第19話 自動運転
【速報】退院したら家まで大騒ぎでした!?
― 望月アカネ、平和に帰宅するだけのはずがツッコミ役大忙し!! ―
無事に退院――
……したはずだった。
しかし帰宅早々、
ツムギはゼリー番組へ一直線!!
一方アカネは、
なぜかナカセと二人きりで車を取りに行くことに!?
さらに、
「一緒に行かない!」
「お風呂入る!」
「ゼリーが始まる!」
自由すぎるツムギに振り回されっぱなし!!
果たして、
今日一番子どもだったのは誰なのか――!?
18時24分。
病室。
静かだった。
窓の外。
もう。
暗い。
廊下の灯りだけが。
ドアの隙間から。
白く。
差し込んでいた。
病院らしい。
時間の分からなくなる光。
中瀬。
ベッドの横。
椅子に座る。
つむぎ。
自分より。
ずっと大きなソファ。
ちょこん。
座る。
足。
ぶらぶら。
真剣だった。
ものすごく。
「だからね」
「森で火を使うと」
「風で火の粉が飛ぶんだ」
中瀬。
先生だった。
完全に。
つむぎ。
目。
きらきら。
「へぇー!」
「じゃあ」
「木も燃える?」
「燃えます」
「葉っぱも?」
「燃えます」
「石は?」
「燃えません」
「すごい!」
全部。
世界の秘密みたいだった。
つむぎにとっては。
本当に。
そうだった。
その頃。
茜。
目。
ゆっくり。
開く。
ぼんやり。
天井を見る。
まぶた。
重い。
顔。
ぐしゃぐしゃ。
髪。
ぼさぼさ。
よだれ。
少しだけ。
残っていた。
「……?」
ここ。
どこ。
まだ。
分からない。
聞こえてくる。
中瀬の声。
火事の話。
つむぎの声。
質問。
質問。
また質問。
中瀬。
ふと。
気付く。
「……」
「起きましたか」
つむぎ。
ぱあっ。
立ち上がる。
ぴょんっ。
ベッド。
飛び乗る。
一直線。
茜の顔。
目の前。
「起きたーーー!!」
「茜さん!」
「茜さーーーん!!」
耳元。
大音量。
茜。
びくっ。
勢いよく。
起き上がる。
「ここ……」
「ど――」
止まる。
全部。
思い出した。
山。
絶景。
墓。
「……」
顔。
真顔。
「お墓だったよね?」
中瀬。
こくっ。
「はい。」
中瀬。
立ち上がる。
茜を見る。
「……」
「具合はどうですか?」
茜。
ゆっくり。
顔を上げる。
中瀬。
近い。
ものすごく。
近い。
『……』
『え』
『近くない?』
『なんで?』
『え?』
頭。
止まる。
『病院』
『ここ病院』
『中瀬くん』
『ずっといたの?』
『え』
『まさか』
『私を』
『ここまで』
『運んで……』
頭の中。
勝手に始まる。
映画。
風。
夕日。
スローモーション。
優しく抱き上げる。
中瀬。
BGM。
流れる。
ものすごく。
感動的。
もちろん。
全部。
妄想だった。
茜。
顔。
真っ赤。
一気に。
耳まで。
熱い。
中瀬。
気付く。
「……?」
『赤い』
『熱でもある?』
少しだけ。
心配になる。
でも。
違った。
たぶん。
つむぎ。
まだ。
茜の頭。
よじ登る。
中瀬。
そっと。
抱き上げる。
降ろす。
「起きてよかったです」
「帰りましょう」
普通だった。
いつも通り。
それが。
余計に。
茜には。
危なかった。
じーーっ。
見つめる。
何も言わない。
中瀬。
待つ。
返事を。
十秒。
経過。
「……?」
茜。
はっ。
我に返る。
「はっ!」
「は、はい!!」
「帰ります!!」
「もちろんです!!」
「はははは!!」
笑い方。
全部。
おかしかった。
中瀬。
「……」
『疲れてるな』
それだけだった。
茜。
固まる。
そのまま。
一歩も。
動かない。
つむぎ。
中瀬。
ドアの前。
振り返る。
「……?」
「望月さん?」
「なんで」
「まだ寝てるんですか?」
茜。
ぴくっ。
真顔。
ものすごく真顔。
「待ってる」
中瀬。
「……?」
「何をですか?」
茜。
当然のように。
「看護師さん」
「チューブ」
「外してくれないと」
「動けない」
中瀬。
沈黙。
一秒。
二秒。
「……」
「何も」
「付いてませんよ」
「え?」
茜。
自分を見る。
腕。
何もない。
点滴。
ない。
心電図。
ない。
酸素。
ない。
本当に。
何もなかった。
「…………」
人生。
最大級の。
恥ずかしさ。
「望月さん」
「このベッド」
「眠っている間だけ」
「借りていただけです」
茜。
終わった。
完全に。
「立てますか?」
「……」
「立てます」
立ち上がる。
ふらっ。
少しだけ。
よろける。
でも。
立った。
恥ずかしさだけで。
十分。
目が覚めていた。
歩く。
ゆっくり。
ドアへ。
途中。
ぽつり。
「……」
「みんなは?」
中瀬。
歩きながら。
答える。
「救助隊が」
「老人ホームまで」
送ってくれました」
茜。
『……』
『高橋さん』
『絶対』
『喜んでる』
そんな気がした。
ものすごく。
病院。
出る。
外。
もう。
夜だった。
少しだけ。
涼しい。
三人。
駅へ向かう。
ゆっくり。
歩く。
電車。
乗る。
老人ホームより。
中瀬の家の方が。
近い。
いつもの席。
つむぎ。
窓際。
ぺたっ。
