第18話 プロ
【超緊急速報】絶景ショックで救急車出動!?
― 望月茜、人生で一番恥ずかしい救急搬送が始まる!! ―
絶景を目指して登った山。
待っていたのは、
絶景ではなく――
まさかの気絶。
そこから始まる、
人生最大級の救助劇!!
救急隊は山を駆け抜け、
お年寄りたちは全力疾走。
高橋さんはイケメン隊員に夢中。
そして救急車は、
堂々と町を走り抜ける。
その姿を見た高校生たちは――
「望月さんだーーー!!」
まさかの大歓声!?
本人だけが知らないところで、
望月茜の知名度は、
今日も順調に更新中!!
「……」
「死んだ?」
つむぎ。
ぽつり。
二分。
完全な静寂。
茜。
墓の前。
大の字。
口。
半開き。
髪。
ぐしゃぐしゃ。
汗。
びっしょり。
完全に。
終わっていた。
つむぎ。
隣。
しゃがむ。
じーっ。
茜を見る。
中瀬。
心の中。
『……』
『この静けさ』
『少しだけ』
『楽しもう』
そう思った。
でも。
無理だった。
ため息。
ひとつ。
立ち上がる。
「……」
「救急車」
「呼びましょう」
その瞬間。
「きゃあああああっ!!」
藤原。
大絶叫。
「きゅ、救急車ぁ!?」
最後まで。
聞いていなかった。
宮本。
胸。
押さえる。
中瀬。
もう一度。
ため息。
「救急車が」
「一番安全です」
みんな。
「……」
冷静になる。
確かに。
その通りだった。
中瀬。
茜を見る。
もう一度。
じっと見る。
「一応」
「診てもらいましょう」
「この」
「極度の運動不足ですから」
高橋。
ぷっ。
田中。
肩。
震える。
宮本。
笑い。
我慢。
つむぎ。
ぽつり。
「運動不足……」
茜。
つん。
指で。
つつく。
反応。
なし。
中瀬。
スマホ。
取り出す。
その前に。
つむぎ。
てとてと。
近付く。
お年寄りたち。
くるっ。
反対を見る。
絶景。
探し始めた。
せっかく来たのだから。
何か。
一つくらい。
見つけたかった。
つむぎ。
中瀬の前。
ちょこん。
立つ。
中瀬。
見下ろす。
つむぎ。
両手。
口元へ。
こそこそ。
内緒話の形。
「中瀬さん」
小さな声。
「茜を起こすために」
「能力」
「使ってもいい?」
「寝てるから」
「きっと」
「気付かないよ?」
中瀬。
少し考える。
しゃがむ。
同じように。
両手。
口元へ。
こそこそ。
つむぎと。
全く同じ格好。
誰も。
真似したつもりはなかった。
でも。
そうなった。
「ダメです」
小さな声。
「でも」
「今週だけは」
「能力を使わなくても」
「きっと大丈夫」
「みんなで助けよう」
つむぎ。
「……」
少しだけ。
しょんぼり。
でも。
分かった。
こくっ。
頷く。
また。
茜の隣へ。
ちょこん。
座る。
見守る係。
任命された気分だった。
中瀬。
スマホ。
取り出す。
電話。
かける。
「もしもし」
「救急です」
「場所は――」
中瀬。
電話。
続ける。
「はい」
「○○町の山です」
「ええ」
「一名」
「意識を失っています」
落ち着いていた。
驚くほど。
その頃。
高橋。
ふと。
下を見る。
「あら?」
「あそこ」
「宮村さんじゃない?」
宮本。
身を乗り出す。
「あっ!」
「本当だ!」
二人。
大きく手を振る。
「宮村さーーん!!」
山の下。
一人の女性。
顔を上げる。
「あら!」
「こんにちはー!」
元気だった。
高橋。
ぽつり。
「不思議ねぇ」
宮本。
町を見る。
「この景色……」
「見覚えあるわ」
山の上から。
町。
全部。
見えていた。
古い家。
商店街。
細い道。
自転車で走る高校生。
