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タイムリミット


 僕達は二手に分かれることにした。

 遺跡の調査班とカリムの説得班。


 僕、ソフィア、ゼナの三人は遺跡の奥へ進んだ。


 一方、ナディア、ヴェイン、ジャミルはカリムの屋敷へ向かった。


 「ヴェインさん、カリムが暴れても対処できますか」と出発前に確認した。


 「問題ない」というヴェインの返答だった。


 「暑い以外は」


 「……暑い以外は」


 「よろしくお願いします」



 遺跡の奥は涼しかった。


 「助かります、デュフフ」とソフィアが言った。


 「外より元気そうですね」


 「デュフフ、涼しいと動けます」


 「じゃあ調査の間はここにいましょう」


 「デュフ、賛成です」


 奥まで進んだ。


 自爆装置の前に立った。


 センサーが情報を流していた。


 ルカに通信を入れた。


 「解析をお願いします。データを送ります」


 「待っていたのだ」ルカがデータを受信しつつ答えた。


 しばらく沈黙があった。


 ルカが「……これは」と言った。


 「何かわかりましたか」


 「軍事用の自爆装置なのだ。古代の設計だが、精巧なのだ」


 「規模は」


 「計算中なのだ。少し待つのだ」


 その時。


 ゼナが「死にやすいセンサーが警戒装置に反応してる」と言った。


 「近づいてきてる」


 「まだここには来ませんか?」


 「今はね。でもだんだん速くなってる気がする」


 「時間がないですね」


 通信が再び繋がった。


 「ルカさん、解析結果は」


 「……街が吹っ飛ぶのだ」とルカが言った。


 全員が固まった。


 「もう一回言ってください」


 「街が丸ごと吹っ飛ぶのだ。それくらいの規模なのだ」


 「……残り時間は」


 「十二時間ほどなのだ」


 「十二時間」


 「急ぐのだ」


 ゼナが「死にやすいよ!! 物理的に!!」と叫んだ。


 「そうですね」


 「いつものやつじゃないよ!! 本当に死ぬよ!!」


 「わかっています。なんとかします」


 「根拠は」


 「……今から考えます」


 「根拠ないじゃん!!」


 ナディアたちへの通信を入れた。


 「聞こえますか」


 「聞こえる」とジャミルが言った。


 「今カリムと話してる最中だ」


 「爆発は街が吹っ飛ぶ規模です。残り十二時間です」


 少し間があった。


 「……マジか」


 時間が惜しい。

 四の五の言ってる暇はない。


 「……今から行きます」


 「え、来るのか」


 「直接伝えた方が早いです」


 カリムの屋敷へ急ぐ。

 遺跡からソフィアとゼナを抱えて一気に跳躍する。


 客間に飛び込むとカリムがいた。


 ナディアとジャミルが向かいに座っていた。

 ヴェインはその脇の壁際に立っていた。


 「おお、ソータか」とカリムが言った。


 「話は聞いてるで。遺跡が誤作動してるんやろ。まあ、遺跡が少し吹っ飛ぶくらいやないか。こっちには関係ないわ」


 「街が吹っ飛びます」


 カリムが「は?」と間の抜けた声を上げた。


 「残り十二時間で、この街全体が爆発します」


 「……なんやて」


 「軍事用の自爆装置です。制御装置が外れた時点でカウントダウンが始まっています」


 カリムの顔が変わった。


 「……そんなもん、ワシは聞いてへんぞ」


 「誰も気づかなかったんでしょう。でも現実です」


 「止める方法は」


 「制御装置の部品が必要です。カリムさんが持っていますよね?」


 「……」


 カリムがしばらく沈黙した。


 「あの部品、かなり高値で売れる素材が入っとったんや。それを返せと」


 「返してもらえれば、止められる可能性があります」


 「可能性?」


 「確実ではありません。でも今のままでは確実に爆発します」


 カリムがしばらく考えていた。


 ジャミルが「カリム、お前の商会もこの街にあるだろ。吹っ飛んだら終わりだぞ」と睨んだ。


 カリムが舌打ちをした。


 「……わかったわ。部品を返したる。でも」


 「でも」


 「これは貸しやからな。後で頼みを聞いてもらうで」


 「内容によります」


 「ははは、堅いのぉ」


 カリムが立ち上がろうとした。


 その時だった。


 「……でもな」


 「でも?」


 「ワシ、少し用事があってな」


 カリムが「ちょっと待っててくれるか」と言って席を外した。


 ジャミルが「あいつ、逃げるぞ」と小声で言った。


 「わかっています」と僕が言った。


 「止めないのか」


 「ヴェインさん」


 「わかった」とヴェインが言った。


 裏口に向かった。


 少しして、ドタバタと音がした。


 ヴェインがカリムの首根っこを掴んで戻ってきた。


 カリムが「はなさんかい!」と言った。


 「部品の場所を教えてください」とソータが言った。


 「……わかったわかった。金庫の中や」


 部品を受け取った。


 ルカに通信した。


 「部品が手に入りました」


 「急いで元の場所へ戻すのだ」とルカが言った。



 そのままゼナと手を繋いだヴェインとソフィアを抱えて遺跡の自爆装置前まで跳躍でとんぼ返りして、部品を元の場所へ取り付けた。


 「どうですか!?ルカさん!」


 「……止まらないのだ」


 「何がですか」


 「部品が戻っても、カウントダウンが止まらないのだ」


 全員が固まった。


 「なぜですか」


 「損傷があるのだ。分解の時に傷がついて、完全には機能してないのだ」


 何か別の方法で止めなくてはならないということか。

 何かないか……何か。


