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雑巾

ここでサイガ達のストーリーに決着を付けたかった。もう少し続きそうです。



「そんな!!? 嘘だ!! この僕が!? 」



防戦一方・・・。ただこの言葉に尽きる。


大空を飛翔し、カナタの四方八方から追撃をする。若干10で車椅子のか弱い少女から変貌した物とは思えない、力強い戦いだ。


7メートルを越す巨体。強固な鎧。そして神速の機動力。極めつけはテイマーのファントムとしての能力。


細菌を作り出し、思うがままに操る。


彼女が見せていたダイヤモンドダストのような壁や、光弾、カナタから一瞬で所長を取り戻した謎の光。その正体は億単位のサイガが産み出した超怪力の細菌だ。


サイガの強さを証明する物はこれだけある。




だがそんな事よりも・・・、




「何かの嘘だ!!! 僕は・・・!


僕は・・・負けない!!!! 負けるはずない!!


僕は大人なんだ!! たかがガキに!!!」






「あなたは私には・・・、絶対に勝てない。



私はあなたに勝たなくちゃいけない理由がある。


でもあなたに負けていい理由はない。





カナちゃん、マナちゃん、所長、皆・・・こんな化け物の私を、




家族って言ってくれた・・・


大好きって言ってくれた・・・


人間だって言ってくれた・・・




私の大事な人が待ってくれてる・・・!


私が大好きなこの場所で・・・!






私が負けるわけないんだ!!!」



カナタの真正面から渾身の拳。


戦う理由のある拳ほど重たいものは無い。


それに少しだけ・・・、その巨体のパワーも相まって防御の構えをとっていたカナタは地を割りながら後方に吹き飛ぶ。



(これで・・・、決める・・・!!)


「サイガ…………………………………、行け!」


その輝きに秘められたのは...、彼女の言葉にならない想い。


それを一つに束ねて生まれたダイヤの大剣。両腕で力の限り握りしめ・・・、彼女は青空を駆ける。大剣の周りに螺旋を描く虹の光。





この男の運命はここまでだ。



「く、来るな!! 来るな来るなぁぁぁ!!



やめろォォォォ!! やめろよぉぉぉ!!



僕は大人だぞォォォォォォォォォォォォ!!!」





「ハァァァァァァァァァァァァァ!!!」





ほぼ命乞いに近い悲鳴を掻き消すのは青空からの虹の閃光。その軌跡には砂煙が巻き上がる。




路面の表面を削りながら地に降り立つサイガ。


300メートルほどの路面を削り取りようやく止まる。上がる砂塵。そこには彼女の戦う姿のシルエットだけが映る。


ついにその全てが彼女から消え去った後、下僕(しもべ)の鎧の龍は羽を広げる。青空に向けて雄叫びを上げ、勝利に酔う。


大地の上に立つ龍士。そして・・・、




やはりその色はこの空に映えていた。



「そんなァー・・・この僕が・・・、」



砂煙から、ファントム体を保てず人間の姿に戻ったカナタが大粒の涙と地に張り付いた鼻水をひっさげて現れた。


その様相に大人の威厳は微塵もない。敗北の砂を被ったカナタは地を這いながら煙の中に身を隠そうとしていた。





その目の前にサイガが立ちふさがる。




敗者を見下ろすその瞳には未だに熱を帯びている。様々な思考が交わる。その結果導き出した答え・・・。




(お父さんの時と一緒だ。このままにしてたら・・・きっとあの時と同じ目に合う。



この人は………………………ここで・・・! )



小指から曲げていき拳固を作る。拳の先にあるのは震えて言葉を失くす小心者。正拳突きの構えを取り今標的を打つ。



【死ね!!!】










「サイガ止めろォォ!!!」


「サイガそんなのないよ!! そんなのサイガらしくないって!!!



私達そんな事するサイガなんて見たくない!!」




声の届くところまで駆け寄りサイガを制止する二人。人間など片手で潰してしまえそうなその巨大な拳はカナタのすぐ手前で立ち止まる。



その言葉と自分の過去の経験から自分がどちらを選ぶべきなのか迷い出した。



母を父に殺された記憶・・・。



初めてカナに、人外の姿の自分を見せてしまった時。


それでも自分の事を人間だと呼んでくれたカナの事・・・。


最初、Butterflyに馴染めなかった自分に気さくに話しかけてくれたマナ。







今ここでこの男の命を奪えば大切な友達を傷つける事になる。自分が見逃していた大切な事に気付く。そして命を奪うという選択が出来なくなった。




彼女の戦う姿は自然と元の車椅子の少女に戻っていた。






「おかしいですねー。それは変だ。貴方は勝者としての責任を果たすべきだったのに・・・」



カナタの背後から風を切る音が一つ。彼がその正体を認知した既には左腕を切り飛ばされていた。



ブーメランのように持ち主の元に戻って行く。カマキリに似た片手鎌。持ち主は白いマントの戦闘狂。その隣に13の中性的な青年。



鎖切(サキ)飛鳥(アスカ)だ。ミコトが入院中の間、即席のコンビを組みカナタを追っていた。


サイガがあれほど豪快な戦い方をしていたのだからこの場所に来るのも当たり前だ。


「痛いぃぃぃー!!? えェェェなにこれ!!?



