順応
「石川・・五右衛門・・」
一矢は自分のステータスに表示されたモデル武将を目にし肩を落とした。
「あちゃー、よりによってまさかの五右衛門か
ハズレだね」
光義も同情の声をかける。
ウォーステでの石川五右衛門はレベルを上げても戦闘能力の数値が
高くならず、アクティブスキルに至ってはただ物を盗めるだけであるため
戦闘中や相手拠点からアイテムを盗むだけになるという
ウォーステ内でのハズレキャラの一人。
通常なら誰しも選ばないのだが転生した一矢にとっては
勝手に定められたモデルでありこの先生きていくのに死活問題であった。
「なんで五右衛門なんだ、徳川四天王の本田忠勝とか井伊直政とか
強いのがよかったのに!
物盗むだけって俺に死ねって言ってるようなもんじゃないか」
わかりやすく落ち込む一矢をよそに光義は
手を顎に当てて考え込む。
「でも、本来なら一矢の名前も石川五右衛門になるはずだよね
なのに一矢が言うにはステータス上には一矢の
名前とモデル五右衛門の文字がある
ここだけはウォーステと違うし
この世界に来てからそんな話は一度も聞いてない
何かバグが起きているのかそれとも・・・」
「ただバグで俺の名前も表示されているだけだよ
弱いことは変わらないよ」
一矢は光義の言葉を遮るように言い放った。
「んーそうだね
そしたらとりあえずレベルでも上げに行く?
簡単な任務とかで経験値とお金を稼ぎにでも行こう」
「そうだな
レベルも資金も高いに越したことはないし」
光義の提案に乗った一矢は水を飲み干した。
「じゃあ行こう! 場所は吉津村だ」
光義の家を後にした二人は近くにある吉津村へ赴いた。
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★任務 吉津村の平穏(推奨レベル3)
内容:盗人の撃破
報酬:10文
説明:吉津村に度々現れる盗人を退治せよ
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「本当にウォーステそのままなんだな」
通知画面に表示された任務内容を見て一矢は感心していた。
「任務を受けるとその任務自体にプレイヤーは関係してこないから
最初のチュートリアルとしては最適だよね
でもたまに悪質なプレイヤーもいてわざと邪魔してきたり
任務中の戦闘で手に入るレアアイテムとかを横取りしてくる人もいる」
「そうなのか・・・
ウォーステやってる時もそんなのがいたなぁ」
「あっ吉津村が見えてきたよ」
数十分歩いていると吉津村の入口が見えてきた
村といってもゲームの世界と同じなのでどの村も大して変わりない。
村自体のゲームの作り込みは甘いようだ。
まぁ数百数千以上ある村を全て違う作りにするわけもないが。
一矢は任務情報の画面を見ながら言った。
「確かこの任務は夜になると村長の家にレベル3の盗人が出るんだよな
普通の武将ならレベル1でも倒せるけど五右衛門で大丈夫かな」
「大丈夫大丈夫!
何かあったら俺もいるし一応レベルも15レベだから安心して」
少し不安そうな一矢に向かって光義は笑いながら言った。
そうこうして間に村長の家に着き光義は躊躇なく扉を開けた。
「村長の家に着いたよ」
「あっ!人の家勝手に開けて大丈夫かよ」
「大丈夫、村長もゲームの住人だから」
それもそうかと納得し光義と共に村長の家に入った。
中に入ると作りは光義の家と同じ、
奥の居間の中央にいかにもな老人が立っていた。
「わしが村長じゃ
近頃、晩になると盗人がよく作物を盗みくる
どうか我々の吉津村を救ってくれ」
無断で家に入り、何も聞いてもないのに盗人の情報を喋る老人
ゲームでは違和感はないがこうやって現実でされると違和感が凄い。
「本当にゲームそのままだな」
未だに慣れない世界に困惑している一矢をよそに
光義は踵を返し家を後にする。
「村長と話したから、後は夜を待つだけだね
外で待とう」
一矢はわかったと頷くと光義の後に続いた。
そして時は過ぎ、夜になり
二人は村の中心部で待機していた。
「じゃあまずは状況を説明するね
この吉津村には家が12軒ある
盗人が現れる家は毎回ランダム
ただ現れたタイミングで家の住民が必ず叫ぶ
そうしたら盗人が村を出る前に倒せばクリアだね」
「OK、ゲーム通りの情報で安心した」
情報確認し盗人が現れるタイミングを伺っていると
程なくしてどこからか女性の叫び声が聞こえた。
「きゃあああああ
盗人よー! 誰か捕まえてください!」
「きた!近い!急ごう」
光義が声に反応し走り始める。
一矢はそれに続いた。
村自体さほど広くはなく走り始めてすぐに
いかにもな盗人がカゴいっぱいの作物を手に抱え村の外へ走っているのが見えた。
「いたぞ!」
光義は立ち止まり弓を構えた。
「俺のパッシブスキル【百発百中】は50m以内の定めた標的に必ず命中する
ただ今の攻撃力だと一撃で倒してしまうから一矢に経験値は入らない
だから足を狙って動きを封じる
一矢!援護するからトドメは任せた」
光義が放った矢は盗人の足をかすめた。
「ぐっっ!」
足の痛みに顔を歪めた盗人はバランスを崩し
地面に転がり込んだ。
「一矢、確か盗人は包丁を持っているから
反撃に気を付けて」
一矢は地面に倒れ込んでいる盗人の
目の前まで来ると立ち止まった。
「お、大人しく盗んだものを返せ」
「た、助けてくれえええ
家に腹すかせたおっかあと子供がいるんだ!
い、い、命だけは!!」
盗人の怯えた表情と事情に一矢は一瞬隙を見せた。
「馬鹿が」
盗人は隙を見せた一矢を懐に隠していた包丁で切りつけた。
「えっ」
包丁の傷は一矢の下腹部から胸のあたりまでを切りつけていた。
「一矢!!」
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27のダメージ
HP:3
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通知画面が表示され自分が瀕死なのを悟るとともに
激しい痛みが上半身に走った。
仰向けに倒れる一矢にトドメをさそうと盗人が包丁を振りかぶった。
「死ねえええ!」
やばい、死ぬ
忘れてた。ここは平和な現代ではなく平気で人が人を殺す戦国時代
やらなきゃ やられる
でももう間に合わない
次の攻撃で確実にHPはゼロになる
一矢は自分に向かって振り下ろされる包丁を眺め死を悟った。
「アクティブスキル!【雲穿つ弓】」
次の瞬間、光義の放った強烈な弓矢が包丁を貫くのが見えた。
衝撃により弾き飛ばされた包丁が宙を舞い
一矢すぐそばの地面に突き刺さった。
「一矢!!」
光義の呼びかけに我に返った一矢は痛みに堪えながら
地面に突き刺さっている包丁を手に取り盗人に反撃を仕掛けた。
「まっ、、まて!」
盗人の制止を無視し、一矢は腹部に突き刺した。
「うっ!!」
苦し悶えながら倒れ込む盗人
初めて味わう人を殺す感覚
一矢の中で何かが壊れる音がした。
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20のダメージ
盗人を倒した
レベルアップ
名前 :岩森 一矢
モデル:石川五右衛門
レベル:1→3
HP :30→40
SP :10→15
ATK :15→22
DEF :10→15
アクティブ【盗賊の首長】…手に触れたものの所有権を自分に変える
パッシブ【抜忍の弟子】…俊敏性の上昇
装備:包丁(半壊)ATK+5
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