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第15話 やっと報われた気がした

【超速報】ハイキング開始5分で全員限界!?

― 蚊・急坂・謎の案内役(5歳)……全員で山に挑んだ結果!? ―


軽トラックを降りた一行を待っていたのは、


楽しいはずのハイキング――


その現実は、


急坂。


蚊。


暑さ。


そして体力ゼロ。


ようやく見つけた平地に全員大感動!!


……しかし。


今度は蚊の大群が襲来!?


さらに、つむぎは動物たちと会話を開始。


まさかの"森ガイド"誕生!?


そして苦労の末にたどり着いたのは――


息を呑むほど美しい川。


……のはずだった。


「橋は?」


その一言で、


遠足は再び大ピンチへ!!

到着した。


 


みんな。


 


入口の前。


 


立ち尽くす。


 


静かだった。


 


ものすごく。


 


誰も。


 


最初に口を開きたくなかった。


 


中瀬。


 


煙草。


 


一本取り出す。


 


火をつける。


 


そして。


 


「……本当にここ?」


 


聞いた。


 


冷静に。


 


つむぎ。


 


地図を持っている。


 


ものすごく真剣な顔。


 


でも。


 


その地図。


 


途中から。


 


ほぼ勘だった。


 


茜。


 


ちらっと見る。


 


そして。


 


「たぶん……?」


 


自信はなかった。


 


全然。


 


高橋。


 


前を見る。


 


そして。


 


言った。


 


「これ」


 


「ハイキングコースじゃないわよ」


 


正論だった。


 


藤原。


 


即反応。


 


「ハイキングとはこういうものです」


 


少し怒っていた。


 


なぜか。


 


高橋。


 


指をさす。


 


目の前。


 


穴みたいな入口。


 


木。


 


草。


 


闇。


 


森。


 


全部あった。


 


「これは森よ」


 


「しかも野生」


 


また正論だった。


 


田中。


 


少し困る。


 


「ほら……」


 


「道はあるし……」


 


高橋。


 


即答。


 


「動物のね」


 


田中。


 


黙る。


 


負けた。


 


完全に。


 


宮本。


 


慌ててフォロー。


 


「だ、大丈夫ですよ!」


 


「ちょっと個性的なだけです!」


 


前向きだった。


 


ものすごく。


 


一方。


 


茜。


 


祈っていた。


 


真剣に。


 


『どうか』


 


『木が倒れませんように』


 


『お願いです』


 


『本当に』


 


つむぎ。


 


読んだ。


 


その心を。


 


じーっ。


 


茜を見る。


 


『さっきまで』


 


『全部崩れればいいと思ってた人なのに』


 


疑いの目だった。


 


少しだけ。


 


茜。


 


気付かない。


 


全然。


 


そして――


 


「よぉぉぉし!!」


 


一歩前へ出る。


 


腕。


 


びしっ。


 


大きく広げる。


 


「ここまで来たんだから!!」


 


「私たちの力を見せてやろうじゃないのぉぉぉっ!!」


 


数分後。


 


全員。


 


後悔していた。


 


ものすごく。


 

 


歩く。


 


歩く。


 


ひたすら歩く。


 


そして。


 


登る。


 


ものすごく。


 


急だった。


 


信じられないくらい。


 


高橋。


 


膝。


 


胸に当たりそうだった。


 


「この坂ぁぁぁ!!」


 


「おかしいでしょぉぉぉ!!」


 


叫ぶ。


 


心から。


 


田中。


 


慌てる。


 


「た、高橋さん!」


 


「言葉!」


 


高橋。


 


振り返る。


 


「今さらぁ!?」


 


正論だった。


 


誰も反論できなかった。


 


茜。


 


先頭。


 


なぜか。


 


ペンキ缶を持っていた。


 


刷毛も持っていた。


 


そして。


 


木を塗る。


 


ぺたぺた。


 


目印だった。


 


一応。


 


ペンキ缶。


 


口にくわえている。


 


両手を使いたかったから。


 


宮本。


 


それを見る。


 


少し考える。


 


そして。


 


「ああ……」


 


納得した。


 


茜。


 


振り向く。


 


ペンキ缶。


 


まだ口。


 


「んん?」


 


何か言った。


 


全然分からなかった。


 


宮本。


 


指差す。


 


ペンキ缶。


 


そのまま。


 


「色々納得しました」


 


茜。


 


「んんん!?」


 


高橋。


 


限界だった。


 


「文明人は!!」


 


「普通ペンキ食べないのよぉぉぉ!!」


 


「食べてないですぅぅぅ!!」


 


森に響いた。


 


