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過労死した最強の元勇者さんの学院生活 〜勇者とか魔王とかどうでもいいので学院でスローライフ送りたいと思います〜  作者: ガスト君!


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2/4

未定

王都の中心に聳え立つ巨大な学び舎――『超英雄育成高等学院』。

 ここは剣と魔法の極致を求め、次世代の「英雄」を創り出すために設立された、国で最も権威ある教育機関だ。

志願者は毎年、全国から集まる約130万人。

しかし、その厳しい門をくぐり抜けることが許されるのは、わずか100人。

 

合格者の九割は実力者からの推薦で埋まり、一般入試合格という「奇跡」を掴み取れるのは、残り一割。文字通り、選ばれし天才たちの集積所である。


学院は…というより世界は、徹底した『実力主義』なのである。

 

 三ヶ月に一度、魔術や剣技の精度を競う『特別技能試験』。

 六ヶ月に一度、魔物や生徒同士で刃を交える『特別実戦試験』。


 一年、七二〇日(全二四ヶ月)という長い月日のすべてが、これら試験のスコアで評価される。


 その頂点に立つのは、選りすぐりのエリート集団『生徒会』。

 そこに入り無事に卒業できれば、輝かしい地位と名声が約束されている。

 生徒たちは皆、その栄光を掴むために心血を注いでいるのだが……。


「……地位も名誉も、お腹は膨らまないんだよなぁ」


 最低評価の『Fクラス』で、レヴィはぼんやりと窓の外を眺めていた。


何故彼がFクラスにいるのか。

まずその経緯から説明しよう。


〜〜〜 


 時は遡り、数時間前。


「はぁ……。無理やり学院に入れられるなんて、とんだ災難だよ」


 レヴィはぶつぶつと愚痴をこぼしながら、学院の正門前に立っていた。 

 見上げるほど巨大な門は、語彙力が消え去るレベルで大きかった。


「えっぐ……。門だけでこれかよ」


 視線の先には、もはや一つの街と言ってもいい巨大な校舎がそびえ立っている。


「こんなところで生活しなきゃいけないのか……」


 溜息を吐き出した、その時だった。


「こんにちは!」


 元気だが、どこか育ちの良さを感じさせる凛とした声が響く。

 振り返ると、そこには青髪ロングの髪をなびかせ、片側におさげを作った美少女が立っていた。


「あれ? どっかで会ったっけ――あぁ、そっか。あんたがルシオンの娘さんね」


 レヴィの言葉に、少女はパッと表情を輝かせた。


「はいっ! 先日はお救いいただきありがとうございました。フェリス・アークライトと申します!」


 彼女が名乗った瞬間、周囲がにわかにざわつき始める。


『おい、あの子……アークライト家のご令嬢じゃないか?』


『隣のやる気なさそうな男は誰だ?』


『やべぇ美人すぎる。目の保養だわ……』


 …何か関係のない声も混じっていた気がするがまあいいか。

どうやらアークライト家はこの世界では相当有名らしい。


「父様からお話は伺っております。私の護衛をしてくださるのですよね! これからよろしくお願いします」


「ああ、よろしく」


 レヴィが手を差し出すと、フェリスは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに嬉しそうにその手を握り返した。


 ――そう。ここまでは、まだ良かった。


 問題は、門をくぐった先にある『合格者掲示板』を見た時だ。


「「え!?」」


 二人の声が重なる。


 推薦合格者一覧の最上段――特待生クラス『A』に、フェリス・アークライトの名があった。


 そして。


 推薦合格者一覧のどん底――最低辺クラス『F』に、レヴィの名が刻まれていた。


「マジか……」


 レヴィが呆然と呟く。


 フェリスの目から見れば、レヴィは自分より遥かに格上の存在だ。レヴィ自身も、隣の少女との実力差は把握している。それなのに、評価は真逆。


「な、納得がいきません! 管理者…というか父様に問い合わせてきます!」


 眉間にシワを寄せて怒るフェリスを、レヴィはひらひらと手で制した。


「いいって。目立つのはごめんだし、Fクラスはちょうどいいさ」


「……本気で言っているのですか?」


 信じられないといった顔のフェリスを置いて、レヴィは「パフェ、パフェ……」と独り言を漏らしながら校舎へと歩き出す。



 納得はいかない様子だが、フェリスも慌ててその後を追った。


〜〜〜


「……本当に、これで良いのですか、レヴィさん」


 校舎へと続く廊下を歩きながら、フェリスは何度も、何度も同じ問いを繰り返していた。


 掲示板に刻まれた『F』の一文字。それはこの学院において、卒業までの数年間、人間以下…まではいかないだろうが、不遇な扱いを受けることを約束されたも同義だ。


 だが、前を行く銀髪の少年――レヴィは、振り返りもせずにひらひらと手を振る。


「いいって。むしろ最高だよ。あの日ルシオンの親父さんに捕まった時はどうなるかと思ったけど……神様はまだ、俺を見捨ててなかったみたいだ」


「神様……? もし仮にいるとしたら疫病神の様な物な気がするのですが…」


 フェリスの至極真っ当なツッコミも、今のレヴィの耳には届かない。


 彼の脳内では今、完璧なスローライフの建設計画が爆速で進行していた。


(――考えてもみろ。Aクラスなんて選ばれたら、毎日のように英雄としての心構えを説かれ、放課後までみっちり特訓だ。だが、Fクラスはどうだ?)



 レヴィの口角が、不気味なほど緩やかに吊り上がる。


(教師も期待してない、生徒も見向きもしない。……つまり、授業中に寝ていようが、隠れてパフェを自作していようが、誰も文句を言わない自由の楽園。そこが、Fクラスなんだ!)


「ふふ、ふふふ……。パフェ、昼寝、パフェ、昼寝……」


「……レヴィさん、目が。目が怖いです」


 ドン引きして距離を置くフェリスに気づくこともなく、レヴィは勇者時代には一度も見せなかったような真剣な眼差しで、学院本棟を見据えた。


 後に、この学院の…いや、世界の歴史を根本から塗り替えることになる『史上最強の魔剣使い』。


 その伝説の第一歩が、まさか「サボるため」という極めて不純な動機から始まったことを、この時のフェリスは――そして世界の誰もが、知る由もなかった。

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