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婚約が嫌で男装執事になったのに~配属先が婚約者の元でした~  作者: みみみ.com


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EP3:☆恐怖と絶望の夜会招待!


☆.*˚



ギルside



─────あの夜会から数日



俺は今ロゼッタ侯爵邸に訪れている。



あの日、メイドのルリが謝罪に来た時に、空から降ってきたあの令嬢の名前を聞きだすのは、とても簡単だった。



彼女は、リリィ・ロゼッタ侯爵令嬢。


すぐに調べをまわした。



あまり公の場には出てこない彼女の情報は少なかったが、ロゼッタ侯爵家の一人娘で婚約者もいないことが判明した。



俺はすぐに準備に取り掛かった。





そんな俺は今日、さっそくリリィを尋ねて来たのだが、彼女はやはり一筋縄ではいかないようだ。



ロゼッタ侯爵によれば「具合が悪い」らしい。



……俺に会う気がないようだな。

わかりやすい嘘をついて俺を拒絶するリリィ。


それがなんとも愉快だった。


俺は媚びを売る令嬢しか知らない。


だけれど、やはり彼女は変わっている……それがすごく面白い。




リリィを俺のものにするには、どうするべきかと考えるだけで、面白すぎて自然と笑みがこぼれる。



そして、ロゼッタ侯爵に連れられ庭園を散歩していると、なにやら騒がしい声が聞こえてきた。



その騒がしい声に耳を傾けていると、聞き覚えのある声と名前が降ってくる。



「ルリ!やだやだやだやだ!私は絶対に行かないから!」



「リリィ様!お願いですからギル様がお待ちしておりますのでご準備をお願いしますっ!」



「あの人わざわざ屋敷まで来るなんて、私の事すごく怒ってるんだよ?!私が悪いけど怖いの!!無理!私は逃げるんだから!!」



「あ!!リリィ様!おやめください!!!!ここは三階ですよ!!」




そんなやり取りに瞬時に察知する。



まさか……、また飛び降りる気か……?

……あのお転婆なら……やりかねない



そして、俺は思った。



これはもの凄いチャンスなのかもしれないと


その瞬間、無意識に口角があがっていく。



こんな絶好のチャンスをこの俺が逃すわけがないだろう?リリィ


……逃げれると思うなよ……



すぐに行動をするために、ロゼッタ侯爵に許しを貰うと、声の聞こえる窓の元へ俺は急いでむかう。




すると、なんともタイミングよく窓の下につくと同時に勢いよく開く窓。



───バァァアンッ!!



「ルリ!!じゃあね!!」



次の瞬間、そんな元気な明るい声と共にふんわりと広がるドレスを纏った女の子が落ちてくる。



俺は落ちてくる場所にすぐに移動すると、腕を広げ落ちてくる体をうけとめた。




────ポフッ




やっと捕まえた……、お前がリリィだな?




俺の腕の中にすっぽりと収まったその華奢で柔らかな彼女の姿を確認するために視線をうつすと



あまりの衝撃に、俺は息を飲んだ……。



綺麗な澄んだ空色の瞳をキョトンと丸くさせ、淡いピンクの髪の毛は太陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。

そして、透き通るほど真っ白な肌。



俺の腕の中にいる彼女からは、とても甘く心地のよい匂いがした。



この間は、かなり汚れていて分からなかったが、あまりにも可愛いらしい彼女の姿に、俺の胸はあの日よりもさらに大きな音を立てる。



見た目なんて正直どうでもよかった…、むしろ失礼だが期待はしていなかった。


それでもいいと思うほど、あの日の彼女の笑顔に俺の心は一瞬で持っていかれていたからな……。



だけれど、そんな俺の予想さえも裏切る彼女は、誰もがみとれるような容姿だった。



リリィ・ロゼッタ……想像以上だ……。




☆.*˚




リリィside



「……え?」



私は今芝生の上ではなく、とてもいい匂いのする誰かのたくましい腕に抱き止められていた。



顔をあげると、目の前には息を飲むほど美しく整った顔。黒いサラサラの黒髪の隙間から覗く、青い瞳が私を見つめている。




ま、まって?!え?!ギル・レイヴン?!




私は目の前に彼がいることが信じられなくて、なんで?!?と固まっていると、目の前の彼はふっ…と不敵な笑みを浮かべ意地悪くこう言った。



「おや、とても元気な病人だね?リリィ嬢」



耳元で囁かれるのは、甘く綺麗な声。


そんな声にビクッとする私は、焦る。



やばいやばいやばい……っ!怒ってる?!

一番会いたくない人に会ってしまった!



「あ、あの…ご、ごめんなさい…は、離してもらえ……」


「嫌だと言ったら?」



私の声を遮り、目の前で綺麗な顔で意地悪に笑う男。



「へっ?!?」



驚く私をよそに、ギル様は私をぎゅっと抱き寄せると、私の耳に唇を寄せて、甘い声で囁く。



「せっかく空から降ってきた愛らしい君をそう簡単に手放すわけにはいかない。…それに君は前回の件で責任を取って貰わなくてはいけないからね?」



怪しく笑うギル様に私は前世のトラウマを思い出す。



ひぃぃいいぃ?!