ものすごく。


 


後ろ。


 


つむぎ。


 


登っていた。


 


独自の方法で。


 


まず。


 


中瀬の頭。


 


よいしょ。


 


次。


 


岩。


 


よいしょ。


 


そして。


 


また中瀬の頭。


 


よいしょ。


 


中瀬。


 


何も言わない。


 


もう慣れた。


 


少しだけ。


 


悲しかったけど。


 


つむぎ。


 


舌。


 


少しだけ出ている。


 


真剣だった。


 


試験だと思っていた。


 


絶対に。


 


合格しなければならない。


 


なぜなら。


 


海がある。


 


その先に。


 


海は偉大だった。


 


つむぎの中で。


 


ものすごく。


 


中瀬。


 


後方。


 


佐伯さんとつむぎを支えながら。


 


叫ぶ。


 


「景色でも楽しんでください!」


 


精一杯の励ましだった。


 


前方。


 


茜。


 


即答。


 


「そんな余裕ないですぅぅぅ!!」


 


本音だった。


 


百パーセント。


 


生きるので精一杯だった。


 


その時だった。


 


茜。


 


止まる。


 


突然。


 


本当に突然。


 


高橋。


 


止まれなかった。


 


ぺしっ。


 


茜のかかとにぶつかる。


 


「いたっ!」


 


後ろ。


 


全員。


 


慌てて停止。


 


ぎりぎりだった。


 


沈黙。


 


森。


 


静か。


 


ものすごく。


 


茜。


 


前を見る。


 


じーっ。


 


動かない。


 


高橋。


 


少し緊張する。


 


「なによ?」


 


藤原。


 


辺りを見る。


 


「熊?」


 


田中。


 


周囲を警戒。


 


「野犬?」


 


宮本。


 


少し不安そう。


 


「まさか……幽霊?」


 


つむぎ。


 


目を輝かせる。


 


「パンダ!?」


 


みんな。


 


つむぎを見る。


 


なぜパンダ。


 


誰も分からなかった。


 


茜。


 


振り向く。


 


顔。


 


真剣。


 


そして――


 


「違う」


 


一拍。


 


置く。


 


ものすごく。


 


もったいぶる。


 


高橋。


 


イライラする。


 


少し。


 


「早く言いなさいよ」


 


茜。


 


息を吸う。


 


そして。


 


叫んだ。


 


「平地ぃぃぃぃぃぃ!!」


 


沈黙。


 


一秒。


 


二秒。


 


三秒。


 


そして――


 


「「「「平地ぃぃぃぃぃぃ!!!」」」」


 


歓声だった。


 


ものすごく。


 


たった五文字。


 


なのに。


 


全員。


 


感動していた。


 


本気で。


 


五秒後。


 


みんな走った。


 


平地へ。


 


高橋。


 


一番速かった。


 


さっきまで死にそうだったのに。


 


元気だった。


 


ものすごく。


 


宮本。


 


涙目。


 


少しだけ。


 


「地面が優しい……」


 


感動していた。


 


藤原。


 


頷く。


 


何度も。


 


「文明って素晴らしいですね」


 


まだ森だった。


 


全然文明じゃなかった。


 


でも。


 


気持ちは分かる。


 


田中。


 


空を見る。


 


本当に幸せそうだった。


 


「平らだ……」


 


それだけだった。


 


十分だった。


 


人生には。


 


そういう瞬間もある。


 


たぶん。

 


「やったぁぁぁぁぁ!!」


 


高橋。


 


万歳。


 


ものすごく元気だった。


 


数秒前まで。


 


死にそうだった人とは思えない。


 


茜。


 


少しだけ。


 


嫌な予感がした。


 


そして――


 


ぺちっ。


 


音。


 


小さかった。


 


みんな。


 


見る。


 


斎木だった。


 


腕を叩いている。


 


ぽりぽり。


 


少し掻く。


 


沈黙。


 


一秒。


 


二秒。


 


高橋。


 


顔が曇る。


 


「……いるわね」


 


宮本。


 


遠い目。


 


「いますね」


 


藤原。


 


ため息。


 


「いますねぇ」


 


田中。


 


首筋を押さえる。


 


「いますね……」


 


蚊だった。


 


大量に。


 


ものすごく。


 


つむぎ。


 


周囲を見る。


 


きょろきょろ。


 


「え?」


 


「どこ?」


 


まだ気付いていなかった。


 


若かった。


 


数秒後。


 


ぷぅぅぅん。


 


耳元。


 


飛ぶ。


 


つむぎ。


 


停止。


 


完全に。


 


「……」


 


