第12話 「お願いします」も言えるようになりたい!
【事件】はじめての自己紹介!?ツムギ、お年寄りたちとの“ほっこり初対面”が開幕!!
— 「よろしくお願いします。」
たった一言。
でも、それはツムギにとって大きな一歩だった。
初めてのお年寄りたちとの出会い。
照れ屋なおばあちゃん。
元お坊さんのおじいちゃん。
そして、相変わらず大騒ぎの明音。
髪の色は今日も自由奔放。
中瀬は今日も冷静。
ツムギは今日も一生懸命。
少しずつ広がっていく、
優しくて、あたたかい世界。
これは戦いの物語じゃない。
――"家族"が少しずつ増えていく日の物語。
明音。
元気いっぱい。
最初のおばあさんの前へ。
ぴたっ。
止まる。
「こちらは!」
「高橋千代子さんです!」
高橋。
ぱあっ。
笑顔。
両手。
ぶんぶん。
振る。
「こんにちは!」
「よろしくね!」
隠せない。
嬉しそう。
本当に。
会えて。
嬉しい。
そんな笑顔だった。
明音。
そのまま。
半円に並ぶ。
みんなの前を。
歩く。
「こちらは!」
「宮本鈴江さん!」
宮本。
少しだけ。
照れたように。
前を見る。
こういう紹介。
あまり。
慣れていない。
「鈴江さんはね!」
「すっっっごく器用なの!」
紬。
首を傾げる。
「器用?」
中瀬。
(確かに。)
(どういう意味だ。)
(才能がある人が。)
(なんでここに……。)
そんなこと。
考えていた。
宮本。
肩を。
小さくすくめる。
「もう……。」
「明音ちゃん。」
「そんなこと。」
「ないわよ……。」
顔。
少し赤い。
「あるよ!」
「この前!」
「鈴江さんが!」
「私に!」
「すっごく綺麗なじゅうたん作ってくれたんだから!」
明音。
目。
きらきら。
完全に。
じゅうたんへ。
恋していた。
中瀬。
(……。)
(じゅうたんに。)
(そこまで。)
紬。
明音の袖。
ちょん。
引っ張る。
「明音さん。」
「器用って。」
「なあに?」
中瀬。
説明しようと。
口を開く。
しかし。
「鈴江さんのこと!」
明音。
即答。
宮本。
さらに。
真っ赤。
「鈴江さんは。」
「器用?」
「そう!」
「鈴江さんは!」
「器用!」
「鈴江さん!」
「器用!」
「そう!」
「鈴江さん!」
「器用!」
「そう!!」
中瀬。
静かに。
床を見る。
宮本。
もう。
顔を。
上げられない。
「もう……。」
「やめて……。」
「もう!」
「やめてぇ……。」
宮本。
限界。
顔。
真っ赤。
思わず。
隣の壁へ。
ぺしっ。
――バキッ。
静寂。
中瀬。
壁を見る。
ひび。
手を見る。
宮本を見る。
もう一回。
壁を見る。
「……。」
「鈴江さん!」
「手!」
「大丈夫!?」
近くのおじいさん。
心配そう。
首を傾げる。
「鈴江さん!」
「気を付けないと!」
高橋。
慌てて。
椅子から。
立ち上がろうとする。
別のおばあさん。
もう。
立っていた。
「きゃあ!」
「すごい!」
「鈴江さん!」
宮本。
胸へ。
手を当てる。
壁を見る。
おろおろ。
「ご、ごめんなさい……。」
「また……。」
申し訳なさそう。
まるで。
大事件でも。
起こしたみたい。
「いやいや!」
「こんなの初めて見たよ!」
別のおばあさん。
楽しそう。
目。
きらきら。
「皆さん!」
「本当に。」
ごめんなさい!」
宮本。
ぺこぺこ。
頭を下げる。
すると。
いつの間にか。
みんな。
宮本の周りへ。
集まっていた。
「大丈夫。」
「大丈夫。」
「誰もケガしてないから。」
「壁なら。」
「直せるし!」
「そうそう!」
