第16話 火をつけちゃダメ!!
【事件】自然を楽しみに来たはずが全員自由すぎる件。
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山。
川。
青空。
最高の景色。
……のはずだった。
しかし。
冷たすぎる川。
突然「火ぃぃぃ!!」と叫ぶ少女。
笑いすぎて限界の大人。
煙草を没収したいおじいちゃん。
逃げる先生。
誰も。
自然を見ていない。
夜。
川。
目の前。
みんな。
止まる。
しーん。
誰も。
何も言わない。
考えていた。
『ここまで来たし』
『帰ってもいいかな』
そんな空気だった。
でも。
その時。
茜。
靴を脱ぐ。
ぽいっ。
「暖かいといいなぁ……!」
深呼吸。
一回。
二回。
つむぎ。
隣へ。
並ぶ。
小さなスカート。
ひょいっ。
持ち上げる。
水。
全然届かない。
でも。
本人は真剣だった。
ものすごく。
茜。
つむぎ。
同時に。
「よぉぉぉし!!」
足。
前へ。
一歩。
ぴちゃん。
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
茜。
三歩で戻る。
全力だった。
つむぎ。
止まる。
足だけ。
体。
そのまま。
ぴたっ。
一秒。
二秒。
そのまま。
ばたん。
後ろへ倒れた。
大の字。
目。
空を見る。
宮本。
すぐ駆け寄る。
靴を脱ぐ。
しゃがむ。
「つむぎちゃん?」
つむぎ。
生きていた。
ちゃんと。
でも。
頭の中。
考えていた。
『人生で』
『一番冷たい』
『かもしれない』
完全に衝撃だった。
「ひゃぁぁぁぁぁ!!」
茜。
片足。
ぴょん。
ぴょん。
両手。
凍った足を抱える。
田中。
近寄る。
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫じゃなぁぁぁい!!」
高橋。
笑う。
止まらない。
ものすごく。
「あははははは!!」
「だ、ダメ……!」
「お腹がぁぁぁ!!」
笑いすぎだった。
「もうダメぇぇぇ!!」
「お漏らししちゃう!!」
「ダメぇぇぇぇ!!」
茜。
真顔。
ものすごく真顔。
まだ片足だった。
川辺。
もう。
大騒ぎ。
その頃。
藤原。
一人だけ。
違った。
真剣。
ものすごく真剣。
ロープ。
肩へ。
川沿い。
歩く。
右を見る。
左を見る。
渡れそうな場所。
探していた。
まるで。
軍隊だった。
一方。
佐伯。
中瀬の隣。
何か伝えようとしていた。
言葉はない。
だから。
身振り。
手振り。
視線。
全部使う。
中瀬。
真剣。
ものすごく真剣。
「……」
考える。
『何の話だ?』
『景色?』
『川?』
『鳥?』
全然分からない。
その時。
つむぎ。
むくっ。
起き上がる。
元気。
百パーセント。
いや。
百二十パーセント。
「えっ!?」
茜。
びっくり。
「さっきも百パーセントだったよねぇぇ!?」
つむぎ。
立ち上がる。
ぴんっ。
目。
きらきら。
体。
ぽかぽかしたかった。
冷たすぎた。
だから。
反対。
暖かいもの。
思い浮かんだ。
「火ぃぃぃぃぃっ!!!」
突然だった。
走る。
全力で。
お年寄りの周りを。
ぐるぐる。
ぐるぐる。
両手。
大きく広げる。
まるで。
何かを宣言する王様だった。
「火ぃぃぃぃぃっ!!」
中瀬。
見る。
止まる。
「佐伯さん」
「ちょっと失礼します」
話を中断。
すぐ追いかける。
「つむぎちゃん!」
「待って!」
「火ぃぃぃぃ!!」
でも。
つむぎ。
ちゃんと覚えていた。
『海』
『行きたい』
『能力』
『使っちゃダメ』
一生懸命。
我慢していた。
だから。
叫ぶだけ。
「火ぃぃぃぃぃ!!」
茜。
まだ片足。
「暑いんだからぁぁ!!」
「火なんて考えちゃダメぇぇぇ!!」
つむぎ。
走る。
ものすごく速い。
「なんでぇぇぇ!?」
ほっぺ。
ぷくっ。
中瀬。
追いかけながら。
普通に答える。
「森で火を使うと――」
説明。
始めようとした。
先生だった。
完全に。
その瞬間。
「中瀬ぇぇぇぇぇっ!!!!」
茜。
叫ぶ。
全力で。
「今それ説明するぅぅぅ!?」
「え?」
中瀬。
本当に分からなかった。
茜。
凍えた足。
そのまま下ろす。
ぺたっ。
冷たい。
でも。
我慢。
胸を張る。
びしっ。
「つ・む・ぎ!!」
ものすごく怖かった。
つむぎ。
ぴたっ。
止まる。
振り返る。
「あ……」
嫌な予感。
した。
「こっち来なさぁぁぁい!!」
