↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
19/23

Episode 18

〓エドモンド鬱猿〓


名前が表示されてから、ずいぶんと時間が経った。

しかし、いくら待っても闘技場に現れる気配はない。


「……来ないな。」


トラブルだろうか。

観客席からも、次第にざわめきが広がっていく。


そのとき。


『ピンポンパンポーン』


聞き慣れないチャイム音が鳴った。

続いて、大会運営からのアナウンスが流れる。


〓本選に出場予定でしたエドモンド鬱猿選手ですが、ご本人の安全上の理由により、棄権とさせていただきます。〓


「……え?」


会場が、一気にどよめいた。

その直後。


ピコン。


俺の視界の端に、通知が表示される。

空中に浮かび上がったのは、運営から全プレイヤーへ一斉送信されたシステムメッセージだった。


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

【クオリアオンライン運営からのお願い】


ゲーム内のステータスを高める目的で、自身の認知を無理に歪める行為や、肉体に負担を強いる行為は大変危険ですのでおやめください。


ゲーム内の出来事が現実に直接反映されることはございませんが、本作のシステム上、現実世界での認知や心理状態はゲーム内のステータスに影響を及ぼす仕様となっております。


プレイヤーの皆様におかれましては、健康第一で、安全に楽しくプレイしていただきますようお願い申し上げます。


クオリアオンライン運営チーム

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


「…………はぁ。」


メッセージを読んだ俺は、そのまま座席の背もたれにぐったりと体重を預ける。

張り詰めていた緊張の糸が、プツリと切れた。


「えっ?棄権?どういうこと?」


隣では、シーラが狐につままれたような顔をしている。


「……ドクターストップだよ。」


「ドクター?」


「第一部の展示会にあった、あいつの展示品を思い出してみて。」


俺は疲れた声で答える。


「あの異常なステータスが付いてた『雑草』。」


「あれね……。」


「あれを心の底から『最高に美味しい料理だ』と思い込むために、あいつは現実世界でも強烈な自己暗示をかけ続けてたんだと思う。」


俺は、運営から届いたメッセージを見る。


「ゲームのステータスを上げるために、現実の自分の認知や肉体にまで無理をかけたんだろうな。現実でも雑草を食べたはずだし、極端な断食なんかもしてたかもしれない。」


ゲームの数値を強化するために、現実の自分を追い込む。

そこまでしてクオリアを高めようとする執念は、もう普通のやり込みの範囲を超えている。


「で、本選の出番直前に、現実のほうで限界が来たってわけだ。」


「うわぁ……。」


シーラが、露骨に引いた顔をする。


「俺にとっての最悪の強敵が出てきたのかと思ったけど……。」


俺は肩をすくめた。


「やっぱりな。ゲームってのは、健康第一で遊ぶもんだよ。」


究極の自己暗示。


その行き着いた先が、現実の限界による強制終了とは。

なんとも呆気ない。


やがて、会場のざわめきが少しずつ収まっていく。

再び闘技場がリセットされる。

そして、次の挑戦者の名前が表示された。


〓シーラ〓


「……さあ。」


俺は隣を見る。


「いよいよシーラの出番だ。」


「……ええ!」


シーラが勢いよく立ち上がった。


その手には、レオの描かれた盾がしっかりと握られていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。