「気にしない!」
みんな。
笑っていた。
優しく。
自然に。
慰める。
そんな空気。
明音。
少し離れた場所。
ぽつん。
立っている。
「……。」
出番。
なかった。
その隙に。
高橋。
宮本へ。
そーっと。
近付く。
耳元。
ひそひそ。
「鈴江さん。」
「今よ。」
「え?」
「ほら。」
「あそこの。」
「背が高くて。」
「かっこいい人に……。」
「お姫様抱っこ。」
「お願いしちゃいなさい!」
「えぇぇ!?」
宮本。
大混乱。
その瞬間。
「もう。」
「大丈夫そうですね。」
すぐ横。
声。
いつの間にか。
おじいさん。
立っていた。
二人。
びくっ。
同時に。
肩。
跳ねる。
「…………。」
「…………。」
ばつが悪い。
顔。
そっくり。
おじいさん。
何も言わず。
くるり。
振り返る。
三人へ。
丁寧に。
一礼。
「田中源蔵です。」
穏やかな笑顔。
そして。
紬を見る。
「よろしくね。」
「紬ちゃん。」
紬。
にこっ。
満面の笑み。
その瞬間。
髪。
ふわっ。
鮮やかな。
緑色。
「み、緑!?」
明音。
今日。
初めて見た。
みたいな。
反応。
中瀬。
静かに。
ため息。
(いや。)
(もう見ただろ。)
明音。
慌てて。
紬の前へ。
ぴゅん。
「つ、紬ちゃん!!」
紬。
びくっ。
自分の髪を見る。
「ご、ごめんなさい!」
慌てる。
目をぎゅっと閉じる。
眉間。
ぎゅっ。
ほっぺ。
ぷくっ。
全力。
集中。
「ん~~~~っ!」
頑張る。
頑張る。
すごく。
頑張る。
でも。
髪。
緑。
そのまま。
高橋。
その様子を見て。
胸。
きゅん。
(あらぁ……。)
(一生懸命。)
(かわいいわねぇ。)
中瀬。
少しだけ。
様子を見る。
そして。
二人の方へ。
歩く。
「望月さん。」
「はい!」
「たぶん。」
「髪の色は。」
「紬ちゃん自身では。」
「変えられないんだと思います。」
「え?」
中瀬。
紬を見る。
まだ。
必死。
「紬ちゃん。」
肩を。
ぽん。
軽く叩く。
「もう。」
「大丈夫。」
「頑張らなくていいよ。」
紬。
ぱちっ。
目を開ける。
「……。」
力を抜く。
お年寄りたち。
緑色の髪を。
じっと見る。
不思議そう。
でも。
誰も。
怖がらない。
驚きながらも。
穏やかだった。
――その時。
「すごぉぉぉぉい!!」
一人のおばあさん。
勢いよく。
立ち上がる。
明音。
目を閉じる。
一瞬。
(……やっぱり。)
「藤原さん……。」
「すごいじゃない!」
八十八歳。
全力疾走。
紬へ。
一直線。
紬。
少しだけ。
後ずさる。
中瀬。
ぼそっ。
「八十八歳で。」
「走れる方が。」
「すごいです。」
藤原。
紬の髪へ。
そっと。
触れる。
「本物?」
「かつら?」
「それとも。」
「暑いと色が変わるの?」
「藤原さん。」
田中。
小さく。
咳払い。
「おっと!」
藤原。
ぴしっ。
姿勢を正す。
二歩。
下がる。
「失礼しました!」
「私は。」
「藤原佳代です!」
「紬ちゃん!」
「これからよろしくね!」
紬。
じーっ。
藤原を見る。
そして。
明音を見る。
また。
藤原を見る。
田中。
くすっと笑う。
「紬ちゃん。」
「ちゃんと。」
ごあいさつ。
覚えたいんだね。」
紬。
ぴくっ。
固まる。
(……。)
(どうして。)
(わかったの?)
一方。
明音。
頭の中。
大混乱。
(ま、まさか……。)
(田中さんも。)
(超常現象の人!?)
(それとも。)
(政府の監視員!?)
(ちゃんと任務を。)
(やってるか。)
(見に来たの!?)
