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19/25

第19話 自動運転

【速報】退院したら家まで大騒ぎでした!?


― 望月アカネ、平和に帰宅するだけのはずがツッコミ役大忙し!! ―


無事に退院――


……したはずだった。


しかし帰宅早々、


ツムギはゼリー番組へ一直線!!


一方アカネは、


なぜかナカセと二人きりで車を取りに行くことに!?


さらに、


「一緒に行かない!」


「お風呂入る!」


「ゼリーが始まる!」


自由すぎるツムギに振り回されっぱなし!!


果たして、


今日一番子どもだったのは誰なのか――!?

 


18時24分。


 


病室。


 


静かだった。


 


窓の外。


 


もう。


 


暗い。


 


廊下の灯りだけが。


 


ドアの隙間から。


 


白く。


 


差し込んでいた。


 


病院らしい。


 


時間の分からなくなる光。


 


中瀬。


 


ベッドの横。


 


椅子に座る。


 


つむぎ。


 


自分より。


 


ずっと大きなソファ。


 


ちょこん。


 


座る。


 


足。


 


ぶらぶら。


 


真剣だった。


 


ものすごく。


 


「だからね」


 


「森で火を使うと」


 


「風で火の粉が飛ぶんだ」


 


中瀬。


 


先生だった。


 


完全に。


 


つむぎ。


 


目。


 


きらきら。


 


「へぇー!」


 


「じゃあ」


 


「木も燃える?」


 


「燃えます」


 


「葉っぱも?」


 


「燃えます」


 


「石は?」


 


「燃えません」


 


「すごい!」


 


全部。


 


世界の秘密みたいだった。


 


つむぎにとっては。


 


本当に。


 


そうだった。


 


その頃。


 


茜。


 


目。


 


ゆっくり。


 


開く。


 


ぼんやり。


 


天井を見る。


 


まぶた。


 


重い。


 


顔。


 


ぐしゃぐしゃ。


 


髪。


 


ぼさぼさ。


 


よだれ。


 


少しだけ。


 


残っていた。


 


「……?」


 


ここ。


 


どこ。


 


まだ。


 


分からない。


 


聞こえてくる。


 


中瀬の声。


 


火事の話。


 


つむぎの声。


 


質問。


 


質問。


 


また質問。


 


中瀬。


 


ふと。


 


気付く。


 


「……」


 


「起きましたか」


 


つむぎ。


 


ぱあっ。


 


立ち上がる。


 


ぴょんっ。


 


ベッド。


 


飛び乗る。


 


一直線。


 


茜の顔。


 


目の前。


 


「起きたーーー!!」


 


「茜さん!」


 


「茜さーーーん!!」


 


耳元。


 


大音量。


 


茜。


 


びくっ。


 


勢いよく。


 


起き上がる。


 


「ここ……」


 


「ど――」


 


止まる。


 


全部。


 


思い出した。


 


山。


 


絶景。


 


墓。


 


「……」


 


顔。


 


真顔。


 


「お墓だったよね?」


 


中瀬。


 


こくっ。


 


「はい。」


中瀬。


 


立ち上がる。


 


茜を見る。


 


「……」


 


「具合はどうですか?」


 


茜。


 


ゆっくり。


 


顔を上げる。


 


中瀬。


 


近い。


 


ものすごく。


 


近い。


 


『……』


 


『え』


 


『近くない?』


 


『なんで?』


 


『え?』


 


頭。


 


止まる。


 


『病院』


 


『ここ病院』


 


『中瀬くん』


 


『ずっといたの?』


 


『え』


 


『まさか』


 


『私を』


 


『ここまで』


 


『運んで……』


 


頭の中。


 


勝手に始まる。


 


映画。


 


風。


 


夕日。


 


スローモーション。


 


優しく抱き上げる。


 


中瀬。


 


BGM。


 


流れる。


 


ものすごく。


 


感動的。


 


もちろん。


 


全部。


 


妄想だった。


 


茜。


 


顔。


 


真っ赤。


 


一気に。


 


耳まで。


 


熱い。


 


中瀬。


 


気付く。


 


「……?」


 


『赤い』


 


『熱でもある?』


 


少しだけ。


 


心配になる。


 


でも。


 


違った。


 


たぶん。


 


つむぎ。


 


まだ。


 


茜の頭。


 


よじ登る。


 


中瀬。


 


そっと。


 


抱き上げる。


 


降ろす。


 


「起きてよかったです」


 


「帰りましょう」


 


普通だった。


 


いつも通り。


 


それが。


 


余計に。


 


茜には。


 


危なかった。


 


じーーっ。


 


見つめる。


 


何も言わない。


 


中瀬。


 


待つ。


 


返事を。


 


十秒。


 


経過。


 


「……?」


 


茜。


 


はっ。


 


我に返る。


 


「はっ!」


 


「は、はい!!」


 


「帰ります!!」


 


「もちろんです!!」


 


「はははは!!」


 


笑い方。


 


全部。


 


おかしかった。


 


中瀬。


 


「……」


 