こ、この男…怖すぎじゃない?!


全然イメージと違うじゃないっ!!


こ、これはモラハラ男の豹変じゃないのっ?!なにこの恐ろしさっ……!!




そんなギル様に背中がゾクゾクとする私は、どうしよどうしよう!と慌てふためいていると、お父様が駆けつけてきた。



お父様が、神様に見えた。



「レイヴン公爵!!なんと素晴らしい身体能力!うちのお転婆リリィを受け止めれるお方は初めてだよ!!なんて素晴らしいんだっ!!」



神様に見えたはずのお父様は、何故かキラキラとした笑顔で彼を見ていてすごく興奮していた。



そ、そうじゃないでしょっ!!お父様っ!!



「いや、侯爵。これぐらいの事、私には容易いですよ」



そう言って、社交界の時によく見かける柔らかく甘い完璧な笑顔をお父様に振り撒いていた。




そして、お父様ににっこりと笑った彼は、私を地面にそっと優しくおろしてくれる。



目の前でお父様とにこやかに話すギル様を見ていると、二面性のある姿に私は前世のモラハラ男の姿が脳裏に浮かぶ。



こういう人が一番やばいんだよね……。

モラハラする人って外面はめっちゃいいの私は知ってるんだからねっ!




そんなことを考えていると、目の前の男は一瞬私をチラリと見ると甘く微笑む。



な、なんだろう……とても嫌な予感がする……。



すると、お父様にとんでもないお願いをするのだ。



「ロゼッタ侯爵。今回は、突然の訪問で申し訳ございません。私は今回リリィ嬢にお願いがあり訪問させて頂きました」



そう言ってお父様の前では完璧な猫をかぶる礼儀正しいギル様。



「ほぉ…うちのお転婆娘にお願いとは…?」




するとギル様は、そっと私に近寄るとお父様に聞こえない小さな声で私を脅してくるのだ。



「次回の夜会で君に俺のパートナーとして同伴を頼みたい……断ったりしないよな?


……前回の件、とても騒ぎになっている」


「……へっ……」



な、なにこの人……!!!私を脅してる?!

とんでもない……っ!悪魔だっ!!

……バレたら終わる……!



断れないように釘を指し、静かに綺麗な顔で笑うギル様は、私には悪魔に見えた。



ギル様を池に突き落とした令嬢とバレれば、きっと大変なことになる。


そうなれば、私の自由な生活は……完全に終わる。




そんなことを考えている間に、お父様に向きなおったギル様は



「ロゼッタ侯爵、次回の夜会でリリィ嬢には私のパートナーとして同伴をお願いしたいのですが……」



そう言って申し訳なさそうな顔をする。



何よその顔……!

本当は裏で私を脅してる悪魔のくせにっ!



「おぉ…!うちの娘が公爵様のパートナー?!とても光栄ですなぁ!


ただ……、うちのリリィに公爵様のパートナーが務まるだろうか?」



そう言ってお父様は、少し悩んでいる様子だった。



きっと他の令嬢なら泣いて喜ぶこの提案、私はごめんよっ



お願いだからお父様断って!この笑顔に騙されてはダメなんだからっ!!



必死にお父様を応援をする私。



そして、悩むお父様にギル様はよけいな一言を添える。



「とてもリリィ嬢は元気で愛らしく素晴らしい。是非とも次回の夜会でパートナーをお願いしたい、ダメ…でしょうか?」



ギル様は平気で淡々と嘘をつき、とてもキラキラとしたスマイルでお父様にお願いをしている。



この人、二重人格すぎるでしょ……

あぁ……おねがいっ!

お父様騙されないでぇ……!!



だけれど、私を溺愛するお父様にギル様の言葉は、見事にクリティカルヒット。


とても嬉しそうに笑うお父様が口を開いた。



「公爵様は、うちの娘の可愛いらしさをよくご存知で。リリィこんな光栄な話はないぞ。いいんじゃないか?」



お父様ぁぁぁああぁ!!

なに騙されてるのよぉぉおおぉ!!!



私の心の声はむなしくギル様は私に振り返り、計算通りといわんばかりの綺麗な顔で微笑んでくる。



「……は、はい……よ、喜んで……」



拒否権のない私は、引きっつった顔で笑い、それを見たギル様は意地悪に笑う。



「ありがとう、リリィ嬢。夜会で可愛いらしい君に会えるのをとても楽しみにしているよ」



満足そうに笑うと、私の手を取り手の甲にそっとキスを落とした。




そして、呆然とする私の耳元でこう囁くのだ。




「もし、逃げたらどうなるか……わかっているよな?」




私を悪魔のように脅したあと、さっと完璧な社交界フェイスに戻る。


最後にお父様に綺麗な一礼をすると、サラサラと綺麗な黒髪を靡かせながら去っていったのだった。



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