Episode 09
ギルドを結成した俺とシーラが、最初にやったこと。
それは、レベル上げだった。
このゲームにも職業があるが、最初から選べるわけではない。
まずは素材を集め、アイテムをクラフトしながらゲームシステムに慣れる。
そしてレベル10まで上がって、ようやく職業を選択できる。
というわけで、俺たちは手近なフィールドで経験値を稼いだ。
「よし、レベル10だ。」
システムウィンドウを確認して、俺は息を吐く。
「おめでとう、ミルトン!」
隣にいたシーラが、自分のことのように喜んで拍手した。
「これで、ついに職業が選べるわね!」
ちなみに、彼女はすでにレベル10を超えており、『剣士』の職業に就いている。
「私は剣士だから……ミルトンは後衛の魔法使い?それとも、前衛でターゲットを取るタンク?」
シーラが、予想……というより希望?を勝手に語り始める。
まあ、パーティのバランスを考えれば、どちらも悪くない。
だが。
俺には、別に考えている職業があった。
俺の『特技』を活かすなら。
そして、それをできるだけ効果的に使うなら。
たぶん、これが一番いい。
俺はシステムウィンドウを開いた。
「実はさ。」
「ん?」
俺は職業一覧を表示して、その中のひとつを指差した。
「これにしようと思ってるんだけど、どう思う?」
「え?」
シーラが画面を覗き込む。
そして、目を丸くした。
「これ?……完全なサポート職よ?」
「そうなんだよ。」
俺は少し声を落とした。
「でも、俺の『暗示』との相性は、一番いいと思う。」
「…………。」
シーラが画面と俺の顔を交互に見る。
少し考えてから。
ぽん、と手を打った。
「なるほど!」
その顔には、妙に楽しそうな笑みが浮かんでいる。
「面白そう!」
「だろ?」
「いつから考えてたの?」
「最初は普通に遊ぶつもりだったからな。俺も剣士とか魔法使いとか、そのへんかなって思ってた。」
俺は苦笑する。
「でも、シーラと組むことになっただろ?」
「うん。」
「だったら、俺は俺にしかできないことをやったほうが面白いかなって。」
「ふふっ、いいと思う。」
シーラが嬉しそうに笑った。
「まだレベル10だし。もし合わなかったら、やり直せばいいもんね。」
パーティメンバー冥利に尽きる、最高の笑顔だ。
その笑顔を見て、俺のメインクエストは決まった。
彼女の野望に全振りだ。
「そういうこと。」
職業選択画面に向き直った俺は、迷わず決定ボタンをタップする。
俺が選んだ職業。
それは……。
『料理人』だった。




