第四話 ヤクザってやっぱ怖いと思うんだけど
あの後ですか?
普通に飯食って普通に持ち回りで番して寝ましたが何か?
えぇ、期待されるような甘酸っぱい展開はありませんでしたが何か?
みんなが俺を運んで疲れてるだろうとか言って番をさせてくれないかと思ったらそんな事はありませんでした。
まぁそれで朝になって普通にたどり着いたんですよ、えぇ最前線基地へと。
「はっ!貴様等の様なガキに何が出来る!せいぜい我等帝国軍の邪魔にならぬ位置にでも居るとよいわ!」
最前線基地の隊長さんこんな感じ。
俺達の見た目からただのガキだと侮っている。
これでもアルフちゃんは勇者の子孫だし、マリオと二人で闘技大会で準優勝の実力者。
カーティちゃんも聞いた話によるとそこら辺の神職の人よりかなり強く、クロバルトの街の教会では次期司祭と称される実力者。
俺?無名の一介の冒険者ですね、はい。
そこ壊れ性能のチート野郎とか思ってるならぶっ飛ばすよ?
「さて居ても良いって話だし、邪魔にならない所で拠点作って情報収集するか。」
「ちょっ!ササ!」
「マリオ、ここはササが正しい。良いから行くわよ。」
その後すぐ自分達の馬車の所まで戻り、カーティちゃんと合流した。
え?カーティちゃん何してたって?馬車で荷物番してましたよ?
隊長さんに何を言われても平然としていた俺とアルフちゃんににマリオが食って掛かってきた。
馬鹿にされて悔しいのはわかるがとりあえず落ち着いて欲しい。
あれはある意味通過儀礼みたいなものなんだから。
「二人共!あんな事言われていいの!?」
「帝国に逆らってんじゃないわよ。」
「それに帰れじゃなくて居ろって言ってただろ?ああやって俺達が上だって言ってんだよ。向こうは正規軍なんだから通過儀礼みたいなもんだよ。」
まだ納得してなさそうにしていたがとりあえずマリオは落ち着いた。
当然だろう?
向こうは国の正規軍、こっちは冒険者っていうならず者の集団みたいなもの。
こんな事で一々反論してたらやってられない。
さて・・・、通過儀礼も終わったしさっさとやる事やろう。
「さってと、作戦あるけどどうするアルフ?」
「良いわ、説明して。」
「まずアルフは情報収集、兵士に戦場の様子を聞いてきて欲しい。マリオはここで炊き出し、食料とか医療品とかある程度馬車に置いておく。カーティちゃんは治療テントに行って負傷者の手当をしてきて欲しい。」
「ササがどうするの?」
「俺は兵士と冒険者の動向を確認した後、戦場で暴れるよ。」
チラッと見たけどあれは三人が戦える相手では無い。
数もそうだがあんなのに向かっていくとか命がいくつあっても足りない。
こちらにも軍の様な組織があり、統率が取れているならば問題はないが冒険者がそんな事出来るとは思えないしな。
「やっぱ暴れるのね・・・。」
「まぁな。みんなは俺が暴れやすい様に後方支援してくれ。」
「了解。二人共、ササの作戦で行くわよ。この場では私達は援護に徹する。」
「わかった。」
「はい!」
三人がそれぞれの仕事に取り掛かった。
とりあえず俺は食料品といくつかの医療品を馬車の中に置いていく。
そしてカーティちゃんに医療品が入った救急箱を渡し、冒険者が集まっている場所へと向かった。
冒険者の動向は簡潔だった、ただ近くに居る魔物達をぶっ倒す。
そこに作戦も連携もありはしない。
こいつらコレで良く今まで生きてこれたな?
