第23話 宇宙は、私たちの敵。
【緊急速報】望月茜、ついに世界を敵に回す!?
― 「ジュースとカップ麺」の一言から、まさかの超能力戦争へ!? ―
買い物へ向かう茜、中瀬、そして赤ちゃん姿のつむぎ。
ただの平和なドライブ――
のはずが。
突然、茜の頭の中に謎の声が聞こえ始める。
「ジュース。」
「あと、カップ麺。」
犯人は中瀬くん!?
いや――
つむぎちゃんの能力を奪った!?
さらに疑惑はどんどん暴走し――
宇宙人!?
敵!?
超能力者!?
そして茜がたどり着いた結論は、
「つまり――世界中が敵!!」
果たして本当に世界との戦争が始まるのか!?
それとも全部、茜の壮大な勘違いなのか――!?
とりあえず、牛肉味のカップ麺は禁止です!!
中瀬の住むアパートの駐車場は、完全に静まり返っていた。
声が、響きそうだった。
外なのに。
茜は、軽トラックの前にいた。
険しい顔で。
リモコンのボタンを、押していた。
決意は、強かった。
効果は、なかった。
カチッ。
カチッ。
カチッ。
肩を、上げた。
何かを、呟いた。
もう一度、押した。
軽トラックは、開かなかった。
アパートのドアが、音を立てた。
中瀬が、駐車場へ来た。
深く息を吸って、言った。
「私の車の鍵では、あなたの軽トラは開きませんよ」
正しい鍵を、持ち上げた。
茜の、軽トラックの鍵。
茜が、止まった。
中瀬を、見た。
視線で話せる、あらゆる言語で。
怒りを、伝える目だった。
『ああ、もう!どうして何でもできるの!?』
顔を伏せた。
鍵を受け取ろうと、歩いた。
その途中で。
声が、聞こえた。
はっきりした。
遠慮のない、声。
『何でもできるわけじゃない。君よりできるだけ』
茜が、止まった。
怒りで、震えていた。
何もない場所を、見た。
声が、親切に付け足した。
『それ、難しくないけどね』
体の中が、熱くなった。
怒りが、足元から上がってくる。
あの、独特な感じ。
「黙ってーーー!!」
中瀬を、指さした。
中瀬には、何も分からなかった。
頭の上のつむぎにも、分からなかった。
茜が、苛立ちながら鍵を取った。
どすどす、軽トラックへ向かう。
『バカ!どうして、そんなこと考えるの!?』
『自分だって、できないことあるくせに――!』
ドアが、閉まった。
茜は、中でエンジンをかけようとしていた。
その時。
横の窓が、ふさがった。
中瀬が、もたれていた。
「怒ってます?」
「怒ってない」
「……」
二秒間、観察した。
茜が、力いっぱいギアを入れた。
「どうして怒ってるのか、分かりません」
中瀬が、軽トラックの後ろを回った。
茜が、バックした。
「いたっ!」
車が、当たった。
危うく、死ぬところだった。
でも。
止まらなかった。
今度は、助手席から乗り込んでいた。
頭からつむぎを下ろして、膝へ乗せる。
茜が、それを見て止まった。
勢いよく、助手席へ顔を向けた。
中瀬は、シートベルトを締めていた。
「何してるの!?」
「一緒に行きます」
「この軽トラ、ちゃんと座れないでしょ」
中瀬が、つむぎを抱き直しながら茜を見た。
「怒ってる時は、誰かが隣にいた方が――」
最後まで、言う必要はなかった。
『誰かが、隣に』
茜は、もう赤すぎた。
「あああ、中瀬くん、このバカ、鈍感、もう、耐えられない――!」
駐車場から出ながら。
思いつく限りの言葉で、怒っていた。
中瀬は、聞いていた。
その間に、つむぎを抱き直していた。
この狭さにしては。
元気が、ありすぎた。
「つむぎちゃん、じっとして。危な――」
どんっ。
とんでもない、急ブレーキ。
茜には。
まったく、普通だった。
つむぎが、飛びかけた。
中瀬の額が、勢いよく天井にぶつかった。
「いた……!」
額を、痛めた。
茜は、いつも通りだった。
怒っていた。
「つむぎちゃん、大丈夫!?」
中瀬が、支えた。
でも。
つむぎは、何もないところを見ていた。
「……」
返事が、なかった。
正確には。
声を、出さなかった。
赤ちゃんの言葉だって、反応くらいは分かるのに。
「頭をぶつけたんでしょうね」
中瀬が、落ち着いて言った。
「どうして!?」
茜には、信じられなかった。
勢いよく、横を見た。
また。
つむぎ。
「……」
「何、これ……」
茜が、顔の前で手を振った。
瞬きするか、確かめるために。
した。
「少なくとも、生きてますね」
「そこだけじゃないでしょ、中瀬くん!」
信号が、青になった。
茜が、進んだ。
少しすると。
つむぎが、元に戻った。
何もなかったみたいに、また動き始めた。
「おお……」
中瀬が、驚いた。
同時に。
まったく普通のことだとも、思った。
「つむぎちゃん!」
茜が、ちらっと見る。
すぐ、道路へ戻る。
「つむぎちゃん、大丈夫!?」
つむぎが、茜を見た。
答えた。
赤ちゃんの言葉で。
「あう、ばう、ば……」
聞き取れなかった。
茜は、真剣に聞いていた。
つむぎへ顔を向けて。
一音ずつ。
全部、理解しているみたいに。
中瀬が、それを見ていた。
『すごい』
その時。
茜に、またあの声が聞こえた。
『紙パックのジュースが欲しいんだって。あと、インスタントラーメン』
「……」
また、怒りがこみ上げた。
「何考えてるの!?」
「どうしました、望月さん?」
中瀬が、聞いた。
道で出会った、おかしな他人を見るみたいに。
「今の、聞こえなかった!?」
