第三話 戦場へ向かうんだけど
*前回のあらすじ*
魔物大発生が発生したんで受注しました。
今、家にはアルフ、マリオ、カーティ、ホタルと俺の五人が居る。
ホタルはカーティちゃんを連れてすぐ帰ってきた。
美少女が二人仲良く手を繋いでる姿はいいねぇ・・・癒される。
マリオは荷車に大量の荷物を乗せて汗だくで帰ってきたのでソファを一つ使ってダレていた。
一人で引いてくる事はなかったのに・・・。
気の回る所は良いんだが、どうも少し要領が悪いらしい。
まぁまだ子供なんだからゆっくり修正してやろう。
アルフちゃんは冒険者にクエストとして金を払い荷物を運ばせていた。
最初冒険者だけが荷物を運んできた時は驚いたがきちんとクエストとしてやる辺り、かなり要領がいい。
カグラザカ家は名門貴族らしいからそういう所に気が回るというのは良い事だ。
けど貴族が冒険者してるっていいの?普通アルフちゃん位の年齢だと社交会とかそういうのに忙しいんじゃないの?
家庭の事情ってやつを細かく聞くのはマナー違反だから聞かないけどさぁ・・・。
そんな感じで全員が集まった所で先ほどお母様から聞いた話をしておいた。
ホタルに聴かせるのはどうかとも思ったが、事が事だけに除け者にするのは心情的に嫌だった。
「つまり、この事件の犯人である魔王オベイロンに匹敵する何者かがエッケ平原に居ると考えてるわけ?」
「そこはまだ不明。ただ、女神様の神眼を逃れるほどの何者かが居るのは確実だがね。」
その一言にみんなが絶望的な顔をしている。
それもそうだ、女神様の力から逃れられるなど同格の存在と言っても良いのだから。
つまり神を相手に戦うようなもの。
「ササ、それ・・・本当に勝てるの?」
「いくらササ様が強くても、女神様から身を隠せる実力者相手では厳しいのでは?」
「ん~、なんとかなるってのはある程度予測してるし、これと同じような事をする方法も幾つか思いついてるからそこまで過大評価はしてないつもりだけどね。」
「お兄ちゃんがそう言うなら心配はしないけど・・・。」
あまり使いたくはないが世界之頂点之剣以上の切り札は用意してある。
出来れば、いや切実に使いたくはない。
世界之頂点之剣だけでなんとでもなるのであれば多少のリスクはあっても使ってやる。
けど現実ってのはそう言ってられない。
ここまでわかりやすいお約束が重なってるんだ、使う事も検討しておかなければ。
「これさ、誰かが聖剣を抜くのが重要じゃない?」
「私もそう思うわ。レネゲード様に言ってササが抜いてくるのが一番確実だと思うけど・・・。」
聖剣を抜くか・・・。
確かにそうだな、お母様クラスの相手なんだ。
お母様が創りあげた聖剣でもないと勝てない。
「ダメです!」
「ホタル?」
聖剣を抜くと聞いて大声を出しながら立ち上がった。
ん?突然なんで叫びだしたんだ?
みんながびっくりしてホタル見てる。当然、俺もだ。
叫んで落ち着いたのか真っ赤になって座り直したが・・・可愛い。
「聖剣の役目はまだその時ではないとお兄ちゃんの神器で女神様に伺っているので・・・。」
「そう・・ですか。確かにこの状況ではササ様に聖剣を持ってもらうのが一番安全な解決方法であると理解しているのですが・・・。女神様がそう仰るのであれば望めませんね・・・。」
「女神様の意志に反するわけにはいかないね。」
「それで?うちの参謀様はどういう作戦を立てているのかしら?」
「とりあえず相手の状態からこれは国家間戦争と同等と見ていいかな?いくつか情報が足りないけど、ここで話しててもこれ以上の情報は得られないから戦場へ行くしか無い。」
お母様の目で見れないなら自分の目で直接見に行けばいい。
もう既に行く事は確定しているのだから、ここでうだうだ話をしていても情報が集まるとは思えない。
情報は身を守る為の武具であると同時に鮮度が必要だ。
一日でも過ぎたらその情報はすでに腐っている。
ならばここで考えるべきは切り札だ。
幸い俺の能力はチートを軽く超えてもはやバグだ。
お母様すら倒せない強靭過ぎる肉体と、世界を一つ創れる魔力。
いざとなればお母様の協力の元、その脅威を新しく作った世界へぽいっと捨てればいい。
