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Episode 21

一気に溶け始めたHPゲージを見て、俺は息を呑んだ。


残り5秒。


「これは……ギリギリ間に合うのか!?」


残り3秒。


インヴァリードの攻撃を紙一重でかわし、シーラが大きく剣を振りかぶる。


「行けええええええっ!!」


残り1秒。


インヴァリードのHPゲージが……。


ゼロになった。


〓インヴァリード撃破。クリアタイムを記録しました。〓


その瞬間、巨大なインヴァリードの身体が、無数のポリゴン片となって崩れ落ちていく。

光の粒が、闘技場いっぱいに舞い散る。


その中心で。


シーラは、敵を斬り伏せた姿勢のまま、静かに立っていた。


「……やった。」


モニターの脇では、実況掲示板がこれまでにない勢いで流れている。


>うおおおおおおおおお!!

>やりやがったあああああ!!

>マジかよ!アツすぎる!!

>残り1秒とか漫画かよ!

>腹ペコ剣士最強!腹ペコ剣士最強!

>あの盾、最高にカッコいいだろ!

>早くも大会ベストバウト!!!

>涙で画面が見えない


「っ……!」


俺は無意識に両の拳を振り上げていた。

そして、そのまま座席にへたり込む。

極度の緊張から解放され、一気に全身から力が抜けていった。


掲示板を埋め尽くす歓声を眺めながら、俺の頭に一つの疑問が浮かぶ。


一体、何が起こった?


最後の10秒まで、確かに火力が足りていなかった。


それなのに、なぜか最後にダメージが跳ね上がった。

シーラのクオリアは、すでに限界まで高まっていたはずだ。

いわゆるゾーンというやつだろうか……。


「……ミルトンっ!」


しばらくすると、ポータルを抜けてシーラが戻ってきた。

そのまま、俺のところへ駆け寄ってくる。


「ミルトン、やったよ!」


顔はくしゃくしゃだった。

大粒の涙が、ぽろぽろとこぼれている。


「ああ、凄かったよ、シーラ。」


俺は笑って、彼女を迎える。


「本当に……シーラのクオリアの限界を見させてもらったよ。」


労いの言葉をかけると、シーラは涙を拭いながら首を横に振った。


「違うの、ミルトン。」


「え?」


「見て。」


シーラは泣き笑いのような顔で、大切そうに抱きしめていた装備を俺の前へ差し出した。

そして、そこに表示されるステータスを目にして……俺はすべてを理解した。


「見て……。」


シーラの指が、ある項目を震えながら指し示す。


「レオに……クオンタが……。」


それは、これまでずっと。

どれだけシーラがレオを愛しても、『0』のままだった項目。


「……そういうことか。」


最後の最後。


インヴァリードのHPゲージが異常な勢いで減り始めたのは、俺の暗示によるバフでも、シーラ自身のクオリアでもなかった。


注目。熱狂。激励。


シーラとレオへの支持が、クオンタポイントを押し上げていたのだ。


「……ああ。」


そして、上昇したクオンタポイントが、リアルタイムで彼女の装備を強化していた。


「みんなが、シーラとレオを認めてくれたんだな。」


「……うん。」


シーラは小さく頷き、レオの盾をぎゅっと抱きしめる。


そして……ついに声を上げて、泣き出した。

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