ぷぅぅぅん。


 


もう一回。


 


飛ぶ。


 


「……」


 


ぷぅぅぅん。


 


三回目。


 


飛ぶ。


 


つむぎ。


 


振り向く。


 


真顔。


 


「敵?」


 


茜。


 


吹き出しそうになる。


 


「敵じゃない」


 


「蚊だよ」


 


「か?」


 


知らなかった。


 


当然だった。


 


つむぎ。


 


蚊を見る。


 


じーっ。


 


蚊。


 


飛ぶ。


 


つむぎ。


 


見つめる。


 


じーっ。


 


数秒後。


 


「こんにちは」


 


話しかけた。


 


蚊に。


 


当然のように。


 


ものすごく自然に。


 


蚊。


 


飛んでいった。


 


無視だった。


 


完全に。


 


つむぎ。


 


固まる。


 


少し。


 


「……」


 


茜。


 


肩を震わせる。


 


笑いそうだった。


 


かなり。


 


「返事してくれなかった」


 


悲しそうだった。


 


ものすごく。


 


「全員が話してくれるわけじゃないんだね……」


 


人生を学んだ顔だった。


 


五歳にして。


 


深かった。


 


その時。


 


高橋。


 


また蚊を叩く。


 


ぺちっ。


 


「よし」


 


倒した。


 


一匹。


 


誇らしそうだった。


 


ものすごく。


 


藤原。


 


負けじと。


 


ぺちっ。


 


「私もです」


 


宮本。


 


ぺちっ。


 


「私も!」


 


なぜか始まった。


 


蚊討伐大会。


 


田中。


 


カメラを構える。


 


「記録しておこう」


 


何の。


 


誰も分からなかった。


 


茜。


 


頭を抱える。


 


「お願いだから進もう!?」


 


誰も聞いていなかった。


 


平地だった。


 


だから。


 


みんな。


 


少しだけ。


 


調子に乗っていた。


 


ものすごく。


 


そして――


 


五分後。


 


全員。


 


再び。


 


草むらの中へ。


 


戻ることになる。


 


もちろん。


 


蚊も一緒だった。


 


最悪だった。


 


ものすごく。

 


平地。


 


終わった。


 


結局。


 


何も解決しなかった。


 


蚊。


 


いた。


 


草。


 


あった。


 


暑い。


 


ものすごく。


 


だから。


 


また歩く。


 


列になって。


 


ぞろぞろ。


 


宮本。


 


ぽつり。


 


呟く。


 


「こういうの……」


 


「私の普段の生活とは全然違いますねぇ」


 


本音だった。


 


ものすごく。


 


藤原。


 


少し笑う。


 


「編み物とは真逆ですからね」


 


宮本。


 


頷く。


 


何度も。


 


「そうなんです」


 


「私ねぇ」


 


「普段はずっと座ってますから」


 


「こんなに歩いたの久しぶりです」


 


藤原。


 


少しだけ。


 


感心する。


 


「でも元気ですね」


 


「意外と向いてるのかもしれませんよ」


 


宮本。


 


少し照れる。


 


「そうでしょうか?」


 


嬉しそうだった。


 


ものすごく。


 


その時。


 


茜。


 


前を歩きながら。


 


叫ぶ。


 


「絶対向いてません!!」


 


即答だった。


 


誰よりも。


 


確信していた。


 


宮本。


 


少しだけ。


 


しょんぼり。


 


「えぇ……」


 


田中。


 


笑う。


 


「まあまあ」


 


「でも上に行けば景色がすごいらしいですよ」


 


宮本。


 


すぐ復活する。


 


早かった。


 


ものすごく。


 


「そうでした!」


 


「それが楽しみなんです!」


 


藤原。


 


頷く。


 


「町全体が見えるそうですね」


 


その後ろ。


 


中瀬。


 


少しだけ空を見る。


 


そして。


 


ぼそり。


 


「ここまで登ったら」


 


「市内どころか県外まで見えそうですね」


 


現実的だった。


 


ものすごく。


 


高橋。


 


即座に振り向く。


 


「それは盛ったわね」


 


中瀬。


 


肩をすくめる。


 


少しだけ。


 


茜。


 


前を向いたまま。


 


にやっ。


 


笑う。


 


「じゃあ」


 


「絶対に元取ってやる」


 


謎の対抗心だった。


 


誰に対してかは。


 


本人も知らない。


 


たぶん。


 


その頃。


 


つむぎ。


 


静かだった。


 


珍しく。


 


ものすごく。


 


目。


 


閉じている。


 


肩。


 


少し上がっている。


 