スーツ姿の会社員。
いつもの町。
でも。
少しだけ。
違って見えた。
中瀬。
電話。
終わる。
「ありがとうございました」
ぴっ。
通話終了。
スマホ。
しまう。
そのまま。
煙草。
一本。
火をつける。
高橋。
振り返る。
「どうだった?」
「来てくれる?」
中瀬。
こくり。
「はい」
「もう来ます」
相変わらず。
落ち着いていた。
救急車を呼んだ人とは。
思えないくらいに。
しばらくして。
宮本。
首を傾げる。
「中瀬くん」
「住所は」
「どこを伝えたの?」
「ここ」
「道路から」
「近そうだけど……」
その頃。
山の入口。
救急車。
止まる。
その横。
茜の軽トラック。
ちゃんと。
停まっていた。
救助隊。
五人。
担架。
医療バッグ。
装備。
完璧。
隊長。
山を見る。
一言。
「行くぞ」
「はい!」
「救助開始!」
「1!」
「2!」
「1!」
「2!」
一斉に。
走り出す。
迷わない。
止まらない。
姿勢。
ぴしっ。
動き。
無駄なし。
まるで。
毎日。
こんな山を走っている人たちだった。
一方。
山の上。
中瀬。
頭。
ぽりぽり。
少しだけ。
申し訳なさそう。
「……」
「最初に車を停めた場所の住所を」
「伝えました」
宮本。
「あらぁ……」
少しだけ。
同情した。
救助隊に。
その瞬間――
ざさっ。
ざざざっ。
茂み。
揺れる。
全員。
振り向く。
「到着!」
救助隊だった。
でも。
さっきの道じゃない。
完全に。
森の中。
新しい道。
自分たちで。
作っていた。
全身。
葉っぱ。
枝。
いっぱい。
なのに。
息。
まったく乱れていない。
「きゃああああっ!!」
みんな。
同時に。
飛び上がった。
隊長。
茜を見る。
一瞬。
状況。
全部。
把握。
「よし」
「担架」
「運べ!」
「はい!」
隊員。
二人。
すぐ。
茜の横。
ひょいっ。
持ち上げる。
軽かった。
たぶん。
茜だから。
担架。
乗せる。
一秒。
終了。
「よし!」
「戻るぞ!」
「はい!」
高橋。
ぽかん。
藤原。
ぽかん。
宮本。
ぽかん。
みんな。
同じ顔。
救助隊。
向かった先。
さっき。
自分たちで。
切り開いた道。
もちろん。
今まで歩いてきた。
山道ではない。
もっと急。
もっと険しい。
高橋。
指。
びしっ。
下の道路。
何度も。
指差す。
「あっち!」
「あっちの方が!」
「近いでしょう!?」
必死だった。
でも。
隊長。
振り返らない。
完全無視。
その時。
一人の若い隊員。
みんなの前で。
止まる。
背。
高い。
腕。
太い。
爽やか。
笑顔。
きらっ。
「皆さん」
「こちらからどうぞ」
高橋。
一秒。
見つめる。
そして。
ぽつり。
「……」
「イケメン」
誰にも。
止められなかった。
「案内します」
若い隊員。
もう一度。
優しく笑う。
高橋。
即答。
「はい♡」
ものすごく。
元気になった。
中瀬。
その様子を見る。
「……」
「信じられない」
ぼそっ。
つむぎ。
手。
ぎゅっ。
佐伯。
反対の肩。
ひょいっ。
また。
歩き始めた。
若い隊員。
中瀬を見る。
「その方は」
「私が運びます」
佐伯を見る。
中瀬。
きょとん。
「……?」
「いえ」
「大丈夫です」
「私が」
「支えられます」
若い隊員。
にこっ。
「お任せください!」
爽やかだった。
眩しいくらい。
中瀬。
心の中。
『……』
『私じゃ』
『無理だと思われた?』
少しだけ。
納得いかない。
でも。
佐伯。
そっと。
若い隊員の背中へ。
ひょいっ。
軽々。
背負われる。
佐伯。
「……」
ちょっとだけ。
