戦に備えて
「ただいま戻りました」
拠点の中心には長方形の机があり、上に敷かれた
地図を左右に囲んでおよそ10人もの男性が議論を交わしていた。
そして一矢たちの対面、一番奥にはおそらく大将であろう
井伊直政の姿があったが暗くてよく顔は見えなかった。
「光義か。 ご苦労であった
皆、光義の報告を聞こう」
直政の言葉に議論の声がピタリと止み
全員の視線がこちらに向けられた。
明らかに全員光義より強いことが見てわかる。
戦を控えた男たちの眼光は鋭く味方であっても
その威圧感に委縮してしまいそうになる存在感であった。
「では報告させていただきます
浜名郡の豪族、大河内氏、久野氏から各300、堀越氏、浜名氏から各200
そして元遠江守の斯波氏から約1千の援軍を約束いただきました
これで総力7千となりましょう」
光義の報告に直政らは満足そうな顔をした。
「よくやってくれた光義
だが実は援軍はそれだけじゃない三河国の
松平氏も加わりその数1500
我らは8500もの兵で迎え撃つことができる」
直政の言葉に光義も笑みを見せた。
「して、、光義
隣の者は誰だ?」
直政の口調が少し厳しくなり視線が一矢に向けられると同時に
同時に周りの男たちの視線も向けられた。
「はい、この者は岩森一矢
浜名郡で殺されそうなところを助け我が軍にと連れてまいりました
俺と同じ転生者でそのモデルは石川五右衛門です」
光義の言葉に直政含む二人が驚き他はきょとんとしている者で別れた。
おそらく今の年代に石川五右衛門はまだ表に出てきていないからであろう
直政ともう一人は転生者、他の者はこの世界の人間だろう。
「岩森一矢です
まだレベルは低いですけどウォーステはそれなりにやっていたので
少しは役に立つと思います」
直政は立ち上がると一矢の前まで歩いてきた。
目の前まで来ると顔がはっきり見えて、史実通りの
美青年だという事が分かる。
「一矢っていうのか!俺は井伊直政、本名は高橋ってんだけど
まぉここでは本名はどうでもいいか
モデルが石川五右衛門ってのは残念だけど俺たちの軍に歓迎するよ」
大体年齢は10代半ばに見えるが大将としての
器が大きいのはなんとなくわかった一矢であった。
「光義!戦まで大体1か月
これから練兵を主にする、一矢も調略なら活躍できるかもしれない
手伝ってくれ」
「わかりました
では失礼します、一矢行こう」
直政の指示に光義は了承すると一矢を連れその場を後にした。
拠点を出た一矢は光義に連れられ村はずれの森にやってきていた。
「一矢、まずは任務をこなしてレベルを上げよう
そして自分のスキルを使いこなせるようになる
ひとまずは20レべを目標にしよう
俺は30レベルを目標にする」
「って言っても俺って戦闘スキルじゃないから中々レベル上げ難しいよな
パッシブスキルの効果も俊敏性の上昇っていまいちだし」
「ハハッ!まぁ地道にやっていくしかないよ
それに直政様も戦闘じゃなくて調略の方に期待していたみたいだし
やらなきゃやられる・・・この世界では強くいなければいけない」
「そうだな!レベルを上げればスキルも進化するかもしれないし頑張るよ!」
光義の言葉に決心した一矢は覚悟を決めた。
それからというもの
一矢と光義は対人模擬訓練、任務を繰り返していき着実にレベルを上げていった。
2週間がたち訓練と任務を繰り返していくことによって、
石川五右衛門のスキルについて分かったことがある。
まずは
アクティブ【盗賊の首長】
効果は手に触れたものの所有権を自分に変える
通常他のプレイヤーやこの世界の人間はドロップアイテムや商店で
アイテムを手に入れることができるが
プレイヤーが持つ固有装備や所有物は仮に盗もうとしてもシステムが反応し
元の所有者に戻って行ってしまう。
だが石川五右衛門のスキルを使えばシステムの反応を無視し
自分の固有装備にできることができる。
吉津村の任務で盗人の包丁を手に入れることができたのは
スキルが発動していたのが原因であった。
そして
パッシブ【抜忍の弟子】
効果は俊敏性の上昇
これは一矢にとってうれしい誤算であった
単純に動きの速度が速くなるだけではなく、
いわゆるパルクールの要素で動くことができ
高い木の上や、建物の屋根などに容易に移動することができる。
また忍者の様な隠密行動も得意になり、潜入、暗殺など
直政が言った通り調略活動にもってこいのスキルであった。
そして3週間が経とうとするころ
一矢はレベル18、光義はレベル27にまで上昇していて
ある任務に挑んでいた。
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★任務 山賊団の殲滅(推奨レベル20)
内容:山賊の15人の全滅
報酬:200文
説明:城東郡一の山賊 太蔵含む15人を倒せ。
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この任務である事件は起こった。
※浜名郡の豪族
大河内氏、久野氏、堀越氏、浜名氏
豪族とは地方で土地や財産、私兵を持ち、地域的支配権を持った有力な一族
※遠江守
遠江国を管轄した日本の官職・武家の称号で、
平安時代以降の地方行政や戦国時代の武将に用いられた称号
※三河国
現在の愛知県東半部
※松平氏
室町時代に三河国加茂郡松平郷(愛知県豊田市松平町)に興った小豪族