「やだぁぁぁ!!」
逃げる。
全力。
茜。
追いかける。
「待ちなさぁぁぁい!!」
「こわぁぁぁい!!」
二人。
走る。
気付かない。
そのまま。
川へ。
ばしゃっ。
水。
跳ねる。
ばしゃっ。
ばしゃっ。
追いかけっこ。
川の真ん中。
始まった。
宮本。
腕。
水しぶき。
少しかかった。
止まる。
「……」
触る。
ひんやり。
気持ちいい。
にこっ。
ゆっくり。
川へ入る。
一歩。
また一歩。
慎重だった。
ものすごく。
一方。
田中。
新しい任務。
決まっていた。
高橋だった。
まだ笑っている。
「高橋さん!」
「頑張ってください!」
「まだ大丈夫です!」
「負けないでください!」
励ます。
必死だった。
目的。
ただ一つ。
ズボンだけは守ること。
二人。
そのまま。
気付かないうちに。
川を渡っていた。
中瀬。
止まる。
もう。
疲れた。
完全に。
立ったまま。
息を吐く。
聞こえる。
つむぎの声。
「火ぃぃぃぃぃ!!」
茜の声。
「待ちなさぁぁぁい!!」
高橋。
まだ笑っている。
水しぶき。
ぱしゃっ。
ぱしゃっ。
全部。
聞こえていた。
「……」
中瀬。
小さく呟く。
「望月さんより」
「佐伯さんのほうが」
「分かりやすいですね」
本音だった。
その時。
佐伯。
喉。
こほん。
小さく鳴らす。
言葉じゃない。
でも。
呼んでいた。
中瀬。
振り向く。
佐伯。
じーっ。
見ていた。
そして。
指。
すっ。
中瀬へ。
さらに。
その先。
煙草。
中瀬。
固まる。
「あ……」
全部。
思い出した。
さっきから。
佐伯が話したかったこと。
これだった。
煙草だった。
「まさか……」
ぼそっ。
「取り上げる気ですか……?」
佐伯。
一歩。
前へ。
中瀬。
一歩。
後ろへ。
佐伯。
また一歩。
中瀬。
また下がる。
少しだけ。
速く。
佐伯も。
少しだけ。
速く。
ものすごく遅い。
でも。
ものすごく本気だった。
気付けば。
中瀬。
後ろ。
水。
ちゃぽん。
止まる。
足元。
川だった。
その川。
藤原。
いた。
膝まで。
水。
ロープ。
肩。
壁ぎわ。
ゆっくり進む。
ものすごく静か。
本人だけ。
極秘任務だった。
宮本。
目。
閉じる。
にこにこ。
水。
気持ちいい。
夏だった。
そのまま。
笑う。
中瀬。
逃げる。
佐伯。
追いかける。
ものすごく平和な顔で。
でも。
絶対に諦めなかった。
山道。
静かな森。
……のはずだった。
実際は。
大騒ぎ。
叫び声。
笑い声。
水しぶき。
全部混ざる。
普通のお出かけ。
……ではなかった。
もちろん。
十五分後。
ようやく。
全員。
向こう岸。
到着。
「……」
静か。
少しだけ。
いや。
違った。
「ぷーん。」
蚊。
飛ぶ。
ぱちっ。
ぺちっ。
みんな。
自分を叩く。
忙しかった。
「渡れたぁ……」
茜。
その場に座る。
完全に。
疲れていた。
つむぎ。
髪。
緑。
さっきまで。
青かった。
でも。
誰も。
気付いていなかった。
それくらい。
忙しかった。
その時。
ぴぃ――……
鳥だった。
綺麗な声。
みんな。
振り向く。
そこには。
淡い緑。
夏の日差し。
きらきら舞う。
小さな光。
透き通る岩。
穏やかな川。
平らな草原。
優しい木々。
まるで。
絵本だった。
誰も。
少しだけ。
言葉を忘れた。
一方。
宮本。
うっとり。
池。
眺める。
鴨。
のんびり。
泳いでいた。
「自然……」
「ありがとう……!」
感動していた。
ものすごく。
その後ろ。
しゅーーーっ。
しゅーーーっ。
茜だった。
虫よけスプレー。
全身。
これでもかというくらい。
吹きかける。
真剣。
ものすごく真剣。
まるで。
戦場へ向かう兵士だった。
全然。
自然を楽しんでいない。
その隣。
つむぎ。
くるくる。
回る。
両手。
大きく広げる。
嬉しそう。
ものすごく。
中瀬。
動かない。
ただ。
虫よけスプレー。
しゅっ。
しゅっ。
つむぎが回るたび。
ぴったり合わせる。
前も。
横も。
後ろも。
全部。
丁寧だった。
慣れていた。
少しだけ。
それが。
今の現実だった。
望月茜。
中瀬俊介。
そして。
超常の力を持つ少女。
つむぎ。
今は。
能力を使わない。
そのために。
始まった。
一週間。
目標。
「社会性レベル1」
解放作戦。
スタートだった。
つづく。
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