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可愛い


見てね(*・ω・)

 

「クソが!! 俺やっぱ足遅せぇな!」

「ミコトくん本当にめちゃくちゃ遅いですよ!!もう僕の背中乗ってください!! 」

「ごめん!! そうして!! 」


 アスカの鼻を頼りにサキの元へ向かう二人。ミコトの足の遅さに痺れを切らしアスカはミコトを担いで走る。



 路地裏を曲がりついに目的の二人を視界に捉えたアスカ達。









 既に決着は付いていた。サキの右拳が男の胸を貫いている。血塗れの腕を抜き取る。胸の風穴から吹き出す鮮血はサキの顔に飛び散る。そして狭い路地裏の壁は赤色に染まった。



 天を仰ぎながら男はその場に倒れた。


「ごめん。……お前達の、かた……き、取れなかった。


 ダメな……お父……んで、ごめ……」




 真紅の色に黒が混ざり始めた。彼の体も溶けだしていく。立ち上がる力もない彼に、抵抗する気力などない。財布を取り出しその中から写真を取り出す。



 彼の大切な、大切な宝物だ。



 それを胸に抱きそっと、目を閉じた。



 残ったのは骨、衣服も溶けてしまった。





 だが、胸に抱いた彼の宝物は残った。



 写っているのは恐らく息子と妻。



 そして、彼の優しかったあの頃の姿だ。




 3人共、笑っていた。



 サキはその場で立ちすくんだまま、ずっと骸になった彼を見下ろしていた。





 ※※※※



 家路につく3人。警察の事情聴取により、なんと時計は深夜を回っていた。




「サキお前、あれだ飯の前に風呂はいってこいよ。流石にそれ脱ぎたいだろ」


 サキは少し間を置き無言でうなづいた。


「あの、この服何処置いたらいいですか? 」


 ファントムの死んだ後の血により、真っ黒に染まった衣服。洗濯でのくとは思えない。


「あー、そうだ、風呂場に袋持って行ってよ。そこに突っ込んどいたらゴミの日に出しとくからさ」


「すいません、私なんか……」


「コラ!」


 ミコトがサキの頭の天辺をコツンと叩いた。力は入れてないので全く痛くはない。


「自分の事、【なんか】とか言わないの。


 ほら早く風呂入れ風呂! 俺は飯作るの早いからね! 早くしないと、お前が出てきた時には親子丼冷めちまってるぜ! 」




 アスカとミコトがかなり遅い夕食の支度をする。アスカが朝の食器を洗い、ミコトがその横で鶏肉を焼く。中々手際がいい。


「あの……貸してくれてありがとうございます」


「「 早っ!!! 」」



 入って10分だろうか。年頃の女子とは思えない入浴時間の短さだ。着ている寝巻きは可愛らしい物にも関わらず髪の毛は枝毛だらけ、タオルだけで吹いたのだろう。クシでといてもいない様だ。


「え? お前ドライヤー」

「いや……電気台が勿体無いので」

「いやいや、いいんですよサキさん、使ってください」

「でも普段使いませんし」

「てか、髪パッサパッサだけど、お前リンスとかコンディショナーとか使わない人?」

「シャンプーだけで充分では?」

「服の趣味の割に、全くそういうの気い使わねえのね」


 因みに二人の入浴時間。


 アスカは20分、ミコトは45分だ。



 サキから遅れて5分ほど、少々大きめの丼に入った親子丼に、カツオ風味のお吸い物。胡瓜の漬物。



 そして机の真ん中に賞味期限の近い5人前程のモヤシを炒めて塩コショウのみで味付けした物。


 庶民的ではあり、そこまで家系を圧迫しないシンプルな料理だ。



 だが、明らかに野菜が多すぎる。



 深夜1時を回った遅めの夕食。この量をなんと3人は5分で平らげてしまった


「あの、ミコトさん?」

「ん?何よ?」







「お父さんお母さん……、好きでしたか?」


「……。いや、悪い、俺親父とかお袋とか居なかったんからさ。そう言うのよく分かんねぇんだ」


「そう……ですか。すいません変な事聞いて。



 私もです。覚えてないんですよ。顔もどんな声かも。ずっと離れて暮らしてたから」


「…………………………………」


「だからですかね。あの人にお前の親を殺してやったって言われても、特に何も思わなかったんですよ。別に恨んでもないし、会いたいとか思わなかったし、戦いの方が好きだったから。




 あの人達も私に興味無かったと思うし、私もあの人達に興味なんて無かったです」


「…………………………………」


「軽蔑します?」

「しねぇよ。子供突き放す奴らが親な訳ねぇだろ。そいつらはお前にとって他人と変わんねぇんじゃねぇのか? ならいいじゃん。情なんてもたなくても」


 アスカはこの時ミコトの言葉に少し引っかかった気はした。だがあえて言わなかった。


「でもあの人の話聞いてると……、









 私……同情したんですよ彼に。らしくないですよね。戦う為に生まれたファントムの癖に 」



らしくないと思ったのだろうか、サキは可笑しくなって笑いだした。



 「親が殺された事には何とも思わなかった癖に、親を殺した相手に同情するなんて聞いたことあります?