 「そうだ!」と僕は思いついた。


 「電磁パルス!」


 北方で大活躍した、あの装置を使えば全ての電子回路を停止させて爆発を止めることができる。


 「使えるの!?」とゼナが言った。


 「今回は持ってきてなかったぁ~!」


 頭を抱えた。

 準備しておけばよかった……


 「ダメじゃん!!」とゼナが言った。


 「次からは持ってきます」


 「ここで死んだら次はないよ!?」


 「……ルカさん、他に方法はありますか」


 「サンプルの素材を使えばあるいは、なのだ」


 「例の未知の素材ですか」


 「分析が終わったのだ。あの素材はナノマシンの働きを増幅させる性質があるのだ」


 「増幅、ですか」


 「そうなのだ。自爆装置はナノマシン制御で動いている。あの素材を使ってナノマシンの出力を最大まで増幅させた上で、奇蹟で全回路を焼き切れば止められる可能性があるのだ」

 

 「ソフィアさんの雷の奇蹟で」


 「そうなのだ。ただし」


 「ただし」


 「相当な出力が必要なのだ。通常の奇蹟では足りないのだ」


 全員がソフィアを見た。


 ソフィアが「デュフフ」と言った。


 「できますか、ソフィアさん」


 「暑い外よりここの方が涼しいです、デュフフ」


 「それは答えですか」


 「やります、デュフフ」


 「どうか、力を貸してください」


 僕は頭を下げた。


 「……ソータさん。いつも助けられてきたのは私の方です」


 ソフィアは笑顔だった。

 命の危機が迫っているにも関わらず。


 「私が止めないと街が吹っ飛びますよね」


 「はい」


 「それは死にやすいですよね。物理的に」


 「そうですね」


 「今度は私が貴方を助けます」


 いつの間にかデュフフがなくなっていた。

 目が真剣だった。


 準備を始めた。

 素材をどう使うかをルカが指示した。


 「装置の中枢部分に素材を接触させるのだ。そこで奇蹟を使えば増幅されるのだ」


 「場所はわかりますか」


 「センサーで確認するのだ」


 センサーが中枢部分を示した。


 「ここですね」


 「そうなのだ。急ぐのだ。残り時間が」


 「わかっています」


 ゼナが「警戒装置がまた動き出した」と言った。


 「近づいてくる」


 「対処をお願いします」


 「わかった。ヴェイン、いける?」


 ヴェインが「問題ない」と言った。


 「暑い以外は」


 「外じゃないから暑くないよ」


 「……問題ない」


 ヴェインとゼナが警戒装置の相手をし始めた。


 素材を中枢部分に接触させた。


 「ソフィアさん、いつでも」


 ソフィアは目を瞑って意識を集中し始めた。


 「いきます」


 声と共にソフィアの目が開き雷の奇蹟が発動する。


 雷が走った。

 素材を通じて、出力が増幅された。

 通常よりはるかに強い雷が、回路を走った。


 「全部焼き切るのだ!」とルカが叫んだ。


 雷が広がった。

 回路が焼けていく音がした。


 カウントダウンが止まった。

 静寂が落ちた。


 「……止まりましたね」


 「止まったのだ」とルカが言った。


 「成功なのだ」


 ソフィアが「デュフフ……」と言って座り込んだ。


 「ソフィアさん!」


 「大丈夫です……デュフフ……」


 「大丈夫ですか」


 「デュフフ……が出てるので……大丈夫です……」


 「デュフフが出ていれば大丈夫なんでしたね」


 「……目安です……デュフフ……」


 ヴェインが無言で水を差し出した。


 「……ありがとうございます……デュフフ」


 ゼナが「終わった?」と聞いてきた。


 「終わりました」


 「死にやすかったよ!! 本当に死にやすかったよ!!」


 「物理的にも」


 「精神的にも!!」

  


 その後カリムの屋敷へと報告に戻った。


 ジャミルが「はー……生きた心地がしなかったな」と言った。


 カリムが「……ほんまに止まったんか」と言った。


 「止まりました」


 「……そうか」


 「部品は返したった。貸し一つやからな」


 「こちらも貸しが一つ、です」


 「ははは、言うやんか。兄ちゃん」


 虚勢を張ってはいるが。さっきより力がない笑顔だった。


 ナディアが「……よかったです」と言った。


 小さな声だった。


 「ナディアさんのおかげです」と僕は言った。


 「わたしは何も」


 「僕達を呼んでくれましたよね」


 「……それだけです」


 「それで十分です」


 屋敷の外に出た。

 空が暗くなっていた。


 「今日も、なんとかなったね」とゼナが言った。


 「なんとかなりましたね」


 「死にやすかったけど」


 ソフィアが「デュフフ……でも止まりました」と言った。


 「止まりましたね」


 「デュフフ、頑張りました」


 「頑張りましたね」


 「デュフフ……ありがとうございます、ソータさん」


 「こちらこそです」


 ジャミルが「お前たち、ほんとに面白いな」と言った。


 「そうですか」


 「そうだよ。また一緒に仕事したいな」


 「機会があれば」


 「あるといいな」


 ヴェインが「……問題なかった」と言った。


 「今日は問題ありましたよね」


 「……解決した」


 今日も、なんとかなったことだし――


 明日も、なんとかできるはずだ。



ここまでお読み頂きありがとうございます!


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作者のモチベーションにつながります。


次回も見て頂けると嬉しいです!


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