家臣の異変
「これくらいでもういいだろう
別に俺の家臣でもないし認めてほしいとも思ってない
ただ戦を滞りなく進めるために指示にだけ従ってくれればいい」
一矢は一益に語り掛けた。
「いや、認めざるを得ん
石川五右衛門というその非戦闘モデルでこの強さ
更に弓の大島光義に幻覚を見せるあの明智光秀のモデルもある・・・
我々三人を相手にしてもその余裕
この滝川一益!今回の戦に限りあなた様を総大将として認め
全面的に従いまする!」
一益はあぐらの状態から両こぶしを地面に付き頭を下げた。
「俺もっす!この戦が終わったら是非修行に付き合ってほしいっす!」
「・・・俺も」
一益に続きいつの間にか意識を取り戻していた利家と長可も
頭を下げてきた。
「ああ、こちらこそよろしく頼むよ」
三人の誠意を感じた一矢は少し表情が緩み
三人に対して頭を下げた。
こうして対伊達北条の曲者揃いの部隊長三人を従えた一矢は
家康、信盛、そして対武田上杉軍と連携しつつ戦の準備を進めるのであった。
そして時は流れ1か月後
家康の元に半蔵が現れた。
伊達政宗が戦の準備を進めている
狙いは常陸の佐竹氏第18代目大名 佐竹 義重
義重は知勇に優れ「鬼義重」の異名を持つ。
史実であれば大名として北条家と何度も戦い関東の覇権を争っていたが
この世界では義重も北条氏康も共に転生しており
北条家の圧倒的武力により降伏し傘下に降っていた。
しかしその実力は確かなもので伊達軍VS北条軍との戦いでは前線で義重自ら戦い
伊達軍の侵攻を阻止する働きを見せていた。
伊達政宗はそんな義重を軽視することができず
北条攻めの前に佐竹家を各個撃破する方針に変更した。
今回伊達政宗は義重の本城太田城を目掛けて常陸国の北側
陸奥国現在の福島県側から南下する模様。
その一方で下野国(現在の栃木県)では伊達軍と北条軍が前線で睨み合い
膠着状態であったため佐竹軍への北条の援軍はあまり期待できないでいた。
「逆にチャンス・・・だよな」
家康はそう考えた。
今北条は兵力不足に陥っている更に背後の織田家への警戒も
怠るわけにはいかない。
その織田家から援護を申し出れば二つ返事で了承するはずだと。
「早速一矢殿に報告し北条へ使者を送ろう
半蔵頼んでいいか?」
「はっ、承知」
半蔵が家康の元からいなくなったと同時に忠次が家康の元を訪れた。
「家康様、少々よろしいでしょうか」
「忠次か、どうかしたか」
「このまま織田に従う形でよろしいのですか
今回の作戦がうまくいったら東日本は全て織田の支配下になり
その時点で織田に勝る勢力はいなくなります
家康様が天下を治める機会がなくなってしまいます」
忠次の心配に家康は軽く笑い飛ばした。
「何を言う忠次、いつからそんな戦国武将みたいになったんだ
別に俺は天下統一を夢見てるわけではない
ただ俺の仲間が安心して生きていける世の中になるのであれば
誰が天下を治めようとどうでもいいことだ」
「そうでしたか、何か近頃前の世界での記憶が薄れてきているような感じがします
この世界に慣れてしまったせいなのでしょうか」
「きっとそうだな
この世界では毎日生きるだけで精いっぱいだから」
「ただそれだけならいいのですが・・・
自分が徐々に本当の酒井忠次になっていっているのではないかと
最近思います」
「考えすぎだ、今日はもうゆっくり休め
伊達との戦も近いからな」
「はい、お忙しい所失礼しました
では私はこれにて」
そう言うと忠次は思い悩むような顔をしてその場を去っていった。
忠次が部屋を出てから家康も同様に考え込む。
「忠次だけじゃない
近頃、数正も忠勝も前の世界の記憶が
所々思い出せないと言っていた
転生してから長いことこの戦国時代に生きている者は、
前の記憶を失くすようにできているのか」
しかし家康はまだ自分が佐々木純平だったころの記憶ははっきりと覚えている。
「レベルが関係しているのか、転生してからの期間が関係しているのか
それともただの気のせいなのか・・・」
そもそも前の世界で死んだ者がなぜこの戦国時代に転生してきたのか
それもVRゲーム「Warring States」の設定も加えられている。
誰かの陰謀なのか。
家康の中で答えが出ることはなかった。