『疲れてるな』


 


それだけだった。


茜。


 


固まる。


 


そのまま。


 


一歩も。


 


動かない。


 


つむぎ。


 


中瀬。


 


ドアの前。


 


振り返る。


 


「……?」


 


「望月さん?」


 


「なんで」


 


「まだ寝てるんですか?」


 


茜。


 


ぴくっ。


 


真顔。


 


ものすごく真顔。


 


「待ってる」


 


中瀬。


 


「……?」


 


「何をですか?」


 


茜。


 


当然のように。


 


「看護師さん」


 


「チューブ」


 


「外してくれないと」


 


「動けない」


 


中瀬。


 


沈黙。


 


一秒。


 


二秒。


 


「……」


 


「何も」


 


「付いてませんよ」


 


「え?」


 


茜。


 


自分を見る。


 


腕。


 


何もない。


 


点滴。


 


ない。


 


心電図。


 


ない。


 


酸素。


 


ない。


 


本当に。


 


何もなかった。


 


「…………」


 


人生。


 


最大級の。


 


恥ずかしさ。


 


「望月さん」


 


「このベッド」


 


「眠っている間だけ」


 


「借りていただけです」


 


茜。


 


終わった。


 


完全に。


 


「立てますか?」


 


「……」


 


「立てます」


 


立ち上がる。


 


ふらっ。


 


少しだけ。


 


よろける。


 


でも。


 


立った。


 


恥ずかしさだけで。


 


十分。


 


目が覚めていた。


 


歩く。


 


ゆっくり。


 


ドアへ。


 


途中。


 


ぽつり。


 


「……」


 


「みんなは?」


 


中瀬。


 


歩きながら。


 


答える。


 


「救助隊が」


 


「老人ホームまで」


 


送ってくれました」


 


茜。


 


『……』


 


『高橋さん』


 


『絶対』


 


『喜んでる』


 


そんな気がした。


 


ものすごく。


病院。


 


出る。


 


外。


 


もう。


 


夜だった。


 


少しだけ。


 


涼しい。


 


三人。


 


駅へ向かう。


 


ゆっくり。


 


歩く。


 


電車。


 


乗る。


 


老人ホームより。


 


中瀬の家の方が。


 


近い。


 


いつもの席。


 


つむぎ。


 


窓際。


 


ぺたっ。


 


張り付く。


 


夜の町。


 


きらきら。


 


流れていく。


 


「綺麗……」


 


嬉しそう。


 


ものすごく。


 


茜。


 


向かい。


 


座る。


 


ちらっ。


 


中瀬を見る。


 


『……』


 


『見ちゃダメ』


 


『普通』


 


『普通に』


 


『普通にしよう』


 


ちらっ。


 


また見る。


 


『あぁぁぁぁ!!』


 


『また見たぁぁ!!』


 


頭の中。


 


一人で。


 


大騒ぎ。


 


中瀬。


 


気付かない。


 


新聞。


 


読んでいた。


 


いつも通り。


 


静か。


 


落ち着いていた。


 


それが。


 


逆に。


 


茜には。


 


危険だった。


 


『なんで』


 


『こんなに』


 


『落ち着いてるの!?』


 


『私だけ!?』


 


『え!?』


 


電車。


 


揺れる。


 


ごとん。


 


茜。


 


肩。


 


びくっ。


 


『落ち着け』


 


『深呼吸』


 


『深呼吸』


 


すぅー。


 


はぁー。


 


中瀬。


 


新聞から。


 


顔を上げる。


 


「……」


 


「まだ」


 


「具合が悪いですか?」


 


茜。


 


「へっ!?」


 


変な声。


 


出た。


 


「だ、大丈夫!!」


 


「すごく元気!!」


 


「健康そのもの!!」


 


「今なら山も登れる!!」


 


中瀬。


 


「……」


 


『絶対』


 


『無理ですね』


 


心の中だけ。


 


そう思った。


しばらくして。


 


中瀬の家。


 


到着。


 


中瀬。


 


先に入る。


 


靴。


 


脱ぐ。


 


揃える。


 


いつも通り。


 


ぴしっ。


 


つむぎ。


 


その後ろ。


 


ぱたぱた。


 


玄関。


 


飛び込む。


 


靴。


 


ぽいっ。


 


靴下。


 


そのまま。


 


家の中。


 


ぴょん。


 


ぴょん。


 


ぴょん。


 


嬉しかった。


 


「帰ってきたぁー!」


 


部屋。


 


一周。


 


また一周。


 


目的。


 


特になし。


 


走りたいだけ。


 


茜。


 


最後。


 


玄関。


 


壁。


 


もたれる。


 


「はぁ……」


 


靴。


 


ゆっくり脱ぐ。


 


中瀬。


 


振り返る。


 


「靴は」


 


「隅に置いてください」


 


「明日」


 


「洗いますから」


 


茜。


 


「ありがと――」


 


その瞬間。


 


つむぎ。


 


時計を見る。


 


ぴたっ。


 


止まる。


 