髪。


 


茶色。


 


無表情。


 


茜。


 


ちらっと見る。


 


そして。


 


固まる。


 


「……」


 


一秒。


 


二秒。


 


三秒。


 


そして。


 


聞いた。


 


「つむぎちゃん」


 


「おトイレ?」


 


つむぎ。


 


片目だけ開く。


 


じーっ。


 


茜を見る。


 


疑いの目だった。


 


かなり。


 


「違う」


 


「でも」


 


茜。


 


言う。


 


真顔で。


 


「すごく我慢してる顔してる」


 


つむぎ。


 


沈黙。


 


一秒。


 


二秒。


 


三秒。


 


そして。


 


答えた。


 


「集中してる」


 


茜。


 


「……」


 


何も言えなかった。


 


完全に。


 


負けた気分だった。


 


後ろから。


 


高橋。


 


反応する。


 


ものすごく。


 


「えっ!?」


 


「今トイレって言った!?」


 


しまった。


 


茜。


 


思った。


 


遅かった。


 


もう。


 


手遅れだった。


  


「えっ!?」


 


高橋。


 


反応。


 


ものすごく早かった。


 


「トイレ!?」


 


「どこ!?」


 


宮本。


 


振り向く。


 


「あるんですか!?」


 


藤原。


 


少し期待する。


 


「まさか……」


 


田中。


 


希望を抱く。


 


「休憩所とか?」


 


斎木。


 


静かに顔を上げる。


 


興味はあった。


 


かなり。


 


茜。


 


慌てる。


 


両手。


 


ぶんぶん。


 


「違う違う違う!!」


 


「つむぎちゃんに聞いただけ!!」


 


「トイレあるよって話じゃない!!」


 


全員。


 


止まる。


 


沈黙。


 


数秒。


 


そして。


 


高橋。


 


真顔。


 


「ないの?」


 


「ない」


 


即答だった。


 


ものすごく。


 


高橋。


 


天を仰ぐ。


 


「なんて不便な場所なの……」


 


まるで。


 


文明批判だった。


 


藤原。


 


腕を組む。


 


深刻そうに。


 


「確かに」


 


「欠陥がありますね」


 


「この山」


 


山だった。


 


ただの。


 


普通の山だった。


 


中瀬。


 


後ろから。


 


ぼそり。


 


「もっと普通の登山道なら」


 


「だいたいありますけどね」


 


沈黙。


 


一秒。


 


二秒。


 


三秒。


 


ひゅっ。


 


何か飛んだ。


 


小枝だった。


 


一直線。


 


中瀬へ。


 


中瀬。


 


ひょい。


 


避ける。


 


慣れていた。


 


少しだけ。


 


小枝。


 


地面に落ちる。


 


ころころ。


 


中瀬。


 


前を見る。


 


茜。


 


振り返っていた。


 


笑顔。


 


全然笑っていない笑顔。


 


『助けろ』


 


『余計なこと言うな』


 


『今それ言うな』


 


全部書いてあった。


 


顔に。


 


ものすごく。


 


中瀬。


 


理解する。


 


頷く。


 


少しだけ。


 


反省した。


 


少しだけ。


 


列。


 


また動き出す。


 


先頭。


 


茜。


 


その隣。


 


つむぎ。


 


目を閉じたまま。


 


集中。


 


ものすごく。


 


「つむぎちゃん」


 


茜。


 


聞く。


 


少し気になった。


 


「何に集中してるの?」


 


つむぎ。


 


答える。


 


真面目に。


 


ものすごく。


 


「動物さん達と話さないようにしてる」


 


沈黙。


 


茜。


 


止まる。


 


少し。


 


「……できるの?」


 


「できる」


 


「話せるの?」


 


「話せる」


 


「いつから?」


 


「少し前から」


 


簡単だった。


 


本人の中では。


 


ものすごく。


 


茜。


 


後ろを見る。


 


中瀬を見る。


 


中瀬。


 


肩をすくめる。


 


知らなかった。


 


当然だった。


 


「なるほど……」


 


茜。


 


頷く。


 


少しだけ。


 


もう。


 


驚く基準が。


 


壊れ始めていた。


 


完全に。


 


その時――


 


つむぎ。


 


ぴたり。


 


止まる。


 


髪。


 


少し揺れる。


 


茶色のまま。


 


でも。


 


何かを聞いている顔だった。


 


じーっ。


 


森の奥。


 


見つめる。


 


「?」


 


茜。


 


不思議そう。


 


「どうしたの?」


 


つむぎ。


 


少し考える。


 


そして。


 


答えた。


 