「……今の?」
茜が、中瀬を見た。
全部、分かったと思った。
「ふざけてるんでしょ、中瀬くん」
「……?」
「私、全部やってるの。ちゃんとしたご飯も、飲み水だって浄水したのがあるのに――」
二人とも、分からなかった。
「紙パックのジュースと、インスタントラーメンを要求するわけ!?」
「要求してま――」
「聞こえたから……ああ、分かった」
「何が――」
「全部、分かった」
「何が――」
茜は、爆発しそうだった。
「つむぎちゃんの能力を取って、テレパシーでそんなこと言ってるんでしょ!?ねえ、中瀬くん!」
「……?」
中瀬に、わずかな反応があった。
「待ってください。意味が分か――」
「今度は、とぼけるわけ!」
「私は――」
「能力を、返しなさい」
茜は、運転しながら取り乱していた。
中瀬には、何も分からなかった。
つむぎは、その一秒一秒が大好きだった。
表情。
叫び声。
走る軽トラックの中の、混乱。
幸い。
スーパーの駐車場へ着いた。
茜が、道路の真ん中で爆発する前に。
「望月さん、落ち着かないと……」
「……!!」
茜の眉が、片方だけ上がった。
はっきり、言っていた。
『落ち着く!?落ち着いてるけど!?』
中瀬が、ゆっくり息を吸った。
ゆっくり、吐いた。
やり方を、見せた。
茜の我慢が、切れた。
車を降りた。
鞄と、つむぎを取った。
ドアを、閉めた。
「つむぎちゃん、行くよ!」
中瀬は、車の中に残った。
何も、分からなかった。
気の毒だった。
スーパーの入口へ向かいながら。
茜は、考えていた。
『私をおかしくさせたいんだ!』
『独り言を言わせたいの!?それが楽しいわけ!?』
『どうして私、好きにな――』
つむぎが、腕から落ちかけた。
「あっ!ごめんね、つむぎちゃん!」
息を、吸った。
落ち着いた。
『落ち着かなきゃ』
『中瀬くんから能力を取り戻して、かわいそうなつむぎちゃんを助ける方法を考えないと』
戦争へ行く準備ができた。
そんな目をしていた。
その時。
声が、聞こえた。
中瀬も、話した。
同時に。
『牛肉味のラーメンが欲しいんだって』
「……望月さん、それを忘れてますよ」
同時だった。
「……」
茜が、止まった。
完全に。
「あ、ああ――え――あ……」
「望月さん!?」
中瀬が、心配して隣へ来た。
「ちょっと!」
「だ、大丈夫!」
突然、戻ってきた。
「待って……」
『声と中瀬くんが、同時に話した』
『じゃあ、あれを言ってたのは中瀬くんじゃない!』
『……つまり……誰かが、私たちを引き離そうとしてる』
最初の結論が、それだった。
茜が何もない場所を見て考えている間に。
つむぎが、腕から滑り落ちかけていた。
中瀬が、脇の下から抱き取った。
もう何度もやった人の、落ち着いた手際で。
そして、茜を見ていた。
『大丈夫かな、この人』
そんな顔で。
大丈夫では、なかった。
『宇宙が、私と中瀬くんを引き離そうとしてる!?』
『そうだ!気をつけなきゃ!宇宙に負けるわけにはいかない!』
視線を、別の方へ向けた。
取り乱すのは、続いていた。
あの目で。
『それとも……近くに敵がいる!?』
『つむぎちゃんを守らなきゃ!そうだ!そのために、私と中瀬くんを引き離そうとしてるんだ!!』
また、目を動かした。
『つまり、相手は宇宙と超能力者!?』
そう。
茜は、自分の考えの中を。
驚くほどの速度で、駆け巡っていた。
本人には、筋が通っていた。
「中瀬くん!」
両手を、中瀬の肩へ置いた。
中瀬が、驚いた。
赤くなった。
一瞬で。
「は、はい?」
「このままなら、世界と戦う準備をしなきゃ!」
沈黙。
中瀬が、考えた。
『このまま……』
家族のような、三人を思った。
年の差。
小さなアパート。
古い軽トラック。
腕の中の、つむぎ。
『……確かに』
「た、確かにそうですね」
ようやく、言った。
「何から始めますか?」
真剣だった。
茜の真剣さとは。
違う種類の、真剣さだった。
それでも、同じ場所へ着いた。
茜が、あの大胆な目をした。
「まず!牛肉味のラーメンを買わないこと!」
「……」
「それこそ、向こうの狙いだから!」
「……」
中瀬が、少しだけあの顔をした。
『信じられない』
その間に。
つむぎは、茜の鞄に入っていた布で包まれていた。
カンガルーみたいに。
茜の胸の、すぐそばへ。
うまくいった。
赤ちゃんは、静かになった。
高いところから、世界を見ていた。
運ばれている、女王の顔で。
「ヨチ!始めよう!」
「……」
中瀬には、もう力がなかった。
何が何だか、分からなかった。
「歩きながら、全部説明するね、中瀬くん!」
そうして。
三人は、スーパーへ入った。
冒険は、まだ始まったばかり。
かなり、とんでもないことになりそうだった。
今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございます!!
(*´꒳`*)
皆さまが読みに来てくださること、そして応援してくださることが、本当に嬉しいです!
よかったら、絵文字で今回の感想を教えてくださいね!
★で応援していただけたら、さらに大喜びします!!
ヽ(>∀<☆)ノ
いつも温かい応援を、本当にありがとうございます!
次のお話でも、もっと楽しんでいただけますように!
それでは、また次回お会いしましょう~!!
(。・ω・。)ノ♡




