Episode 20
闘技場の中央。
巨大なインヴァリードの猛攻を、シーラは真正面から受け止めていた。
轟音。
闘技場の床が砕け散るほどの重い一撃を、レオの描かれた盾が真正面から弾き返す。
「……すごいな。」
俺はモニター越しに戦況を見つめていた。
動きが、今までとは明らかに違う。
暗示による極限の集中。
そして、パンによるバフ。
その二つが噛み合った結果、シーラはインヴァリードの絶え間ない攻撃を完璧に捌いている。
画面の端では、実況スレッドが凄まじい勢いで流れていた。
>出た!腹ペコ装備!
>基礎ステ無効相手にクオンタも縛るとかw
>あのクソダサ盾でボスの攻撃完封してて草
>てかパンは?
>入場前に食ってたぞ
>早弁スタイルwww
インヴァリードが巨大な腕を振り下ろす。
シーラはその攻撃を掻い潜り、そのまま懐へ飛び込む。
「はあっ!」
剣が胴を薙ぐ。
ガキィンッ!
硬そうな装甲をものともせず、シーラの攻撃が通る。
インヴァリードのHPゲージを削る。
>すげぇ!めちゃくちゃ善戦してる!
>クオリアだけで削ってんのかよ
>いけ!そのまま押し切れ!
>腹ペコ剣士が勝つところが見たい!
>くそ!俺は見ていることしかできないのか!
>がんばれええええええええ!
いつしか、からかい交じりだった書き込みは、本気の応援へと変わり始めていた。
観客席の熱気が、そのまま文字になって画面を埋め尽くしていく。
シーラは攻め続けている。
ダメージは、確実に蓄積している。
クオリアポイントも、十分すぎるほどにシーラのステータスを押し上げている。
それでも……。
「……足りない。」
俺は思わず呟いた。
インヴァリードのHPゲージを見る。
減ってはいる。
だが、その減少速度は、ほんのわずかに遅い。
決定的な火力が足りない。
このままでは、規定タイムに間に合わない。
「頼む……。」
表示されたタイムリミットが、無情に数字を刻んでいく。
残り20秒。
インヴァリードのHPは、まだ一割近く残っていた。
「はあああああっ!」
シーラが渾身の連撃を叩き込む。
一撃。
二撃。
三撃。
インヴァリードの巨体が揺れる。
それでも……HPゲージは削り切れない。
残り15秒。
「……くっ。」
残り10秒。
ダメだ。
届かない!
俺は拳を握りしめた。
このままでは、時間切れになる。
そう覚悟した、その瞬間だった。
「……え?」
インヴァリードのHPゲージが……大きく動いた。




