↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人を模した君へ 〜未登録の十七歳〜  作者: ユノ・サカリス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/18

第15話《未知の存在》

――土曜日。


早朝、インターホンが鳴る。


「蓮くん来た」


「あー眠い。もーあんた夜通し話すからあまり寝られなかった。よし、行こうか」


ドアを開けると、蓮も眠そうに目を擦っていた。


「行こうぜ!」


三人は車に乗り込み、蓮が走らせる。

後部座席の優希は、頬を軽く膨らませて、また怒っている。


「優希、特等席取られて怒ってる」


美悠は静かに笑いを堪える。


やがて車はコンビニに着く。


「よし。朝ごはん、朝ごはん。優希は何食べたい?」


「甘いの希望」


蓮がなだめるように言う。


「店内には監視カメラがある。優希すまない。車で待っててくれ」


「わかった」


美悠がドアノブに手をかけ、振り返る。


「じゃあ、帰りはあんたが特等席ね」


優希の目がキラリと輝いた。


コンビニに入る二人を、優希は車の中から眺めていた。


そのとき、パトカーが車の後ろを通り過ぎた。

が、また引き返してくる。


そして警官と目が合った。


その瞬間、優希は反射的に身体を隠した。


「警察。拘束の可能性。心拍数上昇」


身体が震えている。


「これ……怖い?」


思考より先に、身体が怯えているのが分かる。

美悠と蓮がまだ帰ってこない時間の“孤独”。


次の瞬間、コンコン、と窓を叩く音。

優希はゆっくり振り返る。


そこには警官が二人、立っていた。


「すみません。さっき目が合ったとき隠れるのを見てしまったもので……どうかされましたか?」


優希は対応の仕方が分からず、ただ目を見開き、警官を見つめることしかできなかった。

握り締めた拳が震え、背筋に冷たい何かが流れる。


「この子……何かおかしいな。怯えてる?」


男性警官が隣の警官に話しかける。

もう一人の女性警官がスマホを片手に何かを調べる。


その指先が止まり、顔色が変わる。


「……似てます」


男性警官がスマホを覗き込む。


「ん? 例の件の個体と?」


「この子……BCHです!」


窓越しの叫び声に、優希の心臓が一度跳ね上がる。


買い物を終え、コンビニから出てきた美悠の足が止まる。


「蓮……。あれ……警察」


車を見た瞬間、買い物袋が蓮の指を抜け、地面へと落ちる。

蓮の足も震えていた。

声を絞り出す。


「どうするよ……。ヤバいぞこれ」


次の瞬間、美悠は車へと走り出していた。


「――美悠!」


息を切らし、警官の前に立つ。


「あの……何か」


「君は?」


「……友達です。この子……何もしていません」


その間にも、女性警官は無線で応援要請をする。

蓮も車へと戻るが、顔は完全に青ざめていた。


優希は車の中からこちらを眺め、瞳孔が震えている。


「逃走経路、なし……」


ドアノブに触れたまま、動けない。


女性警官の手が、わずかに震えながら腰のホルスターに触れた。


「動かないでください!」


その声は強いが、わずかに裏返っていた。


優希はゆっくりと視線を上げる。


「私は、攻撃しない」


言葉は出た。

けれど、身体が言うことをきかない。


ドアがわずかに開く。


その瞬間、女性警官が一歩後ずさる。


「手を見せて! ゆっくり!」


反射的に拳銃が抜かれた。

金属の光が、朝の空気を裂く。


「下げろ! 撃つな!」


男性警官が制止する。

だが銃口は優希を捉えたままだった。


周囲の視線が一斉に集まる。


「何? 何かあったの?」


コンビニから出てきた客がスマートフォンを向ける。

画面越しに、少女と銃口が並ぶ。


優希の耳鳴りが強くなる。


「これは……排除の姿勢」


胸が締めつけられる。


「私は、怖がられている」


その理解が、ゆっくりと沈んでいく。


美悠が優希の前に立つ。


「やめてください! 本当に何もしてないんです!」


蓮も声を上げる。


「ただ海に行くだけだろ!」


無線の音が重なる。


『応援、至急お願いします。BCH疑い個体を確認』


遠くでサイレンが鳴る。


優希は一歩、車の外へ出た。


その動きに、女性警官の肩が大きく跳ねる。


「動くな!」


銃口がわずかに揺れる。


美悠の声が震える。


「優希、出なくていい!」


だが優希は、ゆっくり両手を上げた。


「従う。抵抗、しない」


その声は静かだった。


周囲のざわめきが大きくなる。


「例のニュースの子じゃない?」

「やば、撮れてる?」


スマホの光が、いくつも向けられる。


優希の視界が狭くなる。


「呼吸、浅い」


それでも、目は美悠を探していた。


「選択……困難」


応援のパトカーが到着する。

車列が増え、空気が一変する。


優希を取り囲む視線。

恐怖。好奇心。警戒。

そのすべてが、優希に向けられている。


未知の存在――それが、いまの自分。


美悠が叫ぶ。


「この子は人です!」


誰に向けたのかも分からない。


優希は、その言葉を聞いた。

胸の奥が、わずかに温かくなる。


だが銃口は、まだ下がらない。


サイレンが、朝の空を裂いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。