けどやはり冒険者らしく、敵の情報を集めている奴らは居た。
こういう時、統率された集団より自由気ままに動く奴らの方が多く情報を持ってたりするから助かる。
「戦場の様子ねぇ・・・。ありゃぁもう人種との戦争と変わんねぇよ。」
「あいつらちっとも移動はしねぇがこっちが近づくと攻撃してくるんだよな。」
「そういや六本腕の化物みたぜ?」
「妖精っぽいのが居たな。いや小さいのじゃなくて俺達とそう変わんねぇ奴。」
「ありゃ魔族だぜ。奴ら俺達の大陸攻めに来たんじゃねぇのか?」
だがやはり情報としては弱い。
というよりも無駄な情報が多すぎてどう処理するかも悩むほどだ。
「妖精種の様な魔族に六本腕の怪物か・・・。本当に何が居るのかわかんねぇな。」
けど情報は情報。それを信じこむんじゃなく情報とだけ頭に入れ戦場で対応する。
知っているのと知らないのでは一瞬の判断にかなり違いが出てくる。
馬車に戻るとアルフちゃんからの伝言もあり、どこから攻めれば軍と冒険者の邪魔にならないかがよくわかった。
しかしこいつら包囲殲滅戦とか考えないのか?
いやまぁ、俺が自由に攻撃できるから良いんだけどさぁ・・・。
アルフちゃんからの情報だとこれ確実に前線基地の隊長さん無能じゃん?
なに?この突撃と撤退を繰り返す形?
これ作戦じゃなくてただの自殺じゃん?
バカなの?アホなの?
効率よく倒そうと思ったら遠距離攻撃部隊を用意して前に出る奴らは盾部隊。
一応弓を使う魔物も居るから後方部隊を守る盾部隊も必要だな。
そうやって壁となる部隊がとにかく食い止めている内に遠距離攻撃の後方部隊が矢なり魔法なりをお見舞いしていったほうがはるかに効率的だぞ?
こりゃ前線軍が崩壊するのも時間の問題な・・・。
さっさとある程度ぶっ潰していかないと・・・。
「さて・・・戦争の時間だぜ・・・。」
目的地に到着すると魔物達がこちらを見て唸り声をあげてくる。
もう奴らは臨戦態勢、こちらが圧倒的強者というのを本能の部分で確信しているのだろう。
しかし相手は万を超える大軍勢、たった一人で何が出来るというのか・・・。
けど俺はもう止まれない、止まる訳にはいかない。
今考えている作戦は単純だ。
斬った相手の魔力の流れを大幅に乱し爆発させる魔法剣で目の前の魔物達を殺し尽くす。
そしてこの事件を起こしている犯人を捕らえ、この状況を安全に終わらせることだ。
簡単な話ではないが・・・、やるしかない。
「獣の唸り声ってのはどうしてこうも心をかき乱すのか・・・。《触れるものを尽く四散させよ。フレアソード。》」
魔獣達が牙を剥き、魔物達が剣を持ち向かってくる。
ここは戦場だ・・・、一分の隙もなく気を引き締めろ!
でなければ仲間が死ぬ!あの街に住む皆が死ぬ!
襲ってくる魔物を蹴り上げろ!
爪を立ててくる魔獣を穿け!
俺の周りを飛ぶ魔法剣を上手く扱え!
この魔法剣で迫り来る魔物達を爆発させろ!
一匹一匹しっかりと、確実に爆発させ倒していく。
戦場に飛び込んでからもうどれ位時間が過ぎたか・・・。
俺の通ってきた道には四散した魔物の肉片が飛び散っている。
まるで・・・レッドカーペットのようだ・・・。
「あぁ・・・楽しい・・・。」
ん?今、俺はなんて言った?
楽しい?いやこんな命のやり取りを楽しいだなんて思うほど殺伐とした前世を送っていたわけじゃない・・・。
なんで楽しいと思ったんだ?
わからない・・・わからない・・・。
けれど・・・アァ、命ノ散リザマウノハナンテ美シインダ・・・・。
「違う・・・!」
危ない・・・、気をしっかりと持て・・・。
今の感情に呑まれるな・・・!!