髪。


 


ぱっ。


 


緑。


 


一瞬だった。


 


「まだ始まってない!!」


 


大興奮。


 


茜。


 


きょとん。


 


「?」


 


「何が?」


 


中瀬。


 


台所。


 


ポケット。


 


煙草。


 


ごみ箱へ。


 


ぽいっ。


 


振り向く。


 


「ゼリーの番組です」


 


つむぎ。


 


即訂正。


 


「違う!」


 


「ピポとゼリーのほし!!」


 


ソファ。


 


ぽふっ。


 


座る。


 


ぴょん。


 


また跳ねた。


 


嬉しそう。


 


ものすごく。


 


茜。


 


「あぁ……」


 


なんとなく。


 


納得した。


 


中瀬。


 


手。


 


洗う。


 


棚。


 


鍵。


 


取る。


 


車の鍵だった。


 


「行きましょう」


 


茜。


 


鍵を見る。


 


中瀬を見る。


 


また。


 


鍵を見る。


 


「……」


 


『え』


 


『行く?』


 


『二人で?』


 


『えぇぇぇぇ!?』


 


頭。


 


また。


 


ショートした。


中瀬。


 


首を傾げる。


 


「……?」


 


「どうしました?」


 


茜。


 


我に返る。


 


『違う違う違う!!』


 


『落ち着け私!!』


 


『車!!』


 


『軽トラック!!』


 


『軽トラックを取りに行くだけ!!』


 


頭の中。


 


一人反省会。


 


開催。


 


「も、もちろん!」


 


「行こう!」


 


「つむぎちゃんも!」


 


勢い。


 


すごかった。


 


つむぎ。


 


ソファから。


 


くるっ。


 


振り返る。


 


「?」


 


「私?」


 


「うん!」


 


「一緒に行こう!」


 


つむぎ。


 


真顔。


 


一秒。


 


二秒。


 


「やだ」


 


即答。


 


茜。


 


固まる。


 


「え?」


 


「番組」


 


「見る」


 


それだけだった。


 


茜。


 


慌てる。


 


「でも!」


 


「一緒に――」


 


つむぎ。


 


ぶんぶん。


 


首を振る。


 


「やだ!」


 


「行かない!」


 


ソファ。


 


ぎゅっ。


 


しがみつく。


 


絶対に。


 


動かない。


 


茜。


 


ずるずる。


 


腕を引っ張る。


 


「つむぎちゃーん!」


 


「行こうよー!」


 


「やだぁぁ!」


 


「お願い!」


 


「やだぁぁぁ!!」


 


綱引き。


 


開始。


 


完全に。


 


中瀬。


 


少し見てから。


 


ぽつり。


 


「……」


 


「望月さん」


 


「つむぎちゃんは」


 


「行かなくても」


 


「大丈夫ですよ」


 


茜。


 


ぴたっ。


 


止まる。


 


『あぁぁぁぁ!!』


 


『違うのぉぉぉ!!』


 


『そういう問題じゃないのぉぉ!!』


 


心の中だけ。


 


絶叫していた。


 


もちろん。


 


中瀬は。


 


何も知らない。


つむぎ。


 


「あっ!」


 


何か。


 


思い出す。


 


勢いよく。


 


立ち上がる。


 


「お風呂!」


 


「入らなきゃ!」


 


茜。


 


「え?」


 


つむぎ。


 


もう。


 


走っていた。


 


ぱたぱたぱたっ。


 


廊下。


 


一直線。


 


浴室。


 


ぴしゃんっ。


 


ドア。


 


閉まる。


 


中から。


 


元気な声。


 


「テレビ始まる前に」


 


「お風呂入るー!」


 


「じゃあねー!」


 


しーん。


 


茜。


 


閉まったドアを見る。


 


ぽつり。


 


「……」


 


「じゃあね」


 


返事。


 


ドアへ。


 


した。


 


完全敗北。


 


七十センチ。


 


子どもに。


 


負けた。


 


中瀬。


 


玄関へ。


 


歩く。


 


靴。


 


履く。


 


「望月さん」


 


「行きましょう」


 


茜。


 


振り向く。


 


「……」


 


『終わった』


 


『二人きりだ』


 


『終わったぁぁぁぁ!!』


 


頭の中。


 


大混乱。


 


でも。


 


外では。


 


「う、うん!」


 


笑顔。


 


ものすごく。


 


ぎこちなかった。


 


中瀬。


 


気付かない。


 


「鍵」


 


「閉めますね」


 


がちゃっ。


 


玄関。


 


閉まる。


 


夜。


 


静かだった。


 


二人。


 


並んで。


 


歩き始める。


 


茜だけ。


 


心臓。


 


全力疾走だった。







読んでいただきありがとうございます!♡


もしよければ、ポイントを入れていただけると、とても励みになります~!


(´▽`)


キャラクターデザインやイラストはPixivにも投稿しています!

ぜひ遊びに来てください!


Pixiv:

https://www.pixiv.net/en/users/121622272


また次回もよろしくお願いします!♡

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