(もし失敗したら。)
(お給料もらえな――)
中瀬。
(いや。)
(見てれば。)
(分かるだろ。)
心の中だけ。
つっこむ。
紬。
少しだけ。
緊張。
田中。
そんな様子を見て。
優しく笑う。
「そんなに。」
「緊張しなくて。」
「大丈夫だよ。」
「挨拶を。」
「覚えようとしてくれて。」
「嬉しいな。」
紬。
じっと。
話を聞く。
田中。
少しだけ。
前へ。
身をかがめる。
紬と。
目線を合わせる。
「例えばね。」
「お願いします。」
「とか。」
「これから。」
「よろしくお願いします。」
そう言って。
軽く。
おじぎ。
「相手を。」
「大切に思う気持ちだけ。」
「伝われば。」
「それで十分。」
紬。
目。
きらっ。
「わかった!」
そして。
ぴしっ。
勢いよく。
おじぎ。
深すぎた。
「よろしくお願いします!」
頭。
九十度。
いや。
もっと。
田中。
思わず。
もっと深く。
おじぎ。
返す。
お年寄りたち。
ぱちぱちぱち。
拍手。
笑顔。
いっぱい。
「えらいねぇ。」
「上手!」
「かわいい!」
紬。
ほっぺ。
ほんのり。
桃色。
照れる。
中瀬。
その様子を見て。
少しだけ。
笑った。
その頃。
中瀬。
一人だけ。
少し離れて座る。
老人に。
気付いていた。
入ってきた時から。
ずっと。
こちらを見ている。
静かに。
まっすぐ。
敵意はない。
でも。
目を逸らさない。
中瀬も。
見返す。
その時。
藤原。
こっそり。
耳打ち。
「佐伯さんを。」
「忘れちゃだめよ。」
まるで。
極秘情報。
田中。
「あっ。」
「そうだった。」
老人の方へ。
振り向く。
「こちらは。」
「佐伯宗一郎さん。」
「昔。」
「お坊さんだった方です。」
「しかも。」
「長い間。」
「沈黙の修行を。」
「続けていたんですよ。」
「お坊さん!?」
明音。
びっくり。
「えっ。」
「私。」
五年もここで働いてるのに。」
「初めて知った……。」
田中。
苦笑い。
「昔は。」
『手がかかるお坊さん』
なんて。」
「呼ばれていたそうですよ。」
明音。
佐伯を見る。
「……。」
「全然。」
「そんな風には。」
「見えないけど。」
ぼそっ。
「私のあだ名の方が。」
「まだマシかも。」
その頃。
紬。
もう。
佐伯の前。
ちょこん。
立っていた。
興味。
いっぱい。
「お坊さんって。」
「なあに?」
佐伯。
紬を見る。
優しい目。
何も。
言わない。
「佐伯さん。」
「お話ししないの?」
返事。
ない。
でも。
穏やか。
優しい。
「しゃべるの。」
「嫌い?」
やっぱり。
返事はない。
紬。
その場で。
考える。
そして。
ぴこん。
頭の中。
ひらめく。
(そうだ。)
(心を読めば。)
(分かる。)
一瞬。
嬉しくなる。
でも。
すぐ。
思い出す。
(だめ。)
(能力は。)
(使っちゃだめ。)
少し考える。
(でも。)
(今回は。)
(いいことのため。)
(だから……。)
首を振る。
(だめ。)
(でも。)
(お坊さんが。)
(何を考えてるのか。)
(気になる……。)
葛藤。
開始。
その瞬間。
髪。
ぱっ。
灰色。
また。
緑。
灰色。
緑。
ころころ。
色が変わる。
明音。
じーっ。
見つめる。
真面目な顔。
「……。」
「髪。」
「バグった?」
中瀬。
「違います。」
即答。
紬の隣へ。
しゃがむ。
優しく。
声をかける。
「紬ちゃん。」
紬。
はっ。
我に返る。
「佐伯さんを。」
「困らせちゃだめだよ。」
「ちゃんと。」
「相手を。」
「大事にしよう。」
紬。
少しだけ。
うつむく。
「……。」
そして。
こくん。
「うん。」
その時。
高橋。
ぱんっ。
膝を叩く。
笑顔。
満開。
「さて!」
「今日は!」
「何して遊ぶの?」
みんな。
一斉に。
明音を見る。
中瀬も。
つられて。
見る。
(……。)
(パズルでも。)
(するのかと思ってた。)
(でも。)
(それだけでも。)
十分賑やかだな。)
明音。
口を開く。
しかし。
「明音ちゃんが!」
「遊びに来てくれる日は!」
藤原。
待ちきれない。
「本当に!」
「楽しみなのよ!」
「そうそう!」
「この前なんて!」
「みんなで!」
「釣りに行ったでしょう!」
「あぁ!」
「あの時ね!」
「明音ちゃん!」
「川に落ちちゃって!」
「それで!」
「佳代さんまで!」
「飛び込んだのよ!」
「助けようと思って!」
「だって!」
「私はスパイだから!」
藤原。
胸を張る。
得意そう。
「でも。」
田中。
静かに。
付け足す。
「あの川。」
「六十センチしか。」
「なかったよね。」
静寂。
一秒。
そして――
わっはっはっはっ!!
大笑い。
部屋中。
笑い声。
いっぱい。
中瀬。
明音を見る。
明音。
天井を見る。
見なかったことにしたい。
紬。
真剣。
考える。
(六十センチで。)
(溺れるんだ……。)
どうやら。
信じた。
「えへん!」
藤原。
咳払い。
もう一度。
胸を張る。
「私は!」
「スパイですから!」
「そこは!」
「大事なの!」
中瀬。
(いや。)
(全然。)
(大事じゃない。)
心の中だけ。
つっこむ。
高橋。
もう一度。
みんなを見る。
期待。
いっぱい。
「それで!」
「今日は!」
「何して遊ぶ?」
読んでいただき、本当にありがとうございます~!!♡♡
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また次回もよろしくお願いします~!!♡♡