「ぐっ!」
やべぇ!意識を負の感情に乗っ取られかけてるうちに肉薄されてしまった!
近距離でフレアソードを使い倒すと俺自身がかなり危険だ。
この世界で俺を傷つけれるのは俺自身だけなんだ。
「どりゃぁ!!《一之型。剣神。》」
肉薄してきた魔物を蹴り飛ばし、すぐさま近接魔法の魔法拳に切り替える。
ここまで接近されるほどやばい精神状態なら一度撤退するべきか・・・・。
ちらりと後ろを見ると、そこは既に魔物が塞ぎ、退路が存在しなかった。
「しまった・・・深入りし過ぎている・・・。」
あの狂気の様な感覚のせいだろうか?
判断が鈍くなっている・・・。
本当にこの状況は不味い・・・。
「はぁ・・・下がって逃げるか進んで逃げるか・・・。それより前線基地はどっちだ?」
本当に不覚だ・・・。
退路も進路も何もわからない。
敵のど真ん中にたった一人。
魔力残量は・・・・・・。
補給無しで十年は戦えるな・・・。
だけど世界之頂点之剣は一発が限度・・・・。
「さてと・・・大暴れしてなんとか逃げますかねぇ?」
どうやって逃げるかねぇ?
あんま使いたくないけど魔法剣ゴッドイーターでも使って前方に大きな道でも作ってみるか?
けどあれ魔力の消費結構デカくうえに制御しきれないから結構辛いんだよなぁ・・・。
悩んでると一瞬、ほんの一瞬だけど魔力の大きな揺れを感じた。
なんだこの感じは・・・!
胸がざわつく・・・!
「な、なんだありゃ・・・!!」
上を見るとそこにあったのは巨大な魔法陣。
あっはっはっはっはっ・・・こりゃ駄目だ。あの魔法陣の規模は世界レベルの物だ・・・。
こりゃ世界の終わりか?
「あーっはっはっはっはっはっ!」
その魔法陣の中央から聞こえてきたのは女の声。
よく見るとその女は和服に長ドスを構えてこの戦場に落ちてきていた。
「ここが次の戦場かい?良いねぇ!血沸き肉踊るよ!」
あぁなんだ・・・なんていうか・・・。
「戦場にヤクザが降り立ちやがった・・・。」
うん、そう俺笹塚大地。
高校ニの時事故で死んで異世界で聖剣ネオガイアやってます。
それで今は冒険者ササ・アースガルズとして魔物の群れが集まる場所で孤軍奮闘状態。
OK、ここまでは問題ない。
俺に異常はない。
けどあれ・・・・、異常って思いたい・・・。
「あっはっはっはっはっ!魑魅魍魎共が!さっさとお陀仏しちまいな!」
なんでヤクザさんここにいんの?
事の発端はあれだ・・・、俺が謎の快感に襲われて自分を見失っている時に起きた巨大な魔法陣だ。
世界を改変できるほどの高出力だったのは覚えている。
あれが攻撃魔法だった場合、多分星どころか異世界自体が崩壊していただろう。
けどあれは世界と世界を繋ぐゲート。
異世界召喚と言うやつだろう。
それで女の子が来るのは良い。
あの子は多分俺とそう変わらない歳だろうし美人なのは遠目でも分かるけどさ・・・。
「なんでヤクザなんだろうね・・・。いや、戦闘多い異世界物なら出てきても違和感ない戦闘力だけどさ?」
その女はまるで踊るように手に持つ長ドスで魔物達を狩っていく。
いやはっきり言って怖いですわ。
さっきまでの異常な快感が嘘のように消えて凄い冷静になれる。
けど一度戻ったほうが良いだろうな。
「魔力探知・・・。あっちが前線基地か・・・。」
魔物達が俺に目をつけず新たに現れた女のヤクザさんの方に群がっていく。
その隙に魔術の初歩である魔力探知で前線基地の方向を割り出す。
・・・あのヤクザさん放っておいたら危ないから回収して帰るか?
