大高城入城
大高城は標高20m程の丘陵地に築かれており
東西106m、南北32mの広さを持ち、周囲の低地を見下ろすことのできる
天然の要塞のような形状をしている。
それもあってか疲弊している今川軍が相手でも織田軍は中々決定的な
攻撃を仕掛けることができずにいた。
また丸根砦への援軍で100、200と大高城を包囲する兵はいなくなり
織田軍の大高城包囲は穴だらけの陣形であった。
「これならいけそうじゃの
敵の穴を見つけた、そこから大高城へ入るのだ」
敵の方位の壁が薄くなっている所を見つけた数正達は
一点突破でそこへ突撃した。
「今川軍・・・いやあの旗は松平軍だ!
全員反転して迎え撃て!」
数正達に気づいた織田軍は全軍振り返り迎撃態勢をとった。
「ほっほ、甘いわ
アクティブスキル【離反工作】」
数正のアクティブスキル【離反工作】
敵軍の結束を崩し、敵全体の防御力低下、
一定確率で同士討ちを発生させることができる。
防御力が低下した織田軍を松平軍が次々に切り伏せていく。
「次じゃ」
上手く指揮を執る数正とは反対に忠次はあまり前に出れずにいた。
やはり人を殺すのはわけが違う。
血生臭い戦場、そこら中に落ちている人間だった部位、
雨の様に降る鮮血。全てが未体験で改めてこれが現実に起きているという事を感じる。
数正のスキルと他の松平兵の活躍によりうまく事は運んではいるが
それがいつまでもつか。
「はあ・・・はあ・・・うぷっ」
異様な光景に吐きそうになる忠次の前に一人の織田軍兵士が立ちふさがった。
「覚悟おおおおお」
相手も死への恐怖と戦っている
戦場では皆そうだ。
だが生きるか死ぬかはここでどう動くかで決まる
忠次は刀を強く握りしめ
力任せに振り下ろした。
切っ先が相手の頭を二つに割り
目からは光が消え、人間だった者が物に変わる瞬間
無残に倒れ込む物。
「う、うわああ」
手に残る人を切った感触
忠次は思わず尻もちをついた。
「どうじゃ呆気ないものだろう、忠次殿」
数正は忠次が切った相手を見ながら呟いた。
「は、はい
こんなにも簡単に人は死ぬものなんですね」
「そうじゃ、この世界での人の命は我々のいた時代に比べれば石ころだ
平気で人は人を殺す
だが忘れてはならん、皆それぞれ大義がある
その大義を見失えば自分の事も見失うぞ」
「大義・・・私の大義は私についてきてくれる者を助けること」
忠次は立上り刀の鞘を強く握りしめた。
「よし、見つけた様じゃの忠次殿の大義を・・・
ではいこうか」
忠次はもう大丈夫だと認識した数正は再び自分の持ち場へ戻った。
自分の大義を見つけ覚悟を決めてからの忠次には迷いがなかった。
みるみるうちに敵を切り伏せ道を進んでいく。
気付いたころには大高城の門までやってきていた。
「わしより早いとは流石酒井忠次殿と言ったところか」
少し遅れて数正と後ろの兵たちも忠次の元へやってきた。
「ええとてもこの体はとても強靭で全然疲れてません
自分の体とは思えないくらいです」
忠次は自身の体の丈夫さに感心したところで
城門の守備兵がことらに気づき声をかけてきた。
「お、お味方か」
その声はかすれていてなんとか振り絞ったような声だった。
「松平元康が家臣、石川和正である
今川義元様の命により兵糧をお持ちしたと鵜殿長照殿に伝えてくれ」
数正の声を聞いた守備兵は驚きで目を見開き
急いで鵜殿長照の元へ走っていった。
それから数分後すぐに城門が開いた。
「お待ちしておりました
もうだめかと思い城兵総出で一矢報いてやろうと思っていたところです」
長照を先頭にその背後にはひどくやせ細った城兵たちが控えていた。
「鵜殿殿よくぞご無事で
今すぐ飯の準備をさせますゆえ少々お待ちを」
数正の指示で荷駄兵たちは食事の準備を進め
次々に城兵たちに配っていった。
「では忠次殿、我々は元康様の元へ行きますぞ
鵜殿殿達は念のため引き続き大高城の守備をお頼みいたします」
「かたじけない武運を祈ります」
数正と忠次そして先ほどの戦いで200から少し数を減らした
戦闘兵170人は元康がいる丸根砦へ向かったがその必要はなかった。
大高城を出て100mも進まないうちに元康率いる軍勢が姿を現した。
「おお数正!忠次!無事に兵糧を届けられたんだな」
「元康様、よくぞご無事で」
数正と忠次は元康の前へ駆け寄り膝をついて
元康の無事を喜んだ。
「大高城を包囲している兵が次々に丸根砦に援軍に来たんだが
急に全員退却してな
数正達が兵糧を無事に運べたんだと確信したよ
ありがとうな」
元康の言葉に二人は謙遜した。
「さて、まずは俺たちの作戦がうまくいったんだ
次は義元様が大高城へ向かってくる
迎える準備をしよう」
元康の言葉に松平軍は鵜殿長照が待っている大高城へ入城した。