でも……、それでもですよ!!




それでも私、あの人殺せたんです。








ハハハハ。 私って本当化け物 」



彼女は自分で自分を貶すことが止まらなくなっていた。


二人にはそれが、とても痛々しく見えた。


「でも、私が成りたかったのってきっとこれなんですよ!! 人間なんてつまらないし。



テレビの中の戦う人達に憧れて、


自分でファントムになって、


自分から親を捨てて、


本当に私はクズ



 分かります? 私はちゃんと人間やめれてるんですよ!! これなら……!!」







「はいストーーップ!!! 」


 ミコトがサキの両頬を掴んで横に引っ張る。



「ばー!? ババー?! らりずぶんです? 」


「はい!上見てー」


「ヴえ!?」


「はい! 下見てー」


「ビタ!?」




 ミコトが手を離す。冷蔵庫に向かいジュースのパックを持ってきた。それをコップに注ぐ。



「はい! これ飲んで深呼吸してねえー! 」



 ミコトがテンション高めの裏声でサキにそのコップを渡す。サキはかなり戸惑いながらもそれを1口飲み言われた通りに深呼吸する。


 ミコトが、サキの目を真っ直ぐ見る。


「いいかよく聞けサキ。お前の今感じているそれは罪悪感だ。 それはな・・・お前の言う怪物にはないものんだよ。それがある限りは何処まで行ったって人間のままだ。悪いけど、













 ……お前は化け物なんかじゃない。







 ハハハハ! 残念だったな!!(笑) 」





 サキはキョトンとした目でミコトを見る。とりあえず貰ったハーブティーが案外美味しかったのでもう1度口に入れた。


「さてちゃっちゃと風呂入るか。そらアスカちゅんジャンケン! 」

「ん?はーい。行きますよ!」


「「最初はピース!! ジャンケンポン! 」」


 ミコトはパー、アスカはグーだ。



「いぇーい〜♪」「うわァァ!! モオオー!!」



「よっしゃ俺の勝ち!」

「うわ〜最悪……。ミコトくんお風呂長いのに〜 」


 アスカは頭を抱えてその場に倒れ込んだ。ミコトはそさくさと風呂場に入る。45分も風呂に入る男。アスカはミコトを待たずしてそのまま寝てしまった。深夜2時が彼の限界だった。


 サキはアスカを起こさないようそっと・・・毛布をかけた。その幼子の様な寝顔を少し可愛いと思った。


そして思いついたようにタンスの前の鏡に立ち、



自分の顔を見つめ、


胸に手を当てて、


あの言葉を呟いてみた。




「罪悪感……か。 プッ! 」



 何故かおかしくなって笑ってしまった。そして力が抜けたのか急に眠気が襲いかかり、机に頭を置いて寝てしまった。



※※※※



 起きてみると朝10時、一番に起きたのはサキだ。



 アスカとミコトはまだ寝ている。ミコトは壁にもたれかかって何も掛けずに寝ている。まるで落ち武者の様。そもそも寝床すらスペースが確保されていないこの家はおかしい。そして自分には毛布がかけられていた。どうせミコトだろうと思った



 ミコトは寝る時は布団や毛布には入らない。いつも壁にもたれかかって座って寝る。昔からの癖らしい。


「……いつか風邪ひいても知りませんよ? 」


 サキはこのままわざと音をたてて起こしてやろうかと思った。が、


















ミコトの左目から涙が零れていた。




 サキは彼を起こすのをやめた。近くにあった自分のコートをミコトにそっとかけた。サキは今日は特に予定も無いしもう少し位寝てもいいかもしれないと思った。机に入り、毛布を被った。





……暖かい。そう思うと目蓋が重くなり、



彼女はまた夢の中。



3人の寝顔は、ただの純粋な少年少女。






 今日は、休日。



もう少し、彼らを寝かせてあげても、きっとバチは当たらない。




※※※※



 場所はタクマの病院。いるのは二人。







 タクマと、アキラだ。



「んーだよタクマ。大量殺人鬼に構ってると捕まるぞ?」


「年上にタメ口聞いて、しかも文句かよ。ミコトよりひでぇな。キラーホエールのア・キ・ラさん」


「チッ、めんどくせぇ 」



 彼女を呼んだのはタクマだ。アキラは気だるそうにしている。


「ミコトのとこにいた女は知ってるな?」


「あー、あの意識高そうな巨乳?」


「お前な。あのーなんだ、【オグドラス】だったっけ? そいつ追ってんだろ?」


「あぁ。人間は殺さねぇらしいが、ファントムなら男女関係なく殺しまくってる戦闘狂だぁ。ギアのファントムで女って噂だが、目撃者もいねぇから正直宛が無くて困ってたとこだよ。




