次のお相手は
~駿府城~
現在の静岡県静岡市葵区にある今川家の本城。
義元の招集によって駿府城に訪れた元康、忠勝、忠次は
控室的な役割を果たす部屋に通された。
ここで呼ばれるのを待ち、のちに呼ばれたら義元のいる居室へ向かう。
「これではまるで元康様が家臣の扱いではないか」
小声ながら怒りで身を震わす忠次をなだめながら
元康はくつろいでいた。
「まぁまぁ落ち着いてよ
実質家臣みたいなものなんだから
それよりこんなに遠いのにずっと歩いてたから疲れちゃったよ」
「しかし元康様は松平家の当主!
いくらなんでもこれでは・・・」
「今は家臣みたいな扱いでもいずれ松平が天下統一するんだ
我慢我慢」
落着きのない忠次をよそ目に今度は忠勝も足を崩し体を休めた。
「こら忠勝!殿は良くても貴様は足を崩すな」
忠次は忠勝の頭をはたき、正座に直させた。
「ちっ」
小姑みたいな忠次に不機嫌な忠勝
元康はやれやれと言わんばかりに外の景色に目をやった。
すると襖の陰から一人の男が顔を出すのが見えた。
「これは、氏真様」
「やぁ久しぶりだね、息災かい?」
その男は
今川 氏真年齢は22歳。
今川義元の嫡男で数年前に父義元に家督を譲られた今川家の現当主。
だが実際は全ての権限はいまだ義元にあるため名ばかりの当主である。
そんな氏真は歳が五つ離れた元康を弟の様にかわいがっており
元康も氏真の事は信頼していた。
「はい、息災です
氏真様はいかがなされたのですか」
「いや、久しぶりに元康に会えると思って先に顔を見に来ただけだ
それにしてもなぜ呼ばれたかワケは知っておるのか?」
氏真の問いに元康たち三人は首を傾げた。
「いえ、何も聞かされておりません」
「そうか、ならいい
直に呼ばれるであろう、またあとでな」
そういうと氏真はその場を後にした。
「氏真様、なんか悲しそうな顔をしていたな」
「そうでしたか?」
忠次は全くわからなかったが元康には氏真が
別れの挨拶でもしにきたように見えた。
なぜなら元康はこの後起きることを知っていたからだ。
約二時間後
小姓に呼ばれた元康達は義元がいる部屋に呼ばれた。
そこには義元をはじめ名だたる家臣団が待ち構えていた。
その中には当然現当主氏真の姿もあった。
元康を先頭に後方の左右に忠勝、忠次が控え
義元に対面する形で床に座り頭を下げた。
「面を上げい元康、久しいな」
「はっ久方ぶりでございます」
義元の圧に一瞬怯んだ元康だったが忠次たちが後ろに控えていることもあり
平然を装いつつ返事をした。
「貴様を呼んだのは他でもない、ひと月後次の戦に入る」
「はっ、して相手は」
「尾張の織田信長だ」
尾張国の大名
織田 信長
誰もが知る武将で大うつけとも第六天魔王とも呼ばれる。
「織田信長・・・ですか」
義元の口から信長の名前が出ると家臣たちは笑いながら話し始めた。
「あの尾張の小国ならば松平殿だけでも落とせそうですな」
「しかも前当主信秀ならまだしも現当主信長とやらは大うつけと呼ばれるそうな」
「尾張は松平殿に任せ、我々は美濃の斎藤家を相手にするのだな」
家臣それぞれが思い思いに口にする中ナンバー2である黒衣の僧
太源雪斎が口を開いた。
「小国とて油断するな!
わしは2万5千の軍勢がたったの3千の兵に敗れた戦を知っておる
数で勝っていても戦で勝てる保証などないのだ」
雪斎の言葉に一瞬静かになるが家臣たちは反論を始めた。
「2万5千が3千に敗れるなどおとぎ話かなにかですかな」
「それが本当であればその大軍はよほどの戦下手であろうな」
「黙れ!!雪斎、氏真、元康以外はここから去れ!」
義元の咆哮に家臣はたじろぎ恐る恐る退室していった。
場には義元、雪斎、氏真、そして元康が残っていた。
「すまんな元康」
「いえ私は大丈夫です
それとすみませんが忠勝も呼び戻してもよろしいですか」
何かに感づいた義元は忠勝を呼ぶのを許可した。