僕の腕ェェ!!? 嘘だァァァ!!



嫌だァァァ!!! 痛いよぉぉ!!



おじいちゃぁぁぁァァン助けてよォォォ!!!」



「ハハハ。愉快な御方なのですね(笑)


あー貴方が殺らないとなると・・・、別に私がこの泣き虫さんの人生に終止符を撃たせて頂いてもよろしいのですよね? 」



(この女の人多分敵じゃないけど、あの人より怖い)


サキの狂気に強い恐怖を抱いたサイガは無言のまま反射的にうなづいてしまった。


「どうも綺麗なお姫さん。ご安心下さい。楽には逝かせませんので。


飛鳥さんも別に構わないですよね?




ギア・・・、テイマー・・・、ジェミニ・・・、




【人殺しのファントム】の明確な証拠である存在となった私達は殺さても殺した本人は罪に問われない。 まさに法律からも、もう人間ではないと認めてもらえている。お互いで勝手に潰しあってくれているファントムには警察は殆ど介入しようとしない。







こんな自由なことは無いですよ。なんてフェアで素敵なのでしょう。


戦う者同士は、ただお互いの命だけかけて置けばいいのですから。法律なんて物に縛られずに強さが正義の世界の中で生きる事が出来る」



常人の思考回路ではない。そしてやはり戦う時と命を刈り取ろうとしている時の彼女は冗舌だ。アスカは彼女の思考のその一端を理解できた気がした。だが・・・、









サキのほうもアスカと言う人物があまり分かっていなかった。









「ラプトル・・・、蛇だ楽に殺すな」




機械の健脚は雄叫びと共に青く発光し、その光は右腕に流れていく。



右腕は今まで見たこともない程巨大で長く、蛇と言うよりは東洋龍のようにしか見えない。それはカナタを中心でとぐろを巻く。



アスカは怪演の幕を開けた。






サキは少し驚くが、この先を見てみたかい事もありトドメをアスカに譲る事にした。


「さてと・・・この先は14禁ですかね」



カナとマナがカナタを見つめる視界の真ん中に立ち塞がりマントをたなびかせる。それは巨大なカーテンのようになり白いドームになる。


サキ、カナタ、アスカの3人を取り囲んで大きな円型のドームは、これから起こる惨劇とまだ汚れていない彼女達の世界に一線を引いた。勿論サイガも外に追い出した。




サキのマントは表が白で裏が赤だ。白いドームの中は人を狂わせる赤だ。


二人は互いに背を向けあって会話する。


「少し驚きました。温厚そうなアスカさんにこんな1面があったなんて(笑) ミコトさんと似ていて、もっと夢見がちな方だとおもっておりました」




「僕は・・・、ミコトくんみたいに優しくないです。


気遣ってくれてありがとうございます。


やっぱり僕より人間っぽいんですね」



「・・・、悲鳴も外には聞こえませんよ。どうぞお好きになさって下さい」



「どうも・・・」







観客はサキ一人。演者は死刑囚と処刑人。



題名は、






…………………………………ボロ雑巾…………………………………




とでも名付けておけば良いのだろうか。



とぐろを巻いた龍はカナタの体をジワジワと締め上げていく。



・・・、ジワジワとだ。


骨はゆっくりと砕けていく。龍の鱗の表面には血と胃液と髄液が混ざった液体が滲む。



「痛い!!! 痛い痛い痛い痛い!!!


やめろよぉぉぉ!!!やめろってぇぇ!!!



痛いよぉぉ!! ヤメテヨォォォォォァォ!!



おじいぢゃんだずげでぇぇぇぇ!!!






やめて・・・、下さい。


許して・・・もうしない。 僕はもう悪い事はしないから・・・」



「この期に及んで命乞いですか? ふざけないでください。あなたの自宅を見ました。


よくあんな事が出来ましたね。


きっと皆・・・、【死にたくない】ってあなたにお願いしたはずです。



楽しかったですよね? 死なたくないって言ってる人を殺すのは。あなたに似ている人を知っています。本当に酷い化け物でしたよ。



僕から何もかも奪っていった。もうあんな思いはしたくないし、誰にもして欲しくない。



だから決めてるんですよ。あなたみたいな奴は絶対に(むご)く殺してやるって」


その目は恐ろしく冷たい。カナタやサキとはまた違う狂気だ。【この男を楽には殺さない】その鉄の意思は揺らがない。


カナタの命乞いなど聞く耳など一切持たず、徐々に締め付ける力を強めていく。


「〜〜〜!!! 〜〜〜!!! 〜〜〜!!!」


顔から足までぐるぐる巻き。悲鳴は聞こえない。


アスカは手元から彼が抵抗する力がどんどん弱まっていくのを感じた。血も体中の体液のその全てを絞り出す。様々な混じり物の液体は劇場の真ん中に円になって広がっていく。







完成されたのは魂の抜けた・・・、


その全てを絞り尽くされた・・・、






ただの肉のボロ雑巾・・・。




挿絵(By みてみん)




今日は全部アスカちゅんがもって行ったね。




ミコトはやっぱり必要だな。早く退院しなさい。




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