 なんか情報あんのか?」


「サキが1回大怪我してこっちに来たことがあってよ。割と珍しいタイプのファントムだったからちと皮膚のサンプル貰ってたんだよ」


「相変わらずキモいな・・・お前ぇ」


「まあ聞けよ、その【オグドラス】が殺したファントムの死骸からな、よく髪の毛が見つかるんだよ。そこから何とかDNAが取れた」


「へぇーやるな」


「警察じゃ無理な事だろ? あいつらファントム事件では本当に無能だからな。それでだ、


















 サキって奴と【オグドラス】が血縁関係である事が分かった。どうだ?美味しい情報だろ? サキには両親はいねぇから姉の(ハナ)って奴が【オグドラス】で間違いねぇ」





「へぇーマジか。ありがとよぉ。これで仕事が進む。つーかさぁー、



それ、ミコト達には言ったのかよ?」


 タクマの口角が少し仕上がる。足を組みアキラの方を向く。


「言ってねぇよ? 別に言わなくてもいいだろ?」


「へぇーそぉー。悪いなぁ。わざわざ伝えてくれてよお」


 タクマは頭を何回か掻く。



 アキラに背を向けてこい言った。







「嫁の仇、打ってくれた礼だよ。





 一生使っても、返せるか分かんねぇけどな」


「らしくねぇこと言うな気持ちわりぃ。


いつか私が良い奴が死なねぇ世の中にしてやる。お前の嫁さんみたいな人が、二度と犠牲にならない世の中をな。



絶対だ。これだけは約束してやる。例え何を犠牲してもな」


「それ。出来れば俺が生きてる間に叶えてくれよ。先行き短いおっさんだからな」





※※※※※



 場面はミコト達の家。起きれば昼1時。



 3人は机を囲んでしっぽくうどんを食べている。


「実はさあー、合計3日間仕事がなさそうなんだよ。なんか新しい人達が来たみたいで」

「そうですか。ミコトくん、株頑張って!」

「えーあれ疲れるんだけど・・・」

「」



 サキは二人を見ながら黙々とうどんを平らげていく。二人に言いたい事があるのだが中々、話せない。だが思い切って口に出してみた。






「少し洒落(シャレ)た事を言ってもいいですか?」




「・・・・・・えっ?」(なんでここで?)


「・・・・・・いや別に言ってもいいけど」


「ありがとうございます 」


 お茶を一気飲みして深呼吸する。



「最近あるライトノベルがアニメ化したらしいんですよ」


 ミコトが反応に困る。話の内容が殆ど理解出来ていない。


「えっと、ライトノベルって何んだっけ? 」

「まぁ、小説です。ですよね?」


「まあー、いわゆる挿絵ありの小説ですね。アニメ化に至って彼は12話全話の脚本を筆頭する事が決定しました」


「オー脚本家は分かるぜ! 特撮オタクだからな俺! 」


「その人は非常に(こだわ)りが強いらしく、OP・ED、挿入歌から劇中BGMまでかなり口を出しているそうなんです」


「こだわりがあるのはいい事じゃないの」



 二人はサキの話を聞きながらお茶を口運ぶ。


「それでどうしてもOPだけはボーカルが彼の趣味には合わなかったらしいんです。





 そこでですね、


























 自分で歌うと言い出したそうです 」




  ブウゥゥゥゥゥゥゥーー!!




 二人は勢いよく飲んでいたお茶を吹き出し、それはサキの顔に命中する。




「あ! ごごご、ごめん!!! 」


「サキさん!! ククッ! ごめんなさい!! 本当にすいません!!! ププっ!(笑) 」


「・・・・・・いや、うけてくれて、良かったです。




 でもせめて私に向かってお茶吹き出すのはやめて欲しかったです」



 ミコトが凄く申し訳なさそうにティシュを差し出す。アスカはツボにハマったのか、サキに顔を合わせないようにしながら笑いをこらえる。





※※※※











「随分と楽しそうじゃない?サキー。 失望したわよ? この私の妹なのに 」



 腰ほど伸びた長い黒髪。奥二重に可憐な容姿。エスニック調だが何処か気品を感じるセンスある服装。




 彼女の名前は(ハナ)。少し離れたビルの屋上からサキ達の自宅を見つめる。



「私が目を覚まさせてあげる。 ちゃんと教えてあげるよ。 私達ファントムは、











 戦う為だけに、生まれたって事を 」




挿絵(By みてみん)








なんか可愛くなったから題名そのまま【可愛い】にしました

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