「うさぎさんが」


 


「前に川があるって」


 


沈黙。


 


一秒。


 


二秒。


 


三秒。


 


高橋。


 


言う。


 


真顔で。


 


「もう地図いらないわね」


  


列。


 


進む。


 


ぞろぞろ。


 


疲れていた。


 


かなり。


 


暑かった。


 


もっと。


 


蚊もいた。


 


最悪だった。


 


ものすごく。


 


でも。


 


つむぎの情報だけは。


 


少し気になった。


 


前に川。


 


本当にあるのか。


 


誰も分からない。


 


だから。


 


歩く。


 


ただ歩く。


 


数分後――


 


茜。


 


ぴたり。


 


止まる。


 


まただった。


 


高橋。


 


反射的に止まる。


 


学習していた。


 


少しだけ。


 


「今度は何よ」


 


茜。


 


返事をしない。


 


じーっ。


 


前を見る。


 


ものすごく。


 


真剣。


 


藤原。


 


少し緊張する。


 


「まさか本当に熊……」


 


宮本。


 


不安そう。


 


「蛇とか……?」


 


田中。


 


カメラを構える。


 


なぜか。


 


準備だけは完璧だった。


 


つむぎ。


 


首を傾げる。


 


「?」


 


そして。


 


茜。


 


ゆっくり。


 


両腕を広げた。


 


まるで。


 


何かを迎えるみたいに。


 


大きく。


 


大げさに。


 


そして――


 


叫んだ。


 


「ついにぃぃぃぃぃぃ!!」


 


全員。


 


びくっ。


 


「美しいものがぁぁぁぁぁぁ!!」


 


「人生に意味を与えてくれるものがぁぁぁぁぁ!!」


 


藤原。


 


思わず言う。


 


「大げさですね」


 


でも。


 


少しだけ。


 


気持ちは分かった。


 


その先に――


 


あった。


 


川だった。


 


夏の光を受けて。


 


きらきら。


 


きらきら。


 


静かに流れている。


 


透明だった。


 


ものすごく。


 


風。


 


吹く。


 


水面。


 


揺れる。


 


森の緑。


 


映る。


 


一瞬。


 


誰も喋らなかった。


 


本当に。


 


誰も。


 


疲れ。


 


残っている。


 


蚊。


 


まだいる。


 


足も痛い。


 


暑い。


 


ものすごく。


 


でも。


 


その時だけは。


 


誰も文句を言わなかった。


 


高橋。


 


ぽつり。


 


呟く。


 


「……綺麗ね」


 


宮本。


 


頷く。


 


優しく。


 


「ええ」


 


田中。


 


静かにカメラを構える。


 


ぱしゃっ。


 


一枚。


 


撮った。


 


藤原。


 


少し笑う。


 


「ここまで来た価値はありましたね」


 


中瀬。


 


煙を吐く。


 


ゆっくり。


 


そして。


 


珍しく。


 


素直に言った。


 


「そうですね」


 


茜。


 


振り向く。


 


にやっ。


 


勝ち誇った顔。


 


ものすごく。


 


「ほらね!!」


 


「だから言ったじゃん!!」


 


誰も。


 


そんなことは言われていない。


 


でも。


 


今は誰も突っ込まなかった。


 


つむぎ。


 


川を見る。


 


きらきらした目で。


 


ものすごく。


 


そして。


 


小さく。


 


呟いた。


 


「綺麗……」


 


その声だけ。


 


少し違った。


 


いつもより静かで。


 


少しだけ。


 


大人びていて。


 


本当に。


 


そう思った声だった。


 


風が吹く。


 


川が流れる。


 


そして――


 


高橋が言った。


 


「ところで」


 


嫌な予感がした。


 


全員。


 


なんとなく。


 


「橋は?」


 


沈黙。


 


一秒。


 


二秒。


 


三秒。


 


みんな。


 


川を見る。


 


上流。


 


見る。


 


下流。


 


見る。


 


もう一回見る。


 


橋。


 


なかった。


 


どこにも。


 


まったく。


 


「……」


 


「……」


 


「……」


 


茜。


 


笑顔。


 


引きつる。


 


少しだけ。


 


いや。


 


かなり。


 


こうして――


 


新たな問題が発生した。


 


川は見つかった。


 


でも。


 


渡れない。


 


ものすごく。


 


次回。


 


橋はあるのか。


 


トイレはあるのか。


 


そもそも。


 


この遠足は成功するのか。


 


たぶんしない。


 


でも。


 


それはまた別のお話だった。





読んでいただきありがとうございます!♡


少しでも面白いと思っていただけましたら、


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