「《四之型。風神。》」
速度重視のこれならある程度安定して向かえるだろう。
とりあえず進路の邪魔になる奴らは風の鎧で吹き飛ばしながら進んでいこう。
ひょー!風がきもちー!
周りの魔物達を吹き飛ばしながら女の子の所にたどり着くとチャキっと長ドス向けられた。
あっぶねぇ・・・一瞬でも止まるの遅れたら串刺しだよ・・・。
けどこの子本当に生前の俺と同年齢位だな。
髪は腰まであち簡単に一つに纏めている、和服だがなんつーか姉御!って感じがするな。
というかこの子美人さんだけど顔にデカい切り傷あるよ?右目完全に切り傷で失明してるよ?
胸は・・・細長い典型的な日本人スタイルだなうん。深く言及すると俺の命が危ない。
飾り気の無い木目の長ドスか・・・。良いなぁこういう刀作りてぇ!
「なんだい?魑魅魍魎の次は鬼畜米英かい?」
「おっと待ってくれよ、俺はササ・アースガルズ。異世界へようこそ任侠さん。」
俺が任侠さんと言うとその女の子の眉がぴくりと動いた。
よし、敵意は感じない。
俺の言葉に興味を持ってくれたようだ。
っとあぶねぇ!?
横から飛んできたよくわからん豚みたいな魔物を殴り飛ばさなきゃ俺が吹っ飛んでた!
そんなになったらカッコわりぃ・・・。
「・・・あんたぁ、大日本帝国のもんかい?名前といい見た目といい鬼畜米英の様に見えるけど。」
「大日本帝国に鬼畜米英か・・・第二次世界大戦中あたりの時代から飛んできたのかな?一応これでも日本人だったよっと!」
飛び掛ってきた犬の様な魔物を背負投の要領で反対側に居る魔物へと叩きつける。
本当に油断出来ない状態だなぁ・・・。
つーか魔物さん達空気読んで?
今、俺、お話中。おk?
「へぇ綺麗な背負投じゃないかい。あんたに興味湧いてきたよ。うちの名前は二宮東藤。二宮組の若頭だよ。」
二宮組・・・聞いたこと無いな?
まぁ高校生がヤクザと関係持つなんてそうそうないからしょうがない。
さっと背中合わせになって死角を潰して撤退しようと考えてた方向を指で指し示す。
「とりあえず一旦撤退するから付いて来てくれるかい?あっちに陣があるんだけどこいつら引き連れるわけには行かないから多少遠回りで」
「ニゲ・・・ルナ・・・。」
突如地獄の底から響くような声が聞こえた。
振り返るとそこに居たのはまるで蝶の羽が生えた多分3m超えのネメ○ス・・・。
ラ○ーンシティに帰れ!
どこのバイ○ハザードから逃げてきたテメェ!
くっそ確かに情報にあったな!
妖精だけどかなりでかい!遠目からはこの蝶の羽は腕にも見えて六本腕の化物!
あぁこいつだ!こいつがこの事件の犯人だ!
魔力探知しなくても分かるくらいに桁違いじゃねぇか!
さっきの魔法陣こいつが作ったって言っても俺は信じれるぞ!
この魔力量なら確かにお母様と同等、神眼から隠れる位簡単にやってのけるな!
「ユウ・・・シャ・・・ダナ・・・。」
「ちげーよって言いたいんだけどこの状況じゃそうなっちゃうかな?」
「こんな化物相手に余裕の軽口だねぇ・・・。うちでもこいつはちょっとヤバいと感じるよ・・・!」
東藤ちゃんの持つ長ドスがカタカタ震えてるわぁ・・・。
周りの魔物達もまるで怯えたように近寄ろうとしていない・・・。
俺一人ならゾンビアタックで何ヶ月もかけて削って殺せるだろうが東藤ちゃんにそこまで無理させるわけには・・・!
「コロ・・・シテクレ・・・。」
は?




