀬が、少しだけあの顔をした。



『信じられない』



その間に。


つむぎは、茜の鞄に入っていた布で包まれていた。



カンガルーみたいに。


茜の胸の、すぐそばへ。



うまくいった。



赤ちゃんは、静かになった。



高いところから、世界を見ていた。



運ばれている、女王の顔で。



「ヨチ!始めよう!」


「……」



中瀬には、もう力がなかった。


何が何だか、分からなかった。



「歩きながら、全部説明するね、中瀬くん!」



そうして。


三人は、スーパーへ入った。



冒険は、まだ始まったばかり。



かなり、とんでもないことになりそうだった。

今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございます!!

(*´꒳`*)


皆さまが読みに来てくださること、そして応援してくださることが、本当に嬉しいです!


よかったら、絵文字で今回の感想を教えてくださいね!

★で応援していただけたら、さらに大喜びします!!

ヽ(>∀<☆)ノ


いつも温かい応援を、本当にありがとうございます!

次のお話でも、もっと楽しんでいただけますように!


それでは、また次回お会いしましょう~!!

(。・ω・。)ノ♡

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