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第21話 望月 VS つむぎ

【最新ニュース】今朝起きたら、つむぎが赤ちゃんになってた!?


―望月茜の平和な休日が、突然「お預かり任務」に!―


今日。


平和な休日。


散歩でもしようかな。


のんびり過ごすはずだったのに…


ところが。


何かがおかしい。


まず。


嫌な臭いがする。


そして。


つむぎが静まり返っている。


消えてしまった!?


「つむぎちゃー茜は…


この小さくも強敵に立ち向かい…


彼女は…


任務を完遂できるのか!?


それとも…


先に心が折れてしまうのか!?


望月VS紬(ベビー編)


第一ラウンド、スタート!!


中瀬の家は、静かだった。


居間のカーテンでは、日差しを止められなかった。


しつこい光だった。


台所を通り抜けて。


居間まで、届いていた。


たぶん、朝も遅い時間だった。


茜が、目を覚ましかけていたから。


茜は、早起きする種類の人間ではない。


目やにのついた目を、開けようとしていた。


穏やかな一日へ。


公園へ、お出かけ。


あるいは。


スーパーに行くという、かなり過激な活動。


本当に、夢のようだった。


でも。


現実は、違った。


突然。


とんでもない臭いがした。


茜が、素早く目を開けた。


一気に、目が覚めた。


寝ていた姿勢のまま。


動かずに。


天井へ、聞いた。


「……この臭い、する?」


「酸っぱい臭いですか?」


近くから、中瀬の声がした。


まだ、どこにいるのかは見えなかった。


「違う、違う。なんか……」


もう一度、嗅いだ。


確認のために。


「……腐った臭い」


その瞬間、気分が悪くなった。


「私も、まさにその臭いを感じています」


中瀬が、続けた。


「あなたの足から」


茜が、自分の足を見た。


そこで。


状況が、はっきりした。


茜は、中瀬の布団にいた。


居間で、寝ていた。


中瀬は、自分の布団の外にいた。


茜の体は、変な方向に曲がっていた。


絡まった足が、中瀬の頭へ向いていた。


その頭は、床にあった。


自分の布団の外。


枕も、なし。


中瀬は、姿勢を直そうとしていなかった。


つまり。


一晩中、この状態に適応して寝ていたらしい。


「ぎゃああああ!!」


茜は、足を引っ込めようとした。


姿勢を、直そうとした。


その途中で。


うっかり、中瀬の顔を蹴った。


気の毒だった。


中瀬が、深く息を吸った。


茜は、毛布を持って壁際へ逃げた。


恥ずかしくて、震えていた。


声を出さずに。


頭の中で、取り乱していた。


『ああああ、どうやってここに来たの!?』


『私、夢遊病!?』


『寝てる間に、告白した!?』


『いやあああああ!!』


中瀬は、気づかなかった。


立ち上がって、背中を鳴らした。


『もう、年だな……』


背中の痛みを感じながら、思った。


でも。


あの状態で寝たら。


誰でも、背中が痛くなる。


伸びをしていると。


茜が言っていた、あの臭いがした。


『うわっ』


すぐに、咳が出た。


茜は、決めた。


何も。


本当に、何もなかったことにして。


今日を、続ける。


咳払い。


毛布を、劇的に放り出した。


中瀬へ、向かう。


頭を上げて。


顎も、上げて。


謝るつもりだった。


あるいは、せめて。


状況を掌握しているように見せたかった。


口を開こうとした。


その時。


中瀬が、手で塞いだ。


「……」


『ぎゃあああああああ!!』


頭の中の、小さな発作。


第三部。


「聞いてください」


中瀬が、囁いた。


完全な、静寂。


茜が、周りを見た。


探した。


待った。


中瀬へ戻って、囁いた。


「……何も聞こえない」


「そうです」


『そうです?どういうこと?』


「つむぎちゃんは、どこですか?」


茜が、ようやく気づいた。


「ぎゃあああ!!つむぎちゃん!?」


叫びながら、鼻を塞いだ。


臭いは、まだいた。


存在感を、十分に発揮して。


「うわっ!!何なの、この臭い!?」


「先につむぎちゃんを探しましょう」


中瀬が、言った。


二人は、探した。


中瀬の、「広大な」家を。


四部屋ほどしか、なかった。


「つむぎちゃん?」


「つむぎちゃーーん!?」


寝室。


いない。


台所。


いない。


浴室。


いない。


そして。


中瀬が、書斎のドアを開けた。


「……何だ、これは」


茜は、気づいた。


ほんのわずかな、表情の変化。


声の大きさも、ほんの少し上がっていた。


中瀬にとっては。


叫び声に、等しかった。


茜が、駆け寄った。


中瀬の顔の下へ、潜り込む。


隙間から、覗いた。


「何これ!?」


六倍ほど、大きい声だった。


状況を、よく見ると。


中瀬の机の上。


赤ちゃん。


一人。


仰向けに、寝ていた。


ペンで、一人遊びをしていた。


噛もうとしていた。


目的が明確な人の、真剣さで。


茜は、二秒間考えた。


そして。


「中瀬くん、娘がいるの!?」


中瀬が、何か言う前に。


茜の、頭の中の発作。


第四部。


『うそ、娘!?』


