02日常
校内にある食欲がそそる匂いがする。建物から飛び出た部分がガラス張りと言うしゃれた食堂内の1つのテーブルでは
「レイのせいでお昼食べられないとこでしたわ。」
サリアは焼き魚の乗った和風定食をお箸でつつきながらそう呟く。
なぜならあの後イルム先生が目を輝かせて語りだし、終了のチャイムが鳴っても語り10分もオーバーしていたのだ。
そんなサリアに肉をナイフとフォークで優雅に切り裂き口へ運んだルークが
「良いじゃないか。こうしてランチに有りつけたのだから。レイカもああなるとは思わんだろう?」
「すみません。」
恐縮したようにサンドイッチを摘まむレイカが答えた。
「有名ですわよ!イルム先生が古代の魔導船に入れ込んでいるのは!」
お箸でルークを指しながらそう叫ぶ
唐揚げ定食を食べていたユウが
「恥ずかしい。もっと声のボリュームを下げた方がいい。それにお箸で人を指すのもやめた方がいいよ。」
周囲からクスクスと笑い声が聞こえる。
そんな中食堂にある大型のモニターから
『番組の途中ですが臨時のニュースを伝えます。北東連邦の月面都市アルテミスで行われていた戦闘ですが、帝国が勝利したとの情報が入りました。現在我、中央連邦でも情報収集にあたっているとのことですが、軍事評論家のブライト氏に伺ってみましょう。ブライトさんどう思われますか?本当に帝国軍が勝ったのでしょうか?』
するとカメラが移り変わり顎鬚を撫でる片目が潰れた獣人族の男ブライトが
『確かに信じがたい事実でしょうが、帝国が勝利するいくつかの要因はあります。1つが北東連邦の油断、これは大国であること、独自開発したGFによる部隊、これらを要していたことによる油断ですな。』
『油断ですか。』
『それに何処から来ているのか分からないということ。』
『分からないですか?』
『そうだ、考えてみたまえ。宇宙に帝国の拠点がないにも関わらずにあの大規模侵攻。これはどこかに拠点が無ければできんことだ。』
『確かに。』
『そして第六世代型のデーモンタイプ、噂では魔力を持たぬ者でも操縦できるとか。』
『魔力無しで操縦ですか?』
『そうだ、あれほどの大部隊全員が魔力持ちとは考えずらい。』
『そうですね。確認されただけでも倍近い帝国軍の戦力であったとか。』
『そうだ!この状況は非常にまずい!今すぐに地上に避難するんだ!次は北西連邦のルーナかここムーンキングダムだ!!』
するとモニターにしばらくお待ちください。不適切な情報を流したことを深くお詫びします。と表示されていた。
「どう思うユウ?」
ルークがユウに意見を求めるように見据えていた。
ユウはコップの水を一口飲み
「あながち大げさとは言えないね。新型の噂はボクの下にも届いている。」
するとネクタイから上級性だと分かる黄金色の髪の幼さの残るフレアス族の少女クリス・ファームがユウの隣に座り
「それはあたしも聞いている。」
「クリス先輩、どういうことですか?」
ルークはクリスに聞き返した。
「そもそも、宇宙移民計画を発案したのは帝国だよ?そんな帝国が宇宙に拠点を作っていないわけないじゃないか。そしてGFもしかり、だから3社合同で第六世代のエンジェルタイプを作ろうって話になるわけさ。」
「先輩、それ極秘事項。」
小声で注意するユウの言葉にアッと口を開け驚いたクリスは
「悪い、聞かなかったことにして。」
「大丈夫だと思いますわよ?」
サリアがそう言って周りを指すと、食事が終わったのか先ほどのニュースが気になるのか親に確認を取ろうと通信端末が使えるフロアに向かって人の列ができていた。
それを見たクリスはホッと胸をなで下ろし
「じゃあここだけの話、ユウのとことあたしのとこそして民間のガーディアンエンジェルとかいう会社が共同で開発している機体について、ユウはどこまで聞いている。」
「先輩はどうなんですか?」
「質問に質問を返さないで・・・まあいいや、あたしの方は全然。」
両手を上げ首を左右に振るクリスに
「ボクの方は来旬の頭に護衛依頼が来ていますね。」
「それは実家から?それとも軍から?」
するとユウは首を左右に振り
「そこは答えられません。」
「ふ~ん軍か・・・」
クリスとユウの会話にルークが呟く
「なんでそう思うんだい?」
少し声が低くなったような雰囲気のユウが聞くと
「ユウの実家・・・キサラギ重工の依頼なら俺たちにも「内緒にね?」ってつけて話してくれるはずだ。俺たちにも言えないということは軍関係と言っているようなものだぞ?」
「はぁルークにはかなわないな。」
「取りあえず午後の授業が終わった後ユウの家に集まるでいいか?」
「ダメだって言ってもルークは来るんだろ?」
「当たり前だ。親友のことだぞ?」
「その心は?」
「あわよくば、その新型が見れるかもしれないんだろ?」
「はぁ叔父さんに言いつけようか?」
「それは困る。サリアが叱られる。」
「何で私が叱られますの?」
「サリア、貴女ルーク君のお目付け役じゃなかったかしら?」
テーブルを囲む者たちから笑みがこぼれた。