したくないけど。
「切り札として俺の世界之頂点之剣を使うのが一番とは考えている。あんまり本気で撃ち続けると当面俺動けなくなるから本当に奥の手として使わないと。」
「それはどれくらい?」
「不明。希望的観測になるけど一週間から一ヶ月位?」
本当に希望だ。
前回、世界之頂点之剣を使った時の魔力は一週間かかって回復しきってはいる。
だがそれもそれなりに回復するように行動したからだ。
俺の魔力が切れれば俺はあの洞窟へと戻ることになる。
その時、倒しきれなければ短くて一週間も動けないことになる。
一週間もあればこの付近は滅びるだろう。
相手が何を考えているかわからない以上、聖剣の洞窟へとやってくる可能性も高い。
なるべく倹約を考えて魔法を使わなくては・・・。
「全く頼りに出来ないわね。」
「そうなんだよねぇ・・・。まぁそれは俺の魔力制御が甘いかららしいんだけどね。後は敵の状況によるかな?」
「というと何かあるのかい?」
かなり分の悪いやり方だが無いわけではない。
魔法を喰らい魔力を回復できるウィーザードスレイヤーや相手の魂を喰らい魔力にするデスソード。
それにソードブレイカーという武器を喰らい魔力に回復する魔法剣などもある。
そこらに絞ればある程度撃ち続ける事が可能だろう。
俺の知ってる知識の中で魔力を回復できるような片手剣系の神話武器が存在しないのはちょっと痛い・・・。
「世界之頂点之剣で創る魔法剣を魔力を回復する物に限定して使う。ただ相手が魔法を使ってきたり、実体のない魔法生物である事が望まれる事だから本当に希望だね。」
「多くは実体のある魔物でしょ?本当に多くを望めない戦いね。」
「勝手に受けてしまって悪いとは思ってるけどさ。」
「良いって言ったでしょ?どうせ私はこの街の専属みたいなとこあるし、マリオとカーティはこの街に家族が居るんだから受けないって選択肢は最初からないわよ。」
そう言ってくれると巻き込んでしまった事への罪悪感がちょっと薄れる。
カティマ少年との約束もあるからみんなを危険な目に合わせるわけにはいかないが、この街を守るためにも必要な事だ。
ここにはカティマ少年の家族も存在する、どちらにしろ守らないとな。
「よし、出発しよう。さっきも言ったけどここで話してても何も始まらないし、情報も集まらない。ホタルは留守番しててくれ。」
「はい、お兄ちゃん。みんなも気をつけてください。」
「行くぞ!」
「本当にあんた規格外よねぇ・・・。」
「手伝いたいって言いたいけど、ちょっと難しいなぁ。」
「あっ、ササ様一度あの丘で休憩しましょう。」
「あいよ。」
ひゃっほー!風がキモチー!
え?今どんな状況かって?
砦跡行った時の馬車に仲間乗せて俺が引いてるんだよ。
まだ馬買ってないんだよねぇ~・・・。
鍛冶が楽しくて買うの忘れてたんだ!てへっ☆
『男の子がてへっ☆は可愛くないわよ~♪』
お黙りくださいお母様。
神界にお帰りください。
『ひど~い!』
「あ、あのササ様?」
カーティちゃんは毎回こうだなぁ・・・。
俺がお母様と会話してるとすぐに不安そうな顔になる。
ただのくだらない会話なんだけどなぁ・・・?
「大丈夫大丈夫。基本的に女神様とは世間話位の会話ばかりだからさ。そんな不安になるような事はないよ。」
「め、女神様と世間話という事自体信じられませんが・・・。女神様との神託回数から見てもそうなのでしょうけど・・・。」
「大丈夫だってば。あの人干渉し続けたいって人じゃないから。基本放任主義者だもの。」
基本的にダメって言わないしな~?
ダメって言われたのって聖剣の担い手を適当に決めようとした時位じゃね?
そういやどういう基準でダメになるのか後で聞いとくかなぁ?
まぁけどあの人の場合聖剣の担い手を決める事、後レネ爺が言ってた国への加担位なのかも知れないが。
とりあえず目的の丘に着いたが、見晴らし良いなここ。
結構飛ばして目的地まで半分ってとこか。
え?かかった時間?体感で2~3時間かな?
その間ずっとぶっ飛ばしてましたよ?
まぁ魔法拳の風神使ってないから遅いけど。
しかし前回、砦跡行った時より速度上がってる気がするなぁ?