『私、既婚者を好きになってるの!?』


『しかも、閉め切った、湿っぽい、ひどい書斎に娘を隠してる人を!?』


怒って、振り向いた。


「中瀬くーーん!!」


中瀬には、何も分からなかった。


茜が、何かする前に言った。


「娘はいません。誰かと付き合ったこともありません」


その言葉は。


茜にとって、チョコレートだった。


まさに、必要としていたもの。


世界が、ゆっくりになった。


光が、綺麗になった。


中瀬の声が、響いた。


『娘はいません……』


『付き合ったこともありません……』


「あれは、つむぎちゃんでしょう」


夢が、終わった。


「つむぎちゃん!?」


一秒で、元に戻った。


書斎へ、駆け込む。


赤ちゃんは、机の上にいた。


何も知らずに。


ペンと、幸せに過ごしていた。


「つむぎちゃ――!!」


言い終える前に。


臭いが、届いた。


あの、独特な臭い。


可愛い姿のつむぎには、似合わない臭いだった。


茜が、即座に書斎を出た。


容赦なく。


ためらいなく。


「ここから、逃げよう」


「ダメです」


茜が、固まった。


「ダメ!?中瀬くん、赤ちゃんになってるのよ!?私、赤ちゃんのおむつなんて替えたことない!!」


「お年寄りだけですね」


「お年寄りだけ――」


頷きかけた。


そして、腹が立った。


中瀬は、茜をからかうために続きを言った。


気づいたのは、その後だった。


「とにかく……!」


怒っていた。


中瀬が、気づいた。


肩の力を、抜いた。


できるだけ、落ち着いて見せようとした。


「赤ちゃんだと、戸惑うかもしれませんね。望月さん。でも、つむぎちゃんです。私たちの、つむぎちゃんですよ」


茜は、危うく病院へ戻るところだった。


『私たちの……』


『私たちの赤ちゃん……』


『中瀬くん、このバカーーー!!』


「分かった!それで、どうするの!?どうして赤ちゃんになったの!?」


「説明書はついてきませんでしたよね?」


「……うん」


「まず、替えてあげて、気持ちよく過ごせるようにしましょう」


「この子が、気持ちよく!?」


「子どもが、こんな……」


書斎を、見た。


「……状態で、快適だと思いますか?」


「ば・か・ああああ!!」


茜が、言った。


一文字ずつ。


理由のない、中瀬への怒りを。


全部、込めて。


四分間の、沈黙。


二人は、廊下の壁に寄りかかっていた。


書斎のドアの隙間から、覗いていた。


作戦を立てているみたいに。


「……行かないの?」


茜が、囁いた。


「私はできません。女の子ですから」


「……赤ちゃんでしょ」


「本来は、五歳の女の子――」


「生まれて二週間」


「どちらにしてもです。それに、私は他人です。私が替えるわけにはいきません。あなたが行ってください」


「私!?」


中瀬とは、違った。


中瀬には、一応の理由があった。


茜は。


ただ、行きたくなかった。


「わ、私もできないの。だって……」


探した。


「だって……」


理由が、なかった。


深呼吸。


三秒間、そのまま立っていた。


そして。


何かが、灯った。


「ヨチ」


中瀬が、驚いた。


それでも、表情はなかった。


「嫌がる理由なんて、何もない!!助けが必要な赤ちゃんなんだから!!それに、私のつむぎちゃんよ!!」


英雄の、ポーズ。


書斎の中で。


赤ちゃんのつむぎが、ペンから目を上げた。


中瀬には、反応がなかった。


茜が、書斎へ入った。


ゴム手袋。


結んだ、髪。


中瀬の、エプロン。


鼻には。


洗濯ばさみ。


できる限り、劇的に。


難しい手術をする部屋へ入る人みたいに。


赤ちゃんが、大きな目で茜を見た。


桃色。


きらきら。


可愛すぎた。


『……可愛い!』


茜は、思った。


赤ちゃんのつむぎは。


この騒ぎを、まったく気にしていなかった。


普通。


幸せ。


ペンへ、戻った。


「タオル」


茜が、要求した。


中瀬が、手術の助手であるかのように。


中瀬は、何も言わずにタオルを取った。


茜が、宇宙にあるすべての勇気を集めた。


片手で。


赤ちゃんのつむぎを、抱き上げた。


つむぎは、抵抗しなかった。


むしろ、その動きを楽しんだ。


小さく、笑った。


その笑いに。


茜の心まで、つられて笑った。


中瀬が、机にタオルを敷いた。


大事な書類を、どけた。


ちゃんと考えていたことが分かる、真剣さで。


机の準備は、できた。


茜が、赤ちゃんを見た。


赤ちゃんが、茜を見た。


両陣営が、状況を確認した。


そして。


試合が、始まった。


茜 VS つむぎ。


赤ちゃん版。


勝つのは、どっち?

ここまで読んでくださってありがとうございます!♡


少しでも楽しんでいただけたら、下の☆から評価していただけると嬉しいです!

ブックマークも、続きを書く励みになります~!


(´▽`)


キャラクターデザインやイラストは、Pixivにも投稿しています!

よかったら、ぜひのぞいてみてくださいね♡


Pixiv:

https://www.pixiv.net/en/users/121622272


それでは、また次のお話で!♡

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