雇われ大名
1560年4月
今川軍と井伊軍の戦から一年が経とうとしていた。
この一年で駿河、遠江、三河の三国を完全に支配下に置いた今川義元は、
甲斐国の武田信玄
相模国の北条氏康との
甲相駿三国同盟を結び
次の標的を尾張国の織田信長へと定めていた。
そして三河国 岡崎城にて
元の名前を佐々木純平こと松平 元康の物語から再開する。
「元康様!今川様から駿府城へと呼び出しを受けております」
「そんなもの無視しておけばよいのです
たとえ今川一門であろうと松平家は三河を納める立派な当主ですぞ」
「しかし逆らって人質に何かあれば大変です」
岡崎城のとある間にて家臣同士で言い争っている。
その光景をぼーっと見ているのか見ていないのか元康は上の空だった。
二年前
サラリーマンであった佐々木純平(35歳)は残業続きの毎日に嫌気がさし
会社の屋上から飛び降りた。
もう何もかもに疲れ全ての事から解放されたいと思ったからだ。
ただ目を覚ますと目の前には武士、百姓、農民。
映画やドラマで見たことある光景が広がっていた。
最初は何かの撮影か何かかと疑っていたが生活をするうちに
これは現実で起きていることだと確信する。
人が簡単に死ぬ場面をたくさん見たからだ。
そんな中自分が後の徳川家康である松平元康であることを認識し
更にこの世界には自分と同じ転生者と呼ばれる現代人がいることもわかった。
松平家家臣である
本田忠勝こと大石豊
石川数正こと渡辺佑も
同じ転生者でどちらも現実世界で死亡した形跡があったようだ。
大石豊は現実世界では年齢14歳。ばりばりの不良。
渡辺佑はなんと80歳を超える老人だったらしい。
なんだかんだあり、今となっては二人ともこの世界に馴染み
元康こと純平の家臣として生きている。
そして忠勝(大石豊)が現実世界で遊んだことのあるゲーム
完全没入型VRゲーム「Warring States」の設定が
転生者に対して反映されることも知った。
それからというものの今度は生きるためにレベルを上げ
この世界に順応していった。
そして遂に一年前
今川軍と井伊軍の戦いが勃発。
元康は井伊軍の応援として参加していた。
理由は単純、今川軍が遠江を平定すれば次に三河に来るのがわかっていたからだ。
歴史ではこの時代に井伊直政はまだ生まれていないがそこはゲーム。
大筋は歴史通りに進んでいる気がするが所々時系列がおかしい所もある。
井伊直政が負ければ遅かれ早かれ今川家の支配下に置かれる事が
わかっていた元康はなんとか抵抗するために直政に味方したが結果は敗戦。
直政とその家臣は生死不明らしい。
直政に味方をしたとして元康も一時今川家にうっかり滅ぼされそうになったが
サラリーマン時代に身に着けた処世術でなんとか回避。
今川一門に降る形でなんとか命拾いしていた。
「元康様!話を聞いておられるか!
行かねば今川家に何をされるかわかりませぬぞ
私と忠勝が護衛を務めまする!さあ行きましょう!」
松平家家臣
酒井 忠次33歳。
元康の忠臣と知られるこの男が元康を今川義元の所へ赴くように促してくる。
「わかったわかった、とりあえず行きますよ
忠勝~着いてきてもいいけど面倒ごとは起こすなよな」
「ふん、それは今川の態度次第だ」
反抗期真っ只中の精神年齢14歳の忠勝。
この時代の忠勝は12歳。ちなみに元康はこの年17歳。
元康の弟的な立ち位置で忠勝は付いてくるそうだ。
ほんとの年齢は35歳。
忠次より年上の事は転生者の中だけでの秘密であった。
「まったく・・・
忠勝!貴様は大人しくしておるのだぞ」
忠次に念を押され、渋々返事をする忠勝であった。