嬉しそう。
中瀬。
複雑だった。
ものすごく。
その二分後――
「行くぞ!」
隊長。
叫ぶ。
「はい!」
全員。
一斉に。
走る。
下り坂。
全力。
「1!」
「2!」
「1!」
「2!」
担架。
揺れる。
ぶんっ。
ぶんっ。
茜。
ゆらゆら。
口。
開いたまま。
よだれ。
そのまま。
全然。
起きない。
「もっと速く!」
「はい!」
「1!」
「2!」
「1!」
「2!」
お年寄りたち。
慌てる。
「待ってぇぇぇ!!」
必死。
走る。
救助隊。
速すぎた。
つむぎ。
中瀬と。
手。
ぎゅっ。
繋いだまま。
走る。
速い。
速すぎる。
足。
ほとんど。
地面についていない。
ぴょん。
ぴょん。
飛んでいた。
佐伯。
若い隊員の背中。
すごく安定。
全然。
揺れない。
高橋。
その隣。
走りながら。
ぽつり。
「……」
「シャツ」
「脱いだ方が」
「もっと素敵かも」
若い隊員。
聞こえた。
でも。
何も言わない。
そのまま。
走った。
三十分も。
かからなかった。
救助隊。
あっという間に。
山を下りる。
救急車。
目の前。
隊長。
先に乗り込む。
「急げ!」
「はい!」
担架。
そのまま。
車内へ。
高橋。
へとへと。
肩で息。
「茜ちゃん……」
「かわいそう……」
藤原。
苦笑い。
「恥ずかしい夢でも」
「見てそうね」
宮本。
空を見る。
「元気になるといいわぁ」
その時。
若い隊員。
佐伯を。
そっと降ろす。
高橋。
じーーっ。
見つめる。
そして。
ぽつり。
「私も……」
「倒れそう」
宮本。
「あらあら」
すぐ分かった。
理由も。
全部。
後ろのドア。
開く。
別の隊員。
「皆さんも」
「どうぞ!」
全員。
「え?」
思わず。
顔を見合わせる。
でも。
乗った。
みんな。
一緒に。
救急車。
出発。
サイレン。
鳴る。
町を走る。
老人ホーム。
通過。
茜のアパート。
通過。
学校の近く。
急ブレーキ。
ちょうど。
部活帰りの高校生たち。
振り向く。
「あっ!」
「茜さん!?」
「本当だ!!」
「すげぇ!!」
「救急車乗ってる!!」
「いいなぁ!」
「全然よくないでしょ」
一人。
近付く。
じーーっ。
茜を見る。
「……」
「寝たふりじゃない?」
「違うよ」
「電車にはねられた顔してる」
「それはそれですごい」
救急車。
また走り出す。
高校生たち。
見送る。
その中。
転校してきたばかりの男子。
ぽつり。
「……」
「あの人」
「誰?」
一番人気の男子。
胸を張る。
「知らないのか?」
「望月さんだぞ!」
「……?」
別の男子。
割り込む。
「めっちゃいい人!」
「運動部のボランティアも来てくれるし!」
「この前の大会も!」
「茜さんの特訓のおかげで優勝したんだ!」
「遠足も最高だったよな!」
「学校のより面白かった!」
「ちょっと変だけど!」
「うん」
「すごく変」
「いつもパジャマで走ってるし」
「毎回」
「恥ずかしそうにしてる」
みんな。
笑う。
夕方。
少しずつ。
空。
赤くなる。
でも。
今日という日は。
まだ。
終わっていなかった。
特に――
望月茜にとっては。
読んでいただきありがとうございます!♡
もしよければ、ポイントを入れていただけると、とても励みになります~!
(´▽`)
キャラクターデザインやイラストはPixivにも投稿しています!
ぜひ遊びに来てください!
Pixiv:
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また次回もよろしくお願いします!♡