張り付く。
夜の町。
きらきら。
流れていく。
「綺麗……」
嬉しそう。
ものすごく。
茜。
向かい。
座る。
ちらっ。
中瀬を見る。
『……』
『見ちゃダメ』
『普通』
『普通に』
『普通にしよう』
ちらっ。
また見る。
『あぁぁぁぁ!!』
『また見たぁぁ!!』
頭の中。
一人で。
大騒ぎ。
中瀬。
気付かない。
新聞。
読んでいた。
いつも通り。
静か。
落ち着いていた。
それが。
逆に。
茜には。
危険だった。
『なんで』
『こんなに』
『落ち着いてるの!?』
『私だけ!?』
『え!?』
電車。
揺れる。
ごとん。
茜。
肩。
びくっ。
『落ち着け』
『深呼吸』
『深呼吸』
すぅー。
はぁー。
中瀬。
新聞から。
顔を上げる。
「……」
「まだ」
「具合が悪いですか?」
茜。
「へっ!?」
変な声。
出た。
「だ、大丈夫!!」
「すごく元気!!」
「健康そのもの!!」
「今なら山も登れる!!」
中瀬。
「……」
『絶対』
『無理ですね』
心の中だけ。
そう思った。
しばらくして。
中瀬の家。
到着。
中瀬。
先に入る。
靴。
脱ぐ。
揃える。
いつも通り。
ぴしっ。
つむぎ。
その後ろ。
ぱたぱた。
玄関。
飛び込む。
靴。
ぽいっ。
靴下。
そのまま。
家の中。
ぴょん。
ぴょん。
ぴょん。
嬉しかった。
「帰ってきたぁー!」
部屋。
一周。
また一周。
目的。
特になし。
走りたいだけ。
茜。
最後。
玄関。
壁。
もたれる。
「はぁ……」
靴。
ゆっくり脱ぐ。
中瀬。
振り返る。
「靴は」
「隅に置いてください」
「明日」
「洗いますから」
茜。
「ありがと――」
その瞬間。
つむぎ。
時計を見る。
ぴたっ。
止まる。
髪。
ぱっ。
緑。
一瞬だった。
「まだ始まってない!!」
大興奮。
茜。
きょとん。
「?」
「何が?」
中瀬。
台所。
ポケット。
煙草。
ごみ箱へ。
ぽいっ。
振り向く。
「ゼリーの番組です」
つむぎ。
即訂正。
「違う!」
「ピポとゼリーのほし!!」
ソファ。
ぽふっ。
座る。
ぴょん。
また跳ねた。
嬉しそう。
ものすごく。
茜。
「あぁ……」
なんとなく。
納得した。
中瀬。
手。
洗う。
棚。
鍵。
取る。
車の鍵だった。
「行きましょう」
茜。
鍵を見る。
中瀬を見る。
また。
鍵を見る。
「……」
『え』
『行く?』
『二人で?』
『えぇぇぇぇ!?』
頭。
また。
ショートした。
中瀬。
首を傾げる。
「……?」
「どうしました?」
茜。
我に返る。
『違う違う違う!!』
『落ち着け私!!』
『車!!』
『軽トラック!!』
『軽トラックを取りに行くだけ!!』
頭の中。
一人反省会。
開催。
「も、もちろん!」
「行こう!」
「つむぎちゃんも!」
勢い。
すごかった。
つむぎ。
ソファから。
くるっ。
振り返る。
「?」
「私?」
「うん!」
「一緒に行こう!」
つむぎ。
真顔。
一秒。
二秒。
「やだ」
即答。
茜。
固まる。
「え?」
「番組」
「見る」
それだけだった。
茜。
慌てる。
「でも!」
「一緒に――」
つむぎ。
ぶんぶん。
首を振る。
「やだ!」
「行かない!」
ソファ。
ぎゅっ。
しがみつく。
絶対に。
動かない。
茜。
ずるずる。
腕を引っ張る。
「つむぎちゃーん!」
「行こうよー!」
「やだぁぁ!」
「お願い!」
「やだぁぁぁ!!」
綱引き。
開始。
完全に。
中瀬。
少し見てから。
ぽつり。
「……」
「望月さん」
「つむぎちゃんは」
「行かなくても」
「大丈夫ですよ」
茜。
ぴたっ。
止まる。
『あぁぁぁぁ!!』
『違うのぉぉぉ!!』
『そういう問題じゃないのぉぉ!!』
心の中だけ。
絶叫していた。
もちろん。
中瀬は。
何も知らない。
つむぎ。
「あっ!」
何か。
思い出す。
勢いよく。
立ち上がる。
「お風呂!」
「入らなきゃ!」
茜。
「え?」
つむぎ。
もう。
走っていた。
ぱたぱたぱたっ。
廊下。
一直線。
浴室。
ぴしゃんっ。
ドア。
閉まる。
中から。
元気な声。
「テレビ始まる前に」
「お風呂入るー!」
「じゃあねー!」
しーん。
茜。
閉まったドアを見る。
ぽつり。
「……」
「じゃあね」
返事。
ドアへ。
した。
完全敗北。
七十センチ。
子どもに。
負けた。
中瀬。
玄関へ。
歩く。
靴。
履く。
「望月さん」
「行きましょう」
茜。
振り向く。
「……」
『終わった』
『二人きりだ』
『終わったぁぁぁぁ!!』
頭の中。
大混乱。
でも。
外では。
「う、うん!」
笑顔。
ものすごく。
ぎこちなかった。
中瀬。
気付かない。
「鍵」
「閉めますね」
がちゃっ。
玄関。
閉まる。
夜。
静かだった。
二人。
並んで。
歩き始める。
茜だけ。
心臓。
全力疾走だった。
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(´▽`)
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