第17話 ― 絶景?
【緊急速報】二時間の登山、その結末は――まさかの全員撃沈!?
― 茜たち、"絶景"を目指したはずが最後に待っていたものとは!? ―
川を渡り、
草むらを進み、
終わりの見えない山道を歩き続ける一行。
つむぎのトイレ問題。
体力の限界。
まさかの道間違い。
そして、
ようやく見えてきた"目的地"――。
「ここまで来れば報われる!」
誰もがそう思った。
……その数分後。
茜、
人生最大級のショックで気絶。
一体、
山頂で何が起きたのか――!?
笑って、
歩いて、
絶望する。
そんな山登り、
聞いたことがない!!
川。
渡った。
その後。
少しだけ。
歩く。
つむぎ。
ぽつり。
「……」
「トイレどこ?」
素朴な疑問だった。
その一言。
高橋。
ものすごく嬉しそう。
歩く。
また歩く。
道。
相変わらず。
獣道だった。
人間より。
動物の方が詳しそう。
そんな道。
目的地。
まだ先。
茜。
即答。
「草むらでいいよ!」
沈黙。
普通なら。
誰もやらない。
でも。
茜。
あまりにも自然だった。
だから。
つむぎ。
素直に頷く。
「うん!」
ちょうど。
平らな岩。
見つける。
休憩。
みんな。
座る。
高橋。
立ち上がる。
「つむぎちゃん」
「一緒に行こ!」
「うん!」
二人。
少し離れた場所へ。
歩いて行く。
数分後。
戻ってきた。
高橋。
真顔。
「ダメだった」
茜。
「え?」
「ずーっと」
「見られてた」
少しだけ。
恥ずかしかった。
ものすごく。
「つむぎちゃん?」
茜。
聞く。
「見てたの?」
つむぎ。
視線。
ふいっ。
口。
すぼめる。
口笛。
吹こうとした。
吹けなかった。
「……」
茜。
全部。
理解した。
「高橋さんは?」
「ちゃんとできたよ!」
満足そうだった。
中瀬。
少しだけ。
茜へ近付く。
小さな声。
「望月さん」
「今度は」
「あなたが一緒に行ってみてください」
茜。
「……」
少し考える。
「分かりましたよ」
「物知り先生」
ぼそっ。
ため息。
ひとつ。
そして。
つむぎを見る。
「行こっか」
「うん!」
手。
ぎゅっ。
繋ぐ。
歩く。
少しだけ。
離れた場所。
茜。
思い出していた。
昔。
学校。
林間学校。
山。
森。
トイレ。
なくて。
先生が。
隣にいてくれた。
それでも。
恥ずかしくて。
全然できなかった。
「……」
少し笑う。
『今のつむぎちゃんも』
『あの頃の私と同じなのかな』
つむぎ。
しゃがむ。
茜。
景色を見る。
草。
木。
空。
見ない。
絶対。
振り向かない。
沈黙。
長かった。
ものすごく。
「……」
なんだか。
寒気。
した。
ゆっくり。
横を見る。
つむぎ。
じーーっ。
見ていた。
茜を。
ものすごく。
「……」
茜。
目。
逸らす。
「見ないで」
小さな声。
「お願いだから」
つむぎ。
真面目な顔。
「ねぇ」
「聞いてもいい?」
「……なに?」
「ここで」
「どうやってするの?」
その瞬間。
場面転換。
場面。
戻る。
もう。
終わっていた。
「無理だった」
茜。
一言。
それだけだった。
みんな。
納得。
そのまま。
また歩く。
歩く。
まだ歩く。
さらに歩く。
高橋。
ぽつり。
「もしかして」
「あの池が絶景だったんじゃない?」
本気だった。
藤原。
首を振る。
「まだ道が続いてるよ」
高橋。
真剣な顔。
「やっぱり」
「この道」
「動物が作ったんだわ」
持論。
今日。
三回目だった。
その時。
小さな坂。
登る。
みんな。
顔を上げる。
向こう。
煙。
ゆらゆら。
宮本。
目。
きらっ。
「ご飯?」
田中。
「休憩できる場所かな?」
茜。
即答。
「こんな所に?」
「手すりすらないのに?」
現実的だった。
その横。
つむぎ。
少しだけ。
そわそわ。
まだ。
我慢していた。
茜。
見る。
『子どもって』
『どうして』
『トイレがない場所で』
『行きたくなるんだろう……』
本気で。
不思議だった。
佐伯。
立ち止まる。
少しだけ。
息を整える。
中瀬。
すぐ隣。
「少し先まで」
「行ってみましょう」
短く説明する。
佐伯。
小さく。
頷いた。
佐伯。
首を傾げる。
よく分かっていなかった。
体力も。
もう。
限界だった。
中瀬。
歩きながら。
説明する。
「みんな」
「別の場所へ行きたいんです」
「山道では」
「よくあることですよ」
佐伯。
じーっ。
中瀬を見る。
『ここで十分じゃないのか』
そんな顔だった。
中瀬。
先頭へ。
歩く。
茜の隣。
「山道って」
「こんなものです」
「草」
「また草」
「登って」
「また草」
「川があって」
「また草」
淡々としていた。
先生だった。
完全に。
佐伯。
手を動かす。
『あと』
『どれくらい?』
中瀬。
同じように。
手を動かす。
『一時間半』
佐伯。
停止。
「……」
目。
少しだけ。
大きくなる。
驚いた。
でも。
誰も。
気付かなかった。
また歩く。
歩く。
さらに歩く。
もっと歩く。
まるで。
終わらなかった。
宮本。
息。
少し切れる。
「まだ……」
「着かないの……?」
苦しそう。
かなり。
でも。
その隣。
茜。