理由なんだろ・・・・・・・・・・・・わっかんねぇや。
「ササとりあえずここで一泊するよ。」
「さすがにササ様が速いと言っても、今からじゃ遅くなってしまいます。」
「そうだな。アルフ、テント代わりにこの馬車使えばいいと思うがどうする?」
「そうね。これなら問題ないと思うわ。じゃあササと私で見張り、マリオとカーティで食事の準備してくれる?どうせ薪位用意してるんでしょ?」
ぐぬぬ・・・。
アルフちゃんが俺の扱い方わかってきてる気がする・・・。
「あるよ。食材は何を使う?」
「今日のとこは軽くシチューを作ろうと思うから・・・。」
「じゃあ、ほれ。四人分ならそれ位だろ?」
ぽんと薪をマリオに、食材の入った袋をカーティちゃんに渡す。
食材が袋に入ってる理由?四人で一週間分位を小分けにして袋詰しておいたんだよ。
丁寧に料理毎に分けてな。
マジックボックスの中は時が止まる仕様らしいから食料品の輸送で結構楽なんだよね。
その内輸送業で各国をのんびり旅するのも良いかも知れないなぁ・・・。
今はホタルの保護者だかし、ホタルは小さいから簡単には出来ない事だが・・・。
ホタルが大きくなって旅しても大丈夫なようになったらやってみるかなぁ・・・。
主に俺の食道楽と言う理由で・・・。
けど保護者なんだからそういう理由でホタルを連れ回すのもなぁ・・・。
ん~悩ましい事だ。
「さて・・・見張り見張りっと。」
「私は後方を見るから、ササは前方を確認してなさい。」
「あいよ。」
野営ってのは危険と隣り合わせと思っていたがこの世界はそうでもないらしい。
基本的に魔物が出るのは森の中、平原なんかにそうそう出てくる事はないらしい。
まぁ一応野盗なんてのも居るし、魔物が全く出てこないわけじゃないから見張りは必要なんだけどね。
結界魔法を憶えれれば良かったんだが・・・、封印されてる影響か全く使えないんだよね。
グラヴィティソードで薄い膜の重力場を創るって方法でも良いけど魔力消費が洒落にならん・・・。
ここら辺は要改善だなぁ・・・。
「ねぇササ。」
「どうしたアルフ。」
「・・・やっぱいい。」
「なんだよ?」
「いいって言ってんの。」
「気になるがわかったよ。」
カーティちゃんとは二人きりになっては居たが、アルフと二人で居るのは初めてだな。
アルフちゃんが聞こうと思ったことを考えてみる。
一つ目、女神の子供と言う事。
これはまぁ女神様と直接会っては居ないが、大精霊とタメ口で話してる所を見られている。
さらに神器も見せたから疑ってはいないだろうから可能性としては低い・・・。
二つ目、勇者の子孫の可能性。
これはまぁ考えようによっては思いつきそうな選択肢だ。
一つ目に被る事だが勇者は女神の子供という形で語り継がれている。
さらに女神の祝福のような壊れ性能だ、無いとは言い切れないだろう。
魔法も勇者達が現れた事で急速な発展を遂げたとレネ爺から教わった。
多分これは異世界の概念?というか知識が関わってくるのだろう。
そこまで過去の勇者達と似た状態の俺を勇者の子孫と考えても不思議ではない。
三つ目、俺に気がある。
・・・・・・・・・・無いな。
四つ目、この先に待ち受ける強敵への不安。
これが一番濃厚な気がする。
情報の少なさ、そして今ある情報による脅威の高さ。
相手が何者かわからないのにその強さの最低値が見える事が不安にさせるのだろう。
俺だってこれでも不安には思っている。
これから行く場所に居るのが破壊神だとか魔神だとか言われても不思議ではないのだから。
確かに俺は女神様相手でも勝てるスペックを持っている。
けれど女神様ってのはあのゆるふわなお母様だ。
あの人に攻撃能力はさほど無い。
戦闘能力で言ったら多分俺が知ってる神々の伝承から考えるに下位だろう。
この先に居るのが破壊神だとか魔神だとかいうものなら戦闘能力は神々の中で上位だろう。
そんな相手に勝てるかどうか不明だというのはちょっときつい・・・。
本気で聖剣ネオガイアを抜くしか無くなる可能性がある。
その場合誰を担い手にするかだが・・・。
マリオは戦うタイプじゃなく守るタイプだから却下。
あいつには聖剣じゃなくて聖盾とかそういうのだろうな。
アルフちゃんは戦闘が一撃離脱のスタイルだ。
確かに振りやすい片手剣ではあるがアルフちゃんの場合もっと短い方が戦いやすい。
二人共聖剣を使うのに向かなスタイルだな・・・。
現地で適当にスタイルが合う人を担い手にでも・・・。
『ダメよ~♪』
ぐ・・・。
しかしお母様、現状だとそれ位しか打開策が見えないのだが・・・?
『ダ~メ♪まだ情報集めって無いんでしょ?だからダメ~♪』
ぐぬぬ・・・。
しょうがない、確かに情報が揃ってないのは認める・・・。
だが戦場に着いて相手を知って、必要だと感じたら適当にでも決めてなんとかするからな!
『ん~、大丈夫だと思うけどな~?』
根拠は?
『だって大地ちゃんだもの♪』
・・・・わかったよ。
「二人共~ご飯の準備出来たよ。」
「わかったわマリオ。ササ、先食べる?」
「いや俺は後で大丈夫だ。」
「じゃあ先にいただくわ。」