もっとひどかった。
茜。
限界だった。
完全に。
顔色。
真っ白。
肩。
上下する。
息。
ぜえ。
ぜえ。
つむぎ。
手。
ぎゅっ。
握ったまま。
歩いていた。
いや。
歩かせていた。
案内していたのは。
完全に。
つむぎだった。
子どもなのに。
高橋。
心配そう。
「望月ちゃん」
「大丈夫?」
茜。
ふらっ。
少し揺れる。
「新鮮な空気を」
「吸いすぎました……」
本気だった。
宮本。
苦笑い。
「そんな人」
「初めて見たわぁ」
三十分後。
ようやく。
看板。
見つける。
でも。
裏向き。
みんな。
そのまま。
通り過ぎる。
「あれ?」
中瀬。
止まる。
振り返る。
看板。
表を見る。
書いてあった。
『立入禁止』
沈黙。
一秒。
二秒。
三秒。
宮本。
ほっとした顔。
「よかったぁ」
「私たち」
「反対側から来たのね!」
みんな。
宮本を見る。
つむぎだけ。
うんうん。
頷いていた。
『なるほど!』
納得していた。
ものすごく。
中瀬。
小さく。
ため息。
「宮本さん」
ものすごく穏やかな声。
「本当は」
「ここを歩く予定じゃ」
「なかったんです」
宮本。
きょとん。
「え?」
「じゃあ」
「反対側にも」
「看板を立てるべきじゃない?」
中瀬。
沈黙。
ゆっくり。
茜を見る。
茜。
口笛。
吹くふり。
全然吹けない。
目。
泳ぐ。
「……」
中瀬。
すぐ分かった。
「たぶん」
「あそこ」
「入口じゃありませんでしたよね」
茜。
「……」
「つむぎちゃんのせい!」
びしっ。
指差す。
つむぎ。
ぱちっ。
瞬き。
「?」
中瀬。
即答。
「子どものせいにしないでください」
少しだけ。
厳しかった。
茜。
しゅん。
肩。
落ちる。
田中。
周りを見る。
「じゃあ」
「戻りますか?」
藤原。
前を指差す。
「あっ!」
「見て!」
みんな。
顔を上げる。
道。
さっきまでと。
全然違う。
階段。
ちゃんとある。
手すりまで。
付いていた。
茜。
ぼそっ。
「文明だ……」
感動していた。
ものすごく。
「手すりがある……」
「階段もある……」
「人間が作った道だぁ……」
涙。
出そうだった。
みんな。
また歩く。
今度は。
ちゃんとした道。
石段。
苔。
小さな花。
手すり。
全部あった。
やっと。
山道らしかった。
つむぎ。
まだ。
茜の手。
ぎゅっ。
繋いだまま。
一歩。
また一歩。
前へ。
歩く。
というより。
引っ張る。
完全に。
高橋たち。
どんどん進む。
気付けば。
茜を追い越した。
二十五歳。
八十歳のみんなに。
置いていかれる。
茜。
「……」
ショックだった。
かなり。
つむぎ。
後ろを見る。
茜。
全然進まない。
「よいしょ!」
背中。
ぽんっ。
押す。
もちろん。
全然動かない。
でも。
なんだか。
少しだけ。
元気が出た。
不思議だった。
茜。
一歩。
また一歩。
ゆっくり。
登る。
そして――
「着いたー!」
誰かが叫ぶ。
みんな。
最後の階段。
登り切る。
目の前。
広がっていたのは――
「……」
絶景。
……ではなかった。
そこに。
あったのは。
墓。
立派な。
ものすごく立派な。
お墓だった。
茜。
固まる。
一秒。
二秒。
三秒。
「…………」
ゆっくり。
看板を見る。
書いてある。
『絶景』
茜。
もう一度。
墓を見る。
もう一度。
看板を見る。
「……」
「絶景って」
「お墓の名前なのぉぉぉっ!?」
山中。
叫び声。
響いた。
誰も。
信じられなかった。
みんなが目指していた。
絶景。
その正体。
ただの。
墓だった。
「うそでしょぉぉぉ……」
茜。
その場で。
ぱたん。
倒れる。
比喩じゃない。
本当に。
倒れた。
宮本。
「あっ!」
慌てる。
支えようとする。
間に合わない。
一緒に転ぶ。
ごろん。
中瀬。
驚く。
思わず。
佐伯から。
手を離す。
佐伯。
その場で。
すとん。
座り込む。
ものすごく自然だった。
まるで。
最初から。
そうする予定だったみたいに。
田中。
佐伯へ近付く。
「大丈夫ですか?」
手。
差し出す。
でも。
自分も。
限界だった。
力。
全然入らない。
中瀬。
すぐ。
茜の隣へ。
しゃがむ。
「望月さん」
返事。
ない。
頬。
ぽん。
軽く叩く。
「望月さん」
もう一度。
「望月さん」
静かだった。
完全に。
気絶していた。
宮本。
心配そう。
「刺激が」
「強すぎたのねぇ……」
ものすごく同情していた。
つむぎ。
茜の隣。
ちょこん。
しゃがむ。
茜を見る。
墓を見る。
中瀬を見る。
もう一度。
墓を見る。
「……」
「絶景」
「ないの?」
中瀬。
首を横に振る。
「ありません」
つむぎ。
少しだけ。
しょんぼり。
茜を見る。
「茜」
「大丈夫?」
中瀬。
穏やかに笑う。
「大丈夫ですよ」
「そのうち起きます」
慌てない。
急がない。
もう。
慣れていた。
目の前。
墓。
周り。
蚊。
そして。
道を間違えた。
八人。
誰も想像しなかった。
そんな山歩き。
まだ。
終わっていなかった